魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第59話 トリニティモード
前書き
こんにちはblueoceanです。
今回はオリ設定のオンパレード。
なのでちょっと時間がかかってしまいました………本当は10月中に投稿する予定だったのですが。
(決してパワプロの栄冠ナインのせいじゃないですからね!!)
ゆりかごの外の戦闘は時間が経つごとにはやて達の勢いが弱まっていく。
「くぅ!?」
「テスタロッサ!?」
背中に魔力弾を受けたフェイトを庇うように立ち、シュランゲバイゼンでガジェットを斬り刻むシグナム。
「大丈夫、まだ動ける!!」
背中に魔力弾を受けても毅然とした態度でフェイトは再び目の前の敵に向かう。
「流石だ……!!」
と感心しながらも内心では冷や冷やしていた。今の状態では1人戦線を離脱すれば一気に崩れてしまう。
ティーダとトーレ、地上ではナンバーズの妹達は大きな助っ人となったが、如何せん未だに戦力を含め不利な状態のまま徐々に追い詰められていった。
「はぁはぁ………!!」
その最もな人物が2匹の竜を使役するキャロだ。その負担は普段の2倍以上で、やはりヴォルテールの召喚が大きく負担となっていた。
「くっ、フリード!!」
休む間も無く続く攻撃に慌ててフリードに命令を下す。
ヴォルテールの攻撃で一度一掃出来るものの、再び蟻の様に湧いてくる。
近くにいたフェイト、シグナムとも随分とも離されてしまった。
「ヴォルテール!!」
ヴォルテールの咆哮でキャロを囲もうとした敵を一掃し、空いた囲いから逃げ出す。
「はぁはぁ………」
(ヴォルテールの攻撃をブラックサレナ達が避けはじめてきた………見切られてきてるんだ!!)
2体を同時に召喚出来る様になったキャロにとって唯一の弱点となるのがヴィルテールの操作だ。2体同時ではヴォルテールに対し細かな指示が出来ないのだ。だからこそどうしても一撃の威力が大きいギオ・エルガを定期的に行い、後は自分を攻撃する敵を迎撃させる位しか出来ない。
「!?フリード!!」
背中を狙われた様な感覚を受け、フリードに回避をさせる。その直後、その場所にグラビティブラストが通過した。
「右!!」
キャロの指示で右から向かってきたブラックサレナを尻尾で薙ぎ払う。
「あぐっ!?」
しかしその直後反対側からキャロに砲撃が当たる。
「グアッ!?」
「大丈夫!!戦闘に集中して!!」
背中の熱い痛みを堪えながらフリードに叫ぶ。キャロもちゃんと理解していた。自分が倒れてしまう意味を。その時点で均衡していた戦況が一気に崩れてしまうこと。そして………
「お兄ちゃんやお姉ちゃん達の帰る道は私が護る………!!!」
その想いがキャロを支えていた。
しかし先ほどのヴィルテールが空けた道は罠であり、そこに誘い込まれたキャロは袋のネズミだった。
しっかりとキャロを囲んでおり、直ぐに袋叩きに出来る状況だった。
「だからって諦めるわけにはいかないの………!!」
それでもキャロは折れない。
しかし現状を打開する手段を持っていなかった。
「………!!」
「えっ!?」
だからこそフリードはキャロの指示もなしに行動した。
相手の攻撃に合わせ、背中に乗せるキャロを下に落とした。
「フリード!?」
「キュオオオオオオオオオイ!!」
大きな雄叫びを上げ、翼を体全体に覆い隠す様に丸くなったフリードはそのまま敵の的になった。
「フリード!!」
自分を庇ったのだと察したキャロは攻撃を全て受け止めたフリードを見た。
「フリード………!!」
あちこちに傷を付けながらも竜として毅然とした姿で立つ。そしてその顔が笑みをこぼした様にキャロは見えた。
そんなフリードにとどめと言わんばかりに魔力刃を向け突貫するブラックサレナ。
「フリードを戻さないと!?」
しかし落下しながらの急降下している中、いくらジェイルが作った特注のボールでもフリードを中に戻すことは出来ない。
