The Elements
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プロローグ
前書き
初投稿です。稚拙な点が多々ありますが、ご指導ください。
プロローグ
——どうせ皆いつか死んでしまうなら、初めから生まれなければよかった。
そんな風に考えたことがある。確か、酒に溺れた父と別れ、女手一つで俺を育ててくれた母が、それ故の過労で亡くなった時だ。
当時の俺は人見知りが激しく、引取先の親戚の叔父の家でも上手くやれてなかったのも原因の一つだったのだろう。毛布に包まりながら涙を流すのが日課だった頃の話だが、この世の全てを恨み、憎み、妬み、あらゆる存在に対して殺意を持っていたあの頃からだ。
俺の身体に異変が起きたのは。
——身長が一晩で30cmも伸びている。視力は5.0。聴き取れる音域すら変化している。これは生物としてありえない結果です。
朝起きたら、視界が高くなっていた。目が良くなっていた。今まで聴こえなかった音が聴こえていた。
そして、それらを完璧にコントロールできた。
そんなあまりに異質な自分は当然周囲から排斥を受けた。人間不信になり、部屋に閉じこもった。
——あの子は気持ちが悪いですよ。一体何を考えているんです?早く追い出せばいいじゃありませんか。
——いいや。あの子はまだ純粋で、繊細だ。私達が導かねば、捩れてしまう。
——あなたの決断がそれならば、私はそれに従います。ですが、必ず後悔しますよ。
それなりに広かった家で為される全ての会話を聞きとれた。
『おかしく』なって暫くした時に聴こえてきた会話に、最初は怒りと悲しみで、次第に嬉しさと申し訳なさで涙を流した。
俺がこうして今も生きていられるのは、偏に偉大な人格者である叔父のお陰で、俺が正常な人格を保ってられたのは、叔父の意思を汲み取り、俺に愛情を注ぐ『演技』をしてくれた叔母のお陰だ。
——いいか、健斗。決して媚びるな。俯くな。誇り高く生きるんだ。お前にはそれだけの力がある。強く生きるんだ。それがお前に相応しい道だ。それができるようになるまで、私はお前を守ろう。
——あなたのことは気持ち悪くて仕方ないけれど、あの人が言うなら仕方ない。今から私のことを母親と思いなさい。あなたが一人で立つことができるまで、私はあなたを愛しましょう。
その二人の言葉がどれ程俺を救い、また慰めてくれたのかは到底測れることではない。
だが。
——火事です!危険ですから近寄らないで!
家の前の人集り。それを抑える消防士。
それを押し退け、家に入って見えたもの。
『家族』で一緒に食事を摂った部屋。
そこでうつ伏せになる、目から光を失った叔父と叔母。その胸の中心の服には小さい穴と、赤いシミ。
二人がいたから、最底辺の人生を送らずに済んだ。同時にこう想う。
『初めから最底辺にいれば、こんな気分は味合わなくて済んだのに』
俺はまた、一人になった。
「ああ、生まれてこなければ良かった」
「そんなこと言うなよ。世界はもっと楽しいぜ?
もっと視野を広く持てよ」
我が同類。突然現れた彼はそういった。
日常が軋みをあげた。
後書き
お疲れ様でした。できればアドバイスなどお願いします!
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