魔法科高校~黒衣の人間主神~
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入学編〈下〉
無効化能力の実態
「・・・・でさ、その桐原って二年生、殺傷性ランクBの魔法を使ったんだろ?よく怪我しなかったな」
「それに片手で掴んだから心配したわよ~。でもそのあとは取り押さえてたけど」
「心配させたのは悪かった。あれは致死性があると言っても、高周波ブレードは間合い・有効範囲が狭い魔法だ。真剣の刀と変わらないほどの切れ味を持つが、対処は難しいという訳ではないから」
「エリカちゃんの言う通りだけど、それって真剣を振り回す人の対処法が分かっているというのもですが危険ではなかったのですか?」
「大丈夫よ、美月。お兄様なら、心配いらないわ」
「随分余裕ね、深雪?」
レオは手放しで感心しながらだったけど、美月は真剣を振り回すのを素手で止めたという言い方に対して深雪は心配ないという。それに対して、エリカは余裕があるのねみたいな感じで言った。
「あの中で数十人を相手を裁いた一真君の技は見事としか言えないものだったけど、桐原先輩の腕も決して鈍刀じゃなかったよ。むしろ、あそこにいた人達の中では首と胴体が切り離されていたよ。深雪、本当に心配じゃなかったの?片手で真剣を受け止める一真君を」
エリカに問われた、深雪の答えは一言だった。
「ええ。お兄様に勝てる者などいるはずがないもの」
それは躊躇無しでの断言であった。
「・・・・・えーと・・・・・」
さすがのエリカも絶句していたけど。エリカはあの時俺の技というより対人戦のスキルを見ている。エリカの目から見ても、桐原の太刀筋は申し分なく鋭いものだった。切れ味もさっき一真が言った通り、対処は難しいわけではないというが、実を言うと難しいことだ。真剣を相手にするのに、緊張感や恐怖感というのを感じるが、一真にはなかったことを。躊躇せずに真剣を握った事には、さすがに剣術をしているエリカにとっては自殺行為だ。桐原の竹刀を握った瞬間にキャンセルされて、首根っこを持って手首を合気術の要領で叩き付けた。全部見た感じではエリカには達人級しか見えない、一真の歳で達人級を極めているというのは不可能に近い。ここまで自信を持って心配ないと言い切れるエリカには出来ないことだ。
「・・・・一真さんの技量を疑うわけじゃないんだけど、高周波ブレードは単なる刀剣と違って、超音波を放っているのでしょう?」
「そういや、俺も聞いたことがあるな。超音波酔いを防止する為に耳栓を使う術者もいるそうじゃねぇか。まっ、そういうのは最初から計算ずくなんだろうけど」
「そうじゃないのよ。単に、お兄様の対人スキルが優れている訳じゃないの。魔法式の無効化は、お兄様の十八番なの」
美月とレオの懸念に答える深雪の表情はどこか失笑という感じだった。そしたらエリカが食いついた。
「魔法式の無効化?情報強化でも領域干渉でもなくて?」
「ええ」
得意げに頷く深雪と少し呆れた俺に対して、エリカは感嘆と呆れという半々の顔でつぶやいた。
「それって結構なレアスキルだと思うけど」
「そうね。少なくとも、高校の授業では教えられないし。教えられないからと言っても、誰でも使えると言う訳ではないの。エリカ、お兄様が高周波ブレードを片手で防いだのは、その無効化のを纏ってから握ったのよ」
「そうだ。確かに一真君は握ったけど、一滴の血も流れずに魔法がキャンセルされてたし、魔法を使おうとした者もいたけど魔法式すら浮かんでこなかった」
とエリカがそう言ったら、ニッコリとした笑顔を作る深雪に対して俺は白旗を出したと言う感じではある。
「全く、深雪には敵わないな」
「それはもう。お兄様のことならば、深雪は何でもお見通しですよ」
「いやいやいやいや、それって兄妹の会話じゃないぜ?恋人同士の会話の度を超えているって」
