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美しき異形達

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第二十五話 幻と現実その三

「それに」
「そう、それによね」
「そうしたことに興味もないから」
「読者モデルとかする気ないわよね」
「ファッション雑誌は読むけれど」
 女の子の嗜みとしてだ、そうした雑誌は菫にしても読む。だがそれでも自分そっくりの女の子が雑誌に出ていたのは見たことがない。
 それでだ、姉にそのことも尋ねた。
「私みたいな娘が出てたの」
「私が読んでる雑誌にはね」
「それどんな雑誌なの?」
「男の子向けの雑誌よ」
「お姉ちゃんそうした雑誌も読んでるの」
「女の子向けのファッション雑誌も読んでるけれどね」
 それでもだというのだ。
「そちらも読んでるのよ」
「それはどうしてなの?」
「だって女の子からだけでなく男の子からも見られるじゃない」
 街を歩いているのは女の子だけとは限らない、言ってみれば当然のことだ。
「だから、男の子がどういうのを好きなのかもね」
「チェックしているの」
「そうなの、それでなの」
「男の子向けの雑誌も読んでるのね」
「そこであんたそのままの娘が出ていたの」
「そうだったの」
「あと、桜ちゃんもね」
 彼女もだというのだ。
「出てたわよ」
「大和撫子よね」
「そう、やっぱり大和撫子はね」
 このタイプはとだ、姉はお茶漬けの漬けものを実に美味しそうに食べつつ自分と同じものを食べている妹に言った。
「人気あるわよ」
「人気あるのね」
「ない筈ないじゃない」
 大和撫子が、というのだ。
「日本人ならね」
「大和撫子は」
「まさにアイドルよ」
「大和撫子はアイドルなのね」
「そうよ、それも神格化されたね」
「そこまで凄いのね」
「あんたも着物着てみる?」
 姉は笑って妹にこうも言った。
「そうしてみる?」
「着物ね」
「そう、もっとね」
 姉は菫が薙刀部所属であることは知っている、そして自分自身もそうだが家の仕事であるので茶道や華道をしているのも知っている、その時に和服を着ることもだ。
「着てみたら?」
「和服は嫌いじゃないけれど」
 姉のアドバイスにだ、妹は少し微妙な顔になって返した。
「それでも」
「動きにくいっていうのね」
「ええ、桜ちゃんよくあれだけ動けるわよね」
 ここで彼女の名前を出した、よく和服を着ているからだ。
「もう自然に動けて」
「いつも着ているからよ、あの娘はね」
「慣れっていうのね」
「そう、慣れているからね」
 それでというのだ。
「あれだけ動けるのよ」
「着物もいつも着ていると」
「慣れるのよ、身体もね」
「よく言われてることだけれど」
「まして。私達のお家の仕事は」
「茶道と華道、日舞だから」
「書道もやってるしね」
 そうした日本文化のものばかりだ、それでなのだ。
「和服が仕事着よ」
「だから慣れないと駄目なのね」
「そうよ、仕事着はいつも着てるでしょ」
「だから余計に」
「あんたももっと慣れなさい」
 着物に、というのだ。 
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