魔法科高校~黒衣の人間主神~
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入学編〈下〉
実技棟での会話
「これ、一真君?それとも深雪?」
呻き声を上げて緩慢に這いずる侵入者を、気絶させるようにして大地たちCBの隊員たち。そしてロープのようなもので、身動きされないようにして拘束していく教師陣たち。
「本来ならば、深雪がやったんだがな。相手がキャスト・ジャミングを使ってきたから、俺がやった」
「お兄様の手を煩わせる訳にはいかないけれど、魔法を妨害されては使えないからお兄様がやってくれたわ」
俺と同時に深雪の回答だったけど。
「ハイハイ、麗しい兄妹愛ね・・・・。ところでキャスト・ジャミングって言ってなかったけ?よく魔法が使えたわね?」
「俺のは魔法であって魔法ではないからな。属性であるエスパーを使った念力でやったのさ」
「・・・・・ホントに一真君って超能力者よね。それでこいつらは、問答無用でふっ飛ばしても良い相手なのね?」
「生徒でなければな。あとこいつらとこいつにも攻撃してはダメだからな、俺らのお味方さ」
超能力者というキーワードを聞いたがそれを無視してから、そう言ったらエリカはニッコリと笑った。
「アハッ、高校ってもっと退屈なトコだと思ってたけど。ところでその人たちは一真君の知り合い?何処からどう見ても、軍隊にしか見えないくらいだけど」
「お~怖え。好戦的な女だな。俺も思った、この人たちは戦闘慣れしていることを」
「だまらっしゃい」
エリカの右手が半ばまで上がりかけたが、流石に特殊警棒でド突くのは自重したようだった。
「こいつらは、そうだな~。今更隠してもおかしいから言うけど、オフレコで頼むが、こいつらはソレスタルビーイングのメンバーたちだ。そしてあれはオートマトンという兵器だ。大漢崩壊のときや沖縄海戦で武力介入した組織とはこの事だ」
「ソレスタルビーイング!ってことは、テロリストたちを倒すために武力介入してきたって訳か。なら、納得だぜ。この人たちは戦闘慣れしていたし」
「通りで見たことのない、機械がある訳か」
と納得していたけど、俺にはまだ納得していないことがあった。
「ところで、レオとエリカはこんな時間に実技棟で何をしていたんだ?」
居残り補修でもない限り、実技棟は放課後に生徒が用のある場所ではない。冷やかしという意味ではなく、何気ない疑問であった。
「えっ?いや、そりゃ、まあ、何だ」
「えっ、ええ、まあ、その、何なのよ」
だからなのかこれほど動揺するのは、とても珍しいお二人であったけど。
「・・・・二人っきりで何してたんだ?」
真面目に聞いた疑問であった。俺の事を理解している深雪は、生真面目な表情の裏には人の悪い含み笑いという微笑を隠していると、すぐに分かったようで。
「二人っきりっ?」
エリカの声は面白いほどに裏返っていたけど。
「誤解だ!」
レオの声も、面白いほどに絶叫と言う感じではあったけど。
「俺は実技の練習をしてただけだぜ!この女が後から来たんだ!」
「あたしが練習しに来たら、この男が図々しく居座っていたのよ!」
「図々しくとは何だコラ!」
「分かったから叫ぶな、バカモノ共。『パシイィィィィイン!パシイィィィィイン!』誰も誤解など言っていないだろ」
事実はとても面白い夫婦漫才みたいだったが、いい加減にしないと思いハリセンでやめさせた。それもレオとエリカの威力は同じだったけど。
「他に侵入者は、見なかったか?」
「反対側を先生たちと、ソレスタルビーイングの人達のお陰かすぐに制圧したそうよ。あとはオート何だっけ?『オートマトンよ、エリカ』そうそう、そのオートマトンが攻撃を撃ち落としたり殲滅したりで、呆気なかったわ」
俺がエリカに真面目な声で問うと、先ほどのダメージ何かないようにそう答えた。しかもテロリストが侵入しているのに、動揺せずに落ち着いている。
「オレが言うのも何だが、こいつら、魔法師としては三流だな。オレが相手してたときは、三対一だったとしても魔法を練れないんだからよ」