苦笑と微笑、笑顔を見合わせる二人の間にツッコミを入れるレオ。
「「そうかな?/そうかしら?」」
俺と深雪の言葉に、硬直したあとに腕を力尽きたのように机に突っ伏した。
「・・・・このラブラブ兄妹にツッコミを入れる事態が大それているのよ。アンタじゃ太刀打ちできないって」
「ああ、俺が間違っていたよ」
しみじみ語るエリカに、身体を起こしながらしみじみと答えるレオ。
「おいおい。その言われようは不本意なのだが」
「いいじゃありませんか。私とお兄様が強い兄妹愛で結ばれているのは事実ですし」
レオたちにもう一発さらりと言ったことにより、レオとエリカは机に突っ伏した。レオは血でも吐いたかのようなリアクションだったけど、はて?こういうのって昔あったような。そして椅子を動かして俺のところに身を寄せ合う深雪に対して、蒼太も沙紀もいつものことだなと言いながらコーヒーを飲んでいたけど。家でもいつもこうだし。
「深雪。悪ノリは程々にしろよ。冗談だということを分かっていないのが約一名いるからな」
俺が苦笑いしながら言うと、深雪とレオとエリカは約一名といったので美月の方を見た。冗談じゃないかのような考えをしていたのか、顔を真っ赤にしていたけど、やっと冗談ということで左右を見ながら残りの者たちはため息が出る。
「まあ、これが美月の持ち味よね」
「あぅ・・・・」
エリカの微笑ましげな呟きに、美月の顔が別の意味で赤く染まった。若いことで、俺らも見た目は若いけど。
「・・・・そういえば魔法の無効化とか言ってなかったか?」
自分もノッてたのとはいえ、これ以上言っても何も変わらないのでレオが強引に話題を変えてみせる。
「まあ近いので言えば、キャスト・ジャミングだけどそれも違うけどな」
「キャスト・ジャミングって、魔法の妨害電波のことだっけ?」
「電波ではないが」
キャスト・ジャミングは、魔法式が事象に付随する情報体・エイドスに働きかけるのを妨害する魔法の一種だ。広い定義でいえば無系統魔法と同じ性質を有している。同じように相手の魔法を無効化する『領域干渉』という魔法がある。この術式は、自分の中心とした一定のエリアに対して、何の情報改変も伴わない、干渉力のみが実義された魔法式を作用させることにより、他者の魔法式の干渉をシャットアウトする技法である。これに対してキャスト・ジャミング無意味なサイオン波を大量に散布することで、魔法式のエイドスに働きかけるプロセスを阻害する技術だ。領域干渉はある意味で、魔法を予約することにより、他者の魔法の割り込みを防止するものであり、基本的に相手より強い干渉力が必要とされる。
一方、キャスト・ジャミングは他のユーザーがデータをアップロードしようとしている無線回線の基地局に対して、大量のアクセス要求を行うことによりアップロードの速度を極端に低下させるもんで、干渉力の強弱は問題はない。代わりに、四系統八種全ての魔法を妨害できるサイオンノイズ。周波数を頻繁に変えて不原則に切り替える事により、一本の送信アンテナを全て塞ぐような電波を作り出すことが必要不可欠。
「あれって、特殊な石が必要じゃなかったけ。アンティ何とかって」
「アンティナイトよ、エリカちゃん。あれはとても高価なモノだと聞きましたが」
アンティナイトというのは、この条件を満たすサイオンノイズを作り出す物質として知られている。魔法師自身の演算でキャスト・ジャミング用のノイズを作り出すのは困難な事だ。領域干渉とは異なり、相手も自分も魔法発動を阻害されてしまうからだ。魔法師本人がキャスト・ジャミング用ので意識をノイズでの構成をしようとも無意識に拒否してしまうからだ。その為、キャスト・ジャミング使用をする条件はアンティナイトというのが必要不可欠なのだが。俺のはキャスト・ジャミングでも領域干渉でもない。
「俺は持っていないし、さっきのは例えとして挙げたものだ。それにアンティナイトは軍事物資だ、いくら軍事に伝手があってもそれは使わんさ」
