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転生者の珍妙な冒険

作者:yasao
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コイツ・・・・・ツェペリか!?の裏で

 
前書き
前回と時系列は同じ。
タルタスやサリナ達の話です。 

 
聖斗が目覚めてジークの存在に警戒してた、大体そのくらいの時・・・・・。
サリナ、ネーナ、タルタスの3人は森の外れにいた。

「ヨシュアさん、大丈夫でしょうか・・・・?」
そう口を開くネーナの表情は沈み、雰囲気からしても落ち込んでいるのが分かる。
無理もない。いきなり現れた得体の知れない男に「お前らじゃ力不足」と言われ、反論しようにも言い返せない根拠を出されてしまったのだ。
自分は、自分の好きな人と共に歩むに相応しい実力がない。
その事実が、目覚めた姿を見れなかった愛しい人の姿と共にのし掛かり、彼女の心を重く沈ませた。

「まぁ、確かに不安だが俺らが今ここで心配しても何にもならん。今出来るのは取り敢えず今後のことを考えるだけだ。」
そう言ってネーナを励ますタルタス自身も、内心では落ち込んでいた。
ブランクがあったとは言え、街最強の冒険者だった自分を負かした男、夜集阿 聖斗。そんな男が負けた自分に「一緒にいて頼もしい」と言って旅の同行を求めてきたのだ。あの時は現役復帰を喜ぶと共に、その事が嬉しかった。
それなのに、頼もしいと言われた力を何一つ活かせず、自分は何も出来ず、結果突きつけられた現実。落ち込むのと同時に、情けない自分への憤りも抱いていた。

「・・・・・・・。」
1番目も当てられない程憔悴しているのがサリナだった。
彼女は、自分を恥じていた。
今回の旅の中では、いや、出会ったときから自分は常に聖斗のお荷物だった。良くてお荷物にならない時でも、役には立てなかった。
折角、好きになった人が、自分を旅に誘ってくれたのに、必要としてくれたのに・・・・。
自分は何も出来ない、自分は足手まとい。そんな自分への負の感情が内部で渦巻いていた。









「兎に角、あんな得体の知れない野郎に『力不足』なんて言われて黙ってられるか!! もっと強くなって俺らでも大丈夫だってあの野郎に証明してやろうぜ!!」
「そう、ですね! あんな人に何か言われたくらいで落ち込んでたら、それこそヨシュアさんの足手まとい、力不足です! 頑張りましょう!!」
数十分の話し合いの結果、そう力強く発言するタルタス&ネーナ。
どうやら何とか気を持ち直したらしい。
「じゃあ取り敢えず、俺はギルド本部にいってオヤジにもう1回鍛え直してもらうわ。」
「そうですか。確かギルド本部があるのは王都でしたよね? じゃあ私も一緒に王都まで行ってそこで修行を積んでみます。王都だったら強いパーティーも、難易度の高い依頼も、優秀な訓練施設もありそうですし。」
そうお互いの計画を語る2人。
そこで気付いた。
まだ1人、先ほどから全く何も話していない少女がいると。
「サリナはどうするんだ? 俺らと一緒に来るか?」
「王都には国直属の騎士団がいますし、サリナちゃんのジョブにあった訓練も出来ると思いますよ?」
自分たちより実力の低い彼女を気遣って、2人が声をかける。
だが、サリナは首を振るだけだった。
「大丈夫です。皆さんの修行の邪魔は出来ませんし、私も私で頑張ります!」
そう言って微笑んでみせるサリナ。
「そう、ですか・・・。」
「分かった。無理はするなよ?」
「はいっ、ありがとうございます!!」
そう言って3人は別れた。


この世界で、15を越えた者が「頑張る」と言ってるのに、余計な口出しは出来ない。
生と死がより近い世界だからこそ、1人1人の生き方は個々の意見が尊重される。
この時のタルタスとネーナの反応は、ある意味自然な反応だったと言える。

だが、例えそうだったとしても。
この時の行動が原因で、後に1つの事件が起こることになる・・・・・・・。



























sideサリナ
フォードさんとネーナさんと別れて、1人で森の中を歩く。
私たちを追い払ったあの人曰く、この森の魔物はあの人が住む時に皆蹴散らしちゃったから安全なんだそうだ。
そんな森の中を歩きながら、考える。セイトさんのことだ。
あの人は私によくしてくれた。
守ってもくれたし、優しくしてくれたし、常に気遣ってくれた。
ちょっと不思議で何を考えてるのか分からない時もあったけど、それでも私は彼の優しさに惹かれた。

じゃあ、私は?

