美しき異形達
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二十四話 麗しき和服その十五
「お気をつけ下さい」
「トリカブトだからだよな」
「はい、猛毒があります」
「そうだよ、僕にもね」
「毒が、ですね」
「あるよ。それもとびきり強いのがね」
自分でもこう言う怪人だった。
「そしてその毒でね」
「私達をですね」
「僕の毒はそれこそこの街一つを滅ぼせる位なんだ」
つまり神戸市の全市民の命を奪えるのだ。
「だからね」
「私達もですか」
「そっちの娘はどうでもいいよ」
裕香を指差しての言葉だった。
「君は力もないしね」
「いいっていうの?」
「僕達のことを言っても誰も信じないしね」
口封じの必要もないというのだ。
「だからね」
「私はどうでもいいの」
「その通りだよ、君はいいよ」
それこそ全く、というのだ。
「僕の獲物はあくまでね」
「私と」
「あたしなんだな」
「そうだよ」
こう桜と薊に答えたのだった。
「君達二人に僕の毒を全てあげるよ」
「遠慮させてもらうぜ」
薊は怪人に即座にこう返した。
「冷やしあめなら別だけれどな」
「おやおや、僕は遠慮は嫌いなんだけれど」
「遠慮でも何でもな」
「僕の毒はいらないんだね」
「ああ、逆にな」
身構えての言葉だった、まだ棒は出していないが。
「火をお見舞いしてやるぜ」
「君が闘うのかな」
「あんたがお望みならな」
「いえ、薊さん」
薊が今まさに棒を出そうとしたところでだった、桜が一歩前に出てだった。
そのうえでだ、その薊にこう言ったのだった。
「ここは私が」
「桜ちゃんがかよ」
「はい」
そうさせてもらうとだ、桜は微笑んで答えた。
「そうさせて頂きたいのですが」
「そうか、それじゃあな」
薊も桜の言葉を聞いてだ、そうしてだった。
動かないことにした、それでこう桜に言った。
「じゃあ頼むな」
「わかりました、それでは」
桜は薊に微笑んで応えてだった、そのうえで。
自身の武器であるレイピアを出した、それを右手に持って構えてだった。
そうしてだ、怪人に対して言うのだった。
「では参ります」
「君が最初に僕に倒されるんだね」
「いえ、それは違います」
優雅な微笑みのままでだ、怪人に言う桜だった。
「私が貴方を倒すのです」
「つまり逆になるっていうんだね」
「そうです」
その通りだというのだ。
「貴方が仰ったことと」
「大人しい顔して言うね」
怪人は桜の言葉を聞いてだった、明るい声で返した。
「君面白いね」
「そう言われますか」
「実にね。じゃあね」
「桜ちゃん気をつけろよ」
薊が闘う桜に忠告した。
ページ上へ戻る