魔法科高校~黒衣の人間主神~
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入学編〈下〉
カフェへのお誘い
生徒会にオフはあっても非番はない。交代制ではないからだ。深雪は今日も生徒会室で仕事がある、俺達兄妹(親子)が片方を置いて帰るという選択肢はない。送迎車もあるが、全員揃って帰った方が運転手役をしている結衣の負担が少なくなるからだ。俺の横には深雪で一歩後ろには護衛の蒼太と沙紀が歩いている。俺と深雪だけを客観的に見るとブラコンかシスコンと揶揄されても仕方がないが、護衛の目が光っているのでそれはない。
「ごめんなさいね、お兄様。わざわざ待っていて下さって」
相手を待たせることに罪悪感を覚える深雪であるが、俺は気にすんなと言いながら頭をポンっと置く。
「それに前にも言ったが送迎車を運転している結衣の負担を減らすためには、この方法しかないというのは話しただろう。だから、深雪が気にする事ではない」
叩くより撫でると言った方がいいのか、優しい手付きで撫でるので深雪にとっては気持ちよさそうにしている。下校途中の生徒が行き交る廊下を歩きながらであったが。生徒会室へ向かう俺らの視線については既に気付いているが、それは好意と悪意の半分であった。俺は気にしていないからか、護衛は目を光らせるだけで視線排除まではしていないが。悪意は主に俺に対してだが、もう慣れた。先週のことで、こうなるとは分かっていたし、忌々しげな反感と隠しているが恐怖という畏怖。強者に対する畏れではなく、未知なるものに対する恐れ。俺の活躍は、同じ二科生でも同じことだったが、声をかけられるのは今回が初だった。
「一真様」
「織斑君」
蒼太が声をかけたあとに俺を呼ぶ声により、歩きを止めてから四人で振り返る。それと同時に蒼太と沙紀は俺らの後ろに下がる、敵意や殺意が感じない相手が話しかけてきたら俺らの後ろで待機と言ってあるからだ。命令ではなく提案だったけど、で、その声は女性の声であると同時にどこかで聞いたことがあるなと思った俺。
「こんにちは。一応、初めまして、って言った方がいいのかな?」
セミロングでポニーテールをした美少女の顔に見覚えがあった。
「そうですね、初めまして。壬生先輩ですよね?」
俺と蒼太にとっては、あのときの剣道部員の二年生で当事者の一人である。沙紀は蒼太に誰?と聞いていたので、脳量子波で彼女のことを教えたらしい。俺らが歩きを止めたので、彼女は躊躇もなくこちらに近付いてくる。物怖じない性格なのか、それとも相手が下級生だから安心なのか。だが相手は敵意も殺意もないからこちらは身構えることはないし、深雪は上級生が俺の前に立ち止まるので後ろへと隠れる。
「壬生紗耶香です。織斑君と同じE組よ」
俺の目でも護衛から見た目でも、肩と左胸にある紋様がないことを。同じ=二科生と判断したからだ。
「この前はありがとう。助けてもらったのに、お礼も言わないでごめんなさい」
親しげに投げ掛けた微笑みは、同年代の少年には吸引力というか魔法を扱う者にとっては安易に使用はしないが心を奪う魔力が秘めたように思えた。
「あの時のお礼を含めて、お話したい事があるんだけど・・・・。今から少し付き合ってもらえないかな?」
彼女の笑顔は男子高校生に与える影響力はとてつもないものだろう。
「今は無理ですが、十五分後なら。妹を生徒会室に送らなければいけませんので」
あっさりと拒絶されたと同時に、それについての理由を聞くとようやく理解したかのようだった。
「えと、それじゃあ、カフェで待っているから」
想定外の反応に調子を狂わせながらも、壬生先輩は約束を取り付けることに成功したようだった。その後生徒会室に着いたが、俺は扉の前までだ。中には服部副会長もいる、いくら俺がいないところで謝罪の言葉を言ったからと言って、顔を合わせにくいということになるし相手側にとっては苦手な者と認識している。護衛の沙紀も中に入るが、まあ大丈夫だろうと思い生徒会室前で止まる。
「ではいつも通り図書館で待っているからな、壬生先輩の事については任せな。部活の勧誘かただのお礼なのかもしれんが、仕事が終わったらこれで連絡してくれ」
これとは指を差すと頭だ。深雪の仕事が終わると必ず脳量子波で連絡をしてから、待ち合わせている。盗聴もされないから心配もない、これは回線でいうなら秘匿回線よりも高度な回線と言って良いほどだ。秘匿回線より秘密な会話は全てこれで話し合っている。
「分かっております。ですが、一応はお気を付けを。お兄様のお力を見てしまった一人ですから、私利私欲で来る輩もバックにいるかもしれませんから」
「まあその時は俺らに任せてほしい。蒼太もいるし、バックには蒼い翼がある。それに沙紀もいるし、問題発言さえなければ大丈夫さ」
と言ってから、深雪はカードリーダに向かう。沙紀はカードを持っていない、行動をするにも常に護衛対象から離れない事。まあトイレとかだったら一緒に行くからな。男女だったら色々とまずいが、同性同士なら気持ちも分かるし友人からの相談にも乗れるからな。周りから見ると、護衛者は人生の先輩とも言われるらしい。そして俺は十五分後にカフェに向かったら待ち合わせの相手はすぐにいた。入り口の脇で立って待っていたからだ。
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