「えっ?でも魔法の無効化は領域干渉か情報強化とかキャスト・ジャミング以外はないはずですが」
実際に声を発した美月のようであるが、実際見たエリカも見ていないレオも訳が分からないと言う感じだ。
「じゃあ、例えばとする。このコップに入った水をコップごと凍らせる。周りは氷となってコップと水に氷も一緒となる」
俺が説明をしている間に、水が入ったコップを凍らせた。これ自体はCAD無しでも使えるが、速さが段違いに違うからなのか。
「そして俺の無効化の力を手に纏わしてから、凍ったコップに触れると。・・・・・こうなると言う訳さ」
凍ったコップを無効化の能力で纏わせた力をコップの周りで凍ったのを、触れると凍っていたのが一瞬で液体である水と固体の氷となりコップの周りは一切水浸しではなかった事に驚くレオたち。
「・・・・こんな魔法、ありましたっけ?」
「正確には魔法、ではなくて俺の能力と言って良いくらいだ」
「能力?昔でいう超能力者みたいなのなの?」
超能力者は魔法が技術化される前のことで、これは今から百年前のことだ。まあ俺の力は超能力者という方が正しいが、正確に言うとこれは神の力の一つ。でもここでは能力の一つとして言わないと納得しないことだからな。
「半世紀前にそう言われていたようだが、それを技術化したのが今の魔法と言っていいほどだ。だが、俺のは魔法であって魔法ではない。俺はエレメンツ使いとも言われるしな。古式魔法でいうなら精霊魔法とかも使えるが、それはあくまで古式。俺のは自然と精霊と会話とかもできてしまうほどの持ち主と言う訳だ」
するとレオは小声でマジかよとか言ってたが、これは本当のことだ。エレメンツ=属性についても、これは自然とできるようになった力だ。だから、左手に炎の球を出しながら右手には風を出すことが出来て、現代魔法でいうマルチキャストというらしいが。
「・・・・・具体的な事については考えても分からんが、実際に見せられたら納得するしかねぇな。液体と固体を固体にして元に戻すなんて技術はないし。だが理屈は理解はできた、それに教えてもらっても誰も使えないもんな」
「まあこれを使える者は、数人しか使えない。それにもしこの力が国防や治安の分野だと、魔法無効化を持つ者をスカウトしては、社会基盤が緩む。世の中には魔法を差別の元凶と決めつける輩もいる。アンティナイトは産出量が少ないし現実的な脅威となるし、公表する気はさらさらないよ。バレても諜報部が塗りつぶしてくれるから」
諜報部というのは、無論蒼い翼にいる諜報部だ。内閣のもいるらしいが、こちらはスパイ並みだし。無線無しで通信できる脳量子波が使える、それにこれを使えるのは悪人はいない。全員俺らの元仲間と現部下だし。レオはやっとだが、何度も頷いているし美月も同じような感じだった。そう考えるといつ狙われるか分からないからな、まあ襲われたとしたら即刻ソレスタルビーイングによる粛清されるけどね。
「お兄様のお力は、学内ならまだしも外から知られては困る力を出来るだけ使わないようにしてきたけど。それに相手が展開しようとする魔法を察知したり、魔法や異能の力を全て無効化できる事も普通なら出来る事ではないのだから」
と、深雪がこの話のオチを言ったことでこの話は終わった。そして会計のときに額を見た時はホントに払えるのか?と心配されたが普通に払ったことで、一真ってどこかの企業の御曹司なのかとか聞かれたけど。まあ俺は表では蒼い翼の関係者だけど、裏では社長をしているし、FLTでは会長をやってると同時に謎の魔工師であるトーラス・シルバーという事も。その名の片割れともいうが。この後にレオたちを駅前に送ったあとにちょうど来た送迎車に乗って家に帰った。軽食はレオたちだったからか俺らは普通に食事をした。
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