魔法科高校~黒衣の人間主神~
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入学編〈下〉
ブランシュ日本支部
「・・・・一真君、まさか、彼らと一戦交えるつもりなの?」
「その表現は妥当ではありませんが、奴らを叩き潰すんですよ。俺の手でね」
おそるおそる訊ねた会長に、一真はあっさりと、言ったのだった。しかも過激度は上乗せをしたけど。
「危険だ!学生の分を超えている!」
真っ先に反対したのは、委員長だった。学内限定とはいえ、常にトラブル処理の最前線を立っている彼女が、危険性に対して敏感になるのはある意味当然の事だ。だが俺はあることを思い出していたけど。おいおい、もしかしてこの三人はあれの事を忘れているのでは?と思ったが、どうやら当たりのようだった。俺達が入学する前に零達也が言ったことである校外に対してもテロが出た場合は指示を聞くことを。
「私も反対よ。学外の事は警察に任せるべきだわ」
会長も厳しい表情で首を横に振った。
「警察に任せるのであれば、壬生先輩を強盗未遂で家裁送りにでもするんですか?」
俺の一言に、顔を強張らせて絶句してしまう。
「なるほど、警察の介入は好ましくない。だからと言って、このまま放置する事も出来ない。同じような事件を起こさない為にはな。だがな、織斑」
炯々たる会頭の眼光が俺の眼を貫こうとする。
「相手はテロリストだ。下手をすれば命に関わる。俺も七草も渡辺も、当校の生徒に、命を懸けろとは言えん」
「当然の判断ですね。だいたい俺は委員会や部活連に力を借りるつもりはありませんよ」
「・・・・一人で行くつもりか」
「それにお忘れかもしれませんが、俺らが校内校外にてテロリストを倒すのであれば俺の指示を聞いてもらう約束のはずですが?『護衛を付ける事、校内であっても銃火器とCAD使用及び常備させる事、校内や校外でテロリストが出た場合は指揮を取る事と軍隊派遣をさせる事、をね』『あとはテロリストと戦うときは彼に従うことも』とのはずですが、約束を破棄するのですか?零達也の約束を破棄したらどうなるか、十師族の者なら承知済みかと思いますが」
その約束については、確かに聞いていたことだと思いだした三巨頭の三人。そして呆然となるレオ、エリカに壬生先輩だった。それにこれは壬生先輩のためではないことも。これは俺らの生活空間がテロの標的となったのなら、俺らはもう当事者となりテロを滅ぼす理由が出来たことを。俺が言った事を静かに理解した俺ら以外の者たちだった。
「そういえばそうだったわね。一真君はソレスタルビーイングの関係者であると」
「学生というのは、表であって裏では学生兼会社員兼軍人だったな。一真君は」
「こういうことになるためを予測済みという訳か、零社長は」
と上から会長・委員長・会頭とそれぞれが言って納得していた。
「それにしても、お兄様。どうやってブランシュの拠点を突き止めればいいのでしょうか?壬生先輩がご存じの中継基地はとうに引き払われているでしょうし、大した手掛かりが残っているとも思いませんが」
深雪だけはいつものように、質問をしてみる。
「それについては、司甲の方も同じでしょう。残っていないと言うより、最初から手掛かりを残す連中ではないということですからね。テロリストたちはそういう手をよく使いますから」
「賛成ですね。中継基地は既に人っ子いないと、報告があるくらいですし」
蒼太と沙紀もいつもの状態ではなく、軍人モードに入っている事に気付いたのは微笑していた一真と深雪だけだった。
「一応こっちでも拠点場所は掴んでいるが、確実に知っている人に聞けばいい」
「・・・・知っている人?」
「心当たりがあるのか、一真?」
エリカとレオの問いに答えずに黙って、出入口のドアを開けた。
「小野先生?」
会長の声に、困惑交りの曖昧な笑みを浮かべていたのは、パンツスーツの小野先生だった。
「九重先生の師範から隠れ遂せようなんて、やっぱり、甘かったか」
彼女が苦笑い混じりながらも、悪びれのない声で話しかけたのは一真だったけど。
「例え隠れていても気配がダダ漏れのような感じですよ。嘘ばかりついてると、本心さえ知ってしまいますよ」
「気を付けておくわ」
一真に招き入れられる形で、小野先生は壬生先輩のベッド脇まで歩み寄った。
「もう大丈夫みたいね」
「小野先生・・・・」