私は彼に、何かしてあげられただろうか。
考える間もなく答えは出る。何も出来ていない。
私はいつでも、足を引っ張ってきた。トラブルの原因を作ってきた。
最初にあったとき、私が無闇に突っ走ろうとしたから彼に迷惑をかけた。
ジェリアの街では、私が男爵に声をかけられたから男爵との戦いが起こって、その後男爵にセイトさんの命が狙われることになった。
ケモナでは捕まった。
そして、今回・・・・。
今回の私は、本当に役立たずだった。
最初に切り裂かれて、気絶して、セイトさんが治してくれたけど彼自身も危険にさらされた。
今のままの私だったら、この先も彼に迷惑しかかけられない。
もしかしたら、そのせいで彼が死んでしまうかもしれない。
「・・・・そんなの・・・・嫌だ・・・・。」
思わず口からこぼれた言葉。
そう、嫌だ。私はもっと強くならないと。
彼と共に助け合えるように、彼に相応しいように。

でも、どうやって・・・・?

私には伝手もない、訓練場に入るお金もない。
ネーナさんやフォードさんに迷惑をかけたくなかったから断ったけど、実際は連れて行って欲しかった。
私はどうすればいいんだろう・・・・・・。




「『君、随分と物悲しそうだけど、何か悩みでもあるのかい・・・?』」



私にそんな声がかかったのは、その時だった。
「え・・・・?」
思わず顔を上げたその先、そこにいたのは金髪灼眼の凄い美形の男の人だった。
「『あぁ、ごめん。驚かせてしまったかな? 私の名前はディノ=ブラド。大丈夫、君に危害を加えるつもりはないよ。』」
怪しい。
普通なら、そう考える。「大丈夫」なんて言われても絶対に信じない。
私は冒険者、その程度の心構えはしっかり出来てる筈だった。
だけど、その人の声はどこか心が安らぐようで、それでいて心の奥深くに入り込むような鋭さも持っていて、思わず警戒心を解いてしまうような声だった。
結果、私は洗いざらい話した。
今までのこと、私が強くなりたいこと、だけどその手段がないこと。
ディノと名乗ったその人は、何も言うことなく静かに話を聞いてくれた。
「『そうか、それは大変だね。』」
「・・・・はい、皆には迷惑をかけたくなかったんですけど、私だけじゃあどうしたらいいか・・・・。」
「『1つ、方法があると言ったら、君はどうする?』」
「えっ・・・?」
ディノさんが言った思いがけない言葉に、思わず顔を上げる。
ディノさんはとても優しい微笑みを浮かべて、また口を開いた。
「『私に1つ、考えがあるんだ。君が私についてくると言うのなら、きっと何か力が手に入るハズだよ。』」
出来すぎてる。
頭のどこかがそう言って警鐘を鳴らした。有り得ない、この男は危ない、早く逃げろ、と。
だけど、私は、ディノさんに頭を下げた。
もう、迷惑をかけたくない、彼を危険に晒したくない。
だから、どんな方法だろうと食らいついて、絶対に強くなってやる!!

「よろしく、お願いします、ディノさん!」 
 

 
後書き
今回もステータス公開はしません。

さて、ここである意味一区切りなんですが・・・・。
自分は話の区切りということで1回間を空けてから話を再開させて、その時にはもう修行の期間は終わってるという形にしようかと考えています。
ですが、自分的には何話か修行の話を書いてその後間なしでレギュラーメンバーの再開の話を書くのもありだと思っています。
そこで、どちらがいいかを読者の皆様に意見をいただきたいと思っています。
いわばアンケートです、どちらがいいかを明記して感想なり作者宛のメッセージなりに送ってください。
再開するのは、修行してた場所から聖斗が皆を探しに旅に出る所からスタートします。
では、よろしくお願いします。

因みに、悲しいことに誰も何も意見を下さらなかった場合、1話修行の話を入れて2週間程休んで再開の話を書こうと思っています。 
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