| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

入学編〈下〉
  公開討論会前日×同盟による調略活動

次の日になった。俺たちは真夜が会長の通学時間を聞いたので、それに合わせるようにして送迎車に乗った。早めに登校する訳ではないが、会長に聞きたいことがあったので。しばらく待っていると、それほど長く待つ訳ではなかったけどな。

「会長、おはようございます」

会長は女性として小柄ではあるが、人混みに埋もれるタイプではないのですぐに発見できた。一際強い存在感というオーラを出しているので、俺はすぐに声をかけられた。

「一真君?深雪さんも、どうしたの?」

当然だが、俺と深雪が待ち伏せをしていたのは会長にとっては予想外の事だった。俺たちはいつも送迎車で乗っているので、待ち伏せは不可能と思っているようだったけど。ヴェーダと真夜からの伝言にて、会長がいつ何時頃にここに現れるというのは予測をしていたからだ。いつもなら、冗談めいた態度を作る余裕もなく捻りもない平凡な反応を返したけど。まあ会長を驚かしに来た訳ではないから。

「昨日の事が気になりましたので、あの後壬生先輩たちとの話し合いはどういう結論になったのか教えていただきませんか?あと真夜さんから通学時間を聞きだしていつもより早く来た訳です」

「意外ね。他人事は蒼い翼関連の者で、調べているはずだと思ったんだけど。あとお母さんの仕業か、通りで一真君がここにいた訳か」

「生徒会側と有志同盟側での会話は一切聞いていないので、調査するはずないですよ」

俺の回答を聞いて、納得半分と母親である真夜からの入れ知恵で待ち伏せできたことで、愚痴半分だったけど。それに俺らは既に「有志同盟」の活動に関わりを持っているのかもしれない。他人事は、調査をすればすぐに分かる事だが、蒼い翼関連で介入していないから調べようがないからだ。俺らにはこれから何が起こるのか聞く権利を持っているし、もしテロ行為をするのであればCBが動く事になる事は知っているからだ。

「彼らの要求は一科生と二科生の平等な待遇。でも具体的に何をどうしたいのか、その辺りはよく考えていないみたい。むしろ、具体的なことは生徒会で考えろ、って感じだったわ。まあ、それで押し問答になってね。元々昨日は、今後の交渉について話し合いましょうという趣旨だった訳だしね。結局、明日の放課後、講堂で公開討論会を行う事になったの」

「随分と急展開ですね」

俺の驚くリアクションは控えめな方ではあった。蒼太と沙紀は明日の事についてで、双方と話し合っていた。それと同時にソレスタルビーイングは待機状態となったが、月中基地内にいる者たちとトレミーは発進準備をしていた。そして今夜になれば、大気圏突入してから明日行われる討論会を妨害する行為またはテロリスト対策にて隊員とオートマトン待機状態として配置するからだ。

「ゲリラ活動する相手に時間を与えないという戦略思想は何となく理解は出来ましたが、その分こちらも対策を練る時間はあまりない事ですね。まあその分こちら側は準備をしていますが、生徒会は誰が討論会に参加するのですか?」

俺の質問に会長はまるで「良くできました」みたいな笑みを作ると同時に、こちら側の準備というのが気になったようだが自分の顔を指差した。

「まさか、会長お一人ですか?」

俺らは半信半疑ではあった。でもまあ会長自身も、ちょうどいいのか一科と二科の溝を埋めるにはいいチャンスに違いない。

「はんぞーくんにも壇上に上がってもらうけど、話をするのは私一人よ。一真君の言う通り、打ち合わせは時間が足りないしね。一人だったら、小さな食い違いから揚げ足を取られる心配はないし。怖いのは印象操作で感情論に持ち込まれることよ。それに一科が二科に対する事は、既に一真君が処罰してくれたから助かっているけど、それは一時的にしかならないからね」

「ロジカルな論争なら負ける気は無い、と?あとはいくらこちらで処罰できたとしても、一時的なことは確かなようです。陰で陰口を叩く生徒も多いようですし」

俺がそう言うと、会長は自信ありげに頷いた。

「それにね。もしもあの子たちが私を言い負かすだけのしっかりとした根拠を持っているなら、これからの学校運営にそれを取り入れていけば良いだけの事よ。それに一真君の力も借りたいことだしね」

そう言ってから俺らは学校に登校したが、俺の力を借りたいという事は蒼い翼関連なのだろうと思った。俺らと深雪たちと別れた俺と蒼太は自分のクラスに行くが、過去に例のない討論会が明日開催されると発表直後から、同盟(「学内の差別撤廃を目指す有志同盟の事をそう呼ぶようになった」)の活動が活発になっていた。というより活性化の方が分かりやすいかな。多数派工作班とはこの事だろうと思ったし、戦国時代なら調略とも思ったが。始業前・休み時間・放課後、賛同者を募る同盟メンバーの姿が校内の到る所に見られるようになった。