「ごめんなさいね、力になれなくて」
首を横に振る壬生先輩の肩に手を置いて、その瞳を少しの間じっと覗きこんでから、小野先生はベッドサイドから離れた。
「遥ちゃんが、ブランシュとかいう連中の居所を知っているのか?『パシイィィィィィィィイン!』いってぇぇぇぇぇぇぇぇ!何すんだよ一真!」
「バカモノ!教師に向かって名前でちゃん呼びをするバカがどこにいるんだ!」
「まだじーんとするが、クラスの連中は皆、そう呼んでいるぜ?遥ちゃんも、それで構わないって言っているし」
「皆じゃないわよ。そんな呼び方しているのは、一部の男子だけ。そう呼ばれると最初は注意してたけど、もう注意する気がなくなるだけよ」
と何か知らんがコントになったけど、あとでその生徒を調べてから俺から注意しておこう。俺のハリセンでな、くっくっくっくっ。俺が何かニヤニヤしていたようで、深雪たちから考えを止められた。そしてスマホを二台取り出してから、こっちで掴んだ情報と照らし合わせるとしようか。
「さて、小野先生。ここで知らないフリはありませんよね?」
「分かっているわよ。その携帯端末を貸してくれる?どうせもう片方のと照らし合わせようとしているんでしょうから」
そう言ってから、もう片方の携帯端末を貸したあとに、こちらも地図アプリを起動させて掴んだ場所を開けてみる。小野先生の端末と赤外線通信で送られたあとに返してもらったあとに、二台のスマホを並べて見せた。送信された座標データからのマーカーが光るのと、もう片方でこちらで調べたブランシュの場所を記すマーカーが光る。そしたら二台とも同じところを示していた。
「・・・・どういう事だ?一真が調べたところと一緒なんて。しかも目と鼻の先じゃねえか」
「・・・・舐められたものね」
レオとエリカは疑問は持つが、憤慨しているようにここから徒歩で一時間かかるところでもあった。縮尺を二台とも大きくして、詳細表示に変える。そこは、街外れの丘陵地帯に建てられた、バイオ燃料の廃工場だった。
「・・・・環境テロリストの隠れ蓑であることが判明して、夜逃げ同然放棄された工場のようですね」
「放置から考えると、劇薬物の持ち込みはないようだな」
「ええ。私たちの調査でも、BC兵器は確認されていないわ」
会頭の呟きに、小野先生が頷く。
「こいつは車の方が早いな。車はこちらで用意しよう、で、行くメンツはそちらにはいるのか?」
「どういう事?まるでそちらは準備完了と言っているようなものだけど」
「なぜソレスタルビーイングのメンバーは、撤退したのかを考えればすぐに理解しますよ」
なぜCBがいない理由を考えているときには、既にこちらで包囲完了と言っている。あとは工場内にドウター反応を確認、恐らく内部にいる奴らが何らかの理由でドウター化したのだろう。あとは攻撃を受けた一高の生徒という理由だけではない、テロリスト共は非公開の魔法技術を強奪しようとしていた。ならば、俺の持つ力もテロリストが狙っているに違いない。司甲が一真を襲撃したのも、あの能力が技術だと勘違いしているようだったし。それを確認するためだったのだろう。
「では俺も行こう。十師族に名を連なる十文字家の者として、当然の務めだ。零家の者と繋がりを持つ織斑たちばかりに任せてはおけん。七草はダメだ。生徒会長が不在になるのはマズイ事だからだ」
「なら、摩利もダメよ。まだ校内に残党が残っているかもしれないんだから、風紀委員長に抜けられたら困るわ」
そんな女子生徒二人の睨みあいは、一真にとってはどうでもいいことだった。
「織斑、すぐに行くのか?このままでは夜間戦闘になりかねないが」
「大丈夫ですよ。もう工場には包囲網ができていますから、それに俺達が終わらせる頃には蒼い翼から警察課が来ますから」
「さすがだな。ではそうさせてもらおう」
「一真。俺も行くぜ」
「あたしもよ」
と言って、俺は外に出たが準備が出来次第駐車場にて待っていると言ってから、俺らは保健室から出た。レオは小野先生が何者なのか知りたいらしいが、知らない方が身のためだと思った。そして俺らは既に車に乗っていたのを確認してから、他のメンツも乗車する。その中には桐原先輩もいたけど。今回ゼロには、軍用車のジープをスキャンをしてから、変身したけど。そこは誰にも見られていないから問題はない。
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