「逃げて!!!」
自分の事も後回しに声をかける。しかしフリードは決してその場を動かない。
「嫌だよフリード!!あなたも私達の家族なんだよ!!!」
その言葉を聞いて、一瞬こちらを見たフリード。その顔は満足そうだった。
「いやあああああああああ!!!」
キャロが叫ぶと同時にキャロが何かに掴まれた。
「えっ!?」
「グオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
それと同時に巨大な咆哮が戦場に伝わる。これは攻撃とは別の只の咆哮だ。
しかしそれは皆を注目させるほど響き渡った。
「ヴォルテール!?」
キャロを掴んだのはヴォルテールだった。大きな翼を広げ、その姿はまさしく王と呼べる姿であった。
「グガアアアアアアアアアアアアアア!!!」
再び大地が揺れるほどの咆哮が響く。
『我ヲ使役シ者ヨ、我二命ゼヨ。白銀ノ飛龍ノ想イ二答エヨウゾ!!』
「ヴォルテール!?」
初めて聞くヴォルテールの言葉。実際に喋っている訳では無く、念話の様に聞こえてくる。ヴォルテールを使役出来る様になったとはいえ、それはフリードとの関係と比べればくらべものにならないほどのレベルの低さ。ヴォルテールはいくらキャロが声を掛けても自分の事を見せる事は無かった。
「………ありがとう。ヴォルテール、フリードを助けて!!」
『承知シタ!!』
そう言うとヴォルテールは二本足で立ちあがり、大きな翼を広げ、フリードの元へと向かう。
『落チヨ!!』
そしてキャロを持っていない右手でブラックサレナを斬り裂いた。
竜の鉤爪はブラックサレナの固い装甲を難なく斬り裂き、中のアンドロイドごと斬り裂いた。
「キュイ!?」
「フリード!!戻って!!!」
敵がヴォルテールに集中した所を見逃さずキャロはフリードをボールへと戻す。
「ありがとう………」
大事にボールを握り締めながらキャロが呟く。
『次ハドウスル?』
キャロに問いかけるヴォルテール。それでも戦闘は継続し、連続で放つ火球、ブラックサレナの装甲を斬り裂く鉤爪で相手を迎撃していた。
「お願い、皆を助けて!!」
『承知!!』
真竜ヴォルテールの返事と共に戦場に再び突風が広がる。
「皆、ちゃんと皆が帰る道は私が残すから!!」
力強い目で突入組が入っていった入り口を見ながらキャロはそう呟いたのだった……
「敵の数が勢い良く減って来た!?キャロなの!?」
「ティアナ、皆集まって来たぞ!!」
ノーヴェの報告を聞いて再び戦場を確認する。
「敵は………およそ300以上ね!!よし、仕掛けを使います!!皆準備をルーテシアもタイミングはこっちでするから!!」
『分かりました!!』
念話と共に指示を出すティアナ。
「ノーヴェさん、私達も!!」
「ああ!!」
ティアナの仕掛けを置いた場所は周りより高い建物に囲まれた筒抜けがある場所だった。そこは数百という数位なら問題なく入り切れる広さがあり、確認した瞬間からティアナはそこを利用しようと考えた。
「さて、そろそろ………」
建物から少し離れた場所でサーチャーの映像を見ながら呟く。それぞれバラバラに戦っていた部隊のメンバーが敵を引き連れて来た。
「エリオ、スバル、その場で敵と対して分断させないで!!ギンガさんとウェンディ、ボーガンさんは逃げようとする敵を逃がさないようにして!!」
「私もスバルの援護に!!」
「ノーヴェもギンガさん達の方へ!!」
「だけどそれじゃああの2人が!!」
「スバルとエリオなら耐えられる!!直ぐにリーガル達も来るわ!!」
「っ!分かった!!」
そう返事をし離れようとする敵へと駆けていく。
「まだなの………!!」
実際数百と越えそうな敵の数をたった6人で抑えようとするなんてことは不可能である。ティアナも当然分かっている。
それでも後数十秒ほど耐えてくれれば良かった。
「駄目!!逃げられる!!」
ギンガの焦った声にティアナも慌てて砲撃を放とうとした時、逃げようとした敵が大きく爆発した。
「何!?」
「やれやれ、間一髪だった………」
そう言って深く息を吐く姿。
髪が乱れ、頬に汗が流れる。
「フェリア姉!!」
ノーヴェの声にフェリアが笑顔で答えた。
「遅れた分は働かせてもらう!!」
そう言うと大量のナイフを次々に展開し、連続で投擲する。
ナイフはそれぞれ意思を持つかのように敵に向かっていく。
「ランブルデトネイター、オーバーデトネイション!!」
大量に投げたナイフが一斉に爆発し、この場を離れようとした敵をとどまらせた。
「遅れてすいません!!」
「連れて来ました!!」
そんな中、リーガル組が遅れて敵を引き連れて来た。
「よし!!皆下がって!!シルエット解除!!」
ティアナの声と共に、建物に沿って円を描くように大量のスフィアが展開された。
「まさかこれほどの量とは………!!」
「これほどの魔力をどこから!?」
「ずっと前からの準備のたまものよ!!後は手筈通りやるわ!!みんな準備して!!」
そう言ってティアナはスフィアを操作し始める。
「チェインバインド!!」
スフィアを使ってそこから魔力のチェーンが次々とブラックサレナとガジェットを捕縛していく。それは数千にも及ぶ敵の数が居ても中心に向かってまとめていく。
「ティアナ凄いよ!!」
「スバルいいからさっさと攻撃準備!!」
「は、はい!!」
スバルだけでなく、その場にいる全員が砲撃準備を始めた。
「バインドが解かれる前に攻撃を!!カウント、3、2、1……ゴー!!」
ティアナの指示の元、皆の一斉攻撃が始まる。
「サンダーレイジ!!」
エリオは雷を落とし、
「ランブルデトネイター・オーバーデトラクション!」
フェリアが再びナイフを投げ爆発させる。
「「はああああ!!」」
ウェンディとノーヴェはそれぞれエネルギー弾を浴びせる。
「合図よ!!」
「ヘヴィバレル、フルバースト!!」
クアットロの指示の元、高威力の砲撃を発射した。
「リーガルちゃんと狙いなさい!!」
「俺、射撃苦手だけどあんなに固まってれば!!」
リーガルとリーネも流れに乗る。
「フィーネ、撃ち続けろ!!」
「は、はいぃ………!!」
何とも力強さを感じさせない声でボーガンの指示に返事をするフィーネ。
遠距離から連続で狙撃を続ける。
「スバル、合わせて!!」
「うん、ギン姉!!」
そして最後にナカジマ姉妹が並ぶ。互いに拳を引きタイミングを合わせる。
「ダブルディバインバスター!!」
息のあったタイミングで互いの渾身の砲撃が敵を襲う。
地上部隊の一斉攻撃。いくら防御が高いブラックサレナと言えども一斉攻撃を集中すれば耐え切れる筈が無かった。
しかし敵が1人であれば良かった。
「ティア、敵が逃げるよ!!」
スバルの言う通り、バインドで捕まっていた敵がバインドから抜け出そうとしていた。
しかしティアナはそれを見てニヤリと笑った。ティアナの本当の狙いはこれでは無かった。
「逃げられると思わないで!!これで………最後!!ファントムブレイザー!!」
最後にティアナ自身が放てる最高の威力を誇る砲撃が敵に直撃した。
「終わりよ、チェーンバインド・エクスプロージョン!!」
攻撃を受け、膨張していたバインドの色が変わり、最後に大きな爆音と共に敵を巻き込みながら爆発した。
「ぐううぅぅ……!!!」
その余波は遠距離砲撃していたティアナ達も巻き込み、踏ん張らないと爆風に吹き飛ばされてしまうのではないかと思わせるほど強かった。
「凄い………」
リーネが呟くように収まるとその場にいた敵は全て一掃され、その空間はまるで住人が消えた空っぽの都市の様に静かだった。
「まさかあれ程の威力になるとは………」
「皆の集中攻撃の威力が凄かったのよ」
と仕掛けた本人がボウカーの呟きに苦笑いしながら答えた。
「あの魔法はチェーンバインドを少し弄って、