「二科生の皆さん!我々は学内差別を撤廃する有志同盟の者です!」

「今朝生徒会長から発表があったように、明日は一科生と二科生の待遇に関しての公開討論会が行われます!」

「私たち二科生が、今の待遇を改善するまたのない機会です。皆さんもぜひ討論会に来てください」

と放課後になってまで、勧誘行動をしていたが。有志同盟の者たちには、皆、赤と青で縁取られた白いリストバンドを付けていた。もう隠す気ないのか、それともこのシンボルの意味を知らないのかと思っていた。俺は後者だと思うんだが、洗脳でもされているのかとも思ったが。まあ知らなければ罪は無い、という考え方は甘いというもんだ。一度そこに入ったのが最後だと思えと言う感じだと。まあ同盟の行動を妨害する気はさらさらないけど。「話し合い」に臨んで賛同者を多く確保するのは当然の事だ。自分に無関係なところで精神的に未成熟な高校生を情緒的な言葉で錯覚させて底なし沼に引きずり込む行為に干渉するつもりはさらさらなかった。

「中には強引にしてでも賛同者を集める者もいるようですね」

「そうだな。俺も二科生だが、声を掛けるのはこれを見れば一目で分かるだろう」

と指差したのは腕章である。強引なのは、「君も日頃から二科生の待遇に疑問があったんだろ?」「我々には君の応援が必要なんだ!」とかだったけど。声をかけられた人達は困惑気味であったが。とその時知り合いの顔がいたので声をかけた。

「美月」

討論会前日の放課後、右手に例のリストバンドをしていた、三年生と思しき者に話しかけられて困惑顔であった。美月は画集らしきものを抱えていたのか、部活に使う資料を何処からか調達したのかは分からないが。今世はデジタルな時代であるが、俺らみたいに紙の本を愛用しているのは少なくない。それに美月が抱えているのも、美術部で使う物だと理解したが、この学校の美術部は随分とこだわっている部分があるようで。

「あっ、一真さん」

俺の姿を見たのか、美月はホッとしていた。その顔から見るに相当な時間にて、拘束していたように思えた。俺はその上級生の首から下にかけて見たが、あの時遭遇した者に間違いないと思った。長身で痩せ型に見えるが、武術で鍛えた身体をしていて俺と蒼太は、こいつがあの時の者かと思った。

「風紀委員会の織斑です。あまりの長時間に渡る拘束は迷惑行為にあたるので、お控えください」

俺は美月に事情を聞くことなく、その上級生に話しかけた。その上級生には、左胸にエンブレムがない。それとあれは伊達メガネではなさそうだ。

「柴田さん、僕の方は何時でもいいから、気が変わったら声をかけてくれると助かる」

そう言った上級生は紳士的に言ってから立ち去った。立ち去るのを見たあとに、俺は経緯を聞いた。

「あの人は誰だ?」

「剣道部の主将さんです。お名前は司甲さんとか。・・・・私と同じ『霊子放射光過敏症』で、同じように過敏感覚に悩む生徒が集まって作ったサークルに参加しないかって」

美月の目の事については、既に理解していたので驚きはしなかったが。それを自分から打ち明けるとはなと。

「それで同じ悩みを持つ同士で分かち合おう、と?」

「いえ、司先輩はそのサークルに入って、症状が随分と改善したそうで、私の為になるのではと」

「それはなんとまた」

聞くだけでもそれは胡散臭い話だと思った。胡乱ともいうが。口にしなくても分かるが、魔法的な感覚が鋭すぎることによる弊害は、その知覚能力をコントロールすることが唯一の対処法でもある。能力を制御できる為には、正しい訓練が一番の近道でありそれが正道と言えるだろう。生徒同士で作ったサークルで効果的な訓練プログラムがあるなんてあまり聞いたことはないし、そのサークルに指導員が付いていたら話は別になる。だが、そもそも教員の数が不足しているからこその、一科と二科の制度である。

「授業で精一杯だから、と何度もお断りをしているのですが」

「そうだな。欲張らずに、正道にてその力をコントロールする方が良いと思う」

俺のアドバイスを聞いて、美月は「そうですね」と言ったあとに部室に向かったのだった。蒼太とも話し合ったが、そういうサークルでの勧誘自体が怪し過ぎると結論に到った。サークルというのはあくまで口実、あるいは「餌」として、本来の目的が仲間に引き入れようとしたのだろうな。同盟が活動をする前に、俺を襲うという実力行使に出たところから見て、あの三年生は本物と見る。釣られる側でなく釣る側として。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