レオは何でもないことのように言うが、大地たちの報告によるとホントのようだった。レオたちに言わせれば雑魚だったらしく、キャスト・ジャミングをしたとしてもこちらにはオートマトンがいるからか、素早く殲滅できたんだと。あとは焼夷弾によって燃えたところは教師たちが消火してたと聞くけど。あとは三人相手同時にしてたのは容易い事ではない。レオは思った以上にやれるようだ。
「エリカ、事務室の方は無事なのかしら?」
深雪の問いかけに、エリカが頷く。どうやらすぐに殲滅したらしく、先生たちが到着する前にオートマトンによる殲滅にCBメンバーが拘束されていたと言っていたけど。そこの配置も全ては俺が指示を出したところだ。貴重品があるところは特に配置させたけどな。事務室には多くの貴重品があるけど、俺はすぐに理解したのだった。
「こいつは陽動だな。こいつらの目的は実験棟と図書館だな」
実技棟には型遅れというオンボロな機械がある。価値があるとすれば、手榴弾の直撃を受けても表面が焦げる程度の損傷しか受けない。耐熱・耐震・耐衝撃の建物自体。破壊されたとしても、一ヶ月程度授業に支障は出るかもしれんが。俺がやってしまえば、破壊した意味はないからだ。他に破壊活動をするなら、学校の運営に支障が出る場所である実験棟と図書館だからだ。まあ図書館には主力は侵入させといて、外では隊員たちが大暴れしているそうだけどな。
「こちらが陽動だというのなら、予想以上の規模ですね。討論会へ結びつく抗議行動自体が陽動だったのでしょうか」
深雪の疑問に俺は頭を振った。
「あれはあれで本気なのだろ。それに完全装備してきたのが数人ではなく大勢いたこともな、あとはキャスト・ジャミングが無ければCBの活躍がなかったはずだ。それに同盟も単に利用された捨て駒だったのだろうな」
気の毒とは言わないで、捨て駒と言ったのはどういう意味か。単に背後にいる輩がそう考えているのではないかと思っただけだ。まあ本気で差別撤廃を叫んだ者に対しては侮辱になるかもしれんがな。
「さてと、どうしようかね?選択肢は三つだ」
二手に分かれるか、実験棟に向かうか、図書館に向かうか。
「彼らの狙いは図書館よ」
決断は第三者によるものだった。
「小野先生?」
踵の低い靴に細身のパンツスーツ、ジャケットの下は光沢のあるセーター。今日の服装は、前回より行動性重視の服装で現代のドレスコードと言う感じであったが。光沢の元は恐らく、防弾・防刃を重視した金属繊維だ。まあ俺と深雪の制服にCBのメンバーである蒼太たちのも防弾・防刃のだけど。
「向こうの主力は、既に館内へ侵入しています。壬生さんもそっちにいるわ。それにしても驚きね、まさかソレスタルビーイングが援護してくれるとは思わなかったわ」
三人の戸惑った視線が、俺に向けられる。俺は正面から小野先生を見据える。
「後程、説明を求めます。こちらがソレスタルビーイングの関係者としてですが」
「却下します、と言いたいところだけど、そうもいかないでしょうね。それにしても、一真君がソレスタルビーイングの関係者とは今日は驚きがいっぱいだわ。カウンセラーの小野遥の立場としてお願いしたい事があります。壬生さんに機会を与えてあげてほしいの。彼女は去年から、剣道選手としての評価と、二科生としての評価のギャップに悩んでいたわ。何度か面接もしたのだけど・・・・私の力が足りなかったのでしょうね。結局、彼らに付け込まれてしまった。だから」
「それについては甘いですね」
小野先生の依頼を蹴飛ばすように、切り捨てた一真。
「余計な情けで怪我をするのは、自分だけではないことを知っているはずですよ。ということで行くぞ、深雪に蒼太たち諸君!」
「はい」
『了解しました!』
「オートマトン部隊は他にテロリストがいないか索敵システムで、敵を探せ。味方と敵の個別索敵はトレミーで行われているから。行け!」
と俺はそう言ったら、オートマトン部隊は消火する班と索敵を使い残りの敵を見つけて殲滅する班に分かれた。そして指示を全て出した俺は図書館に向けて走り出したので、レオたちも俺を追うのだった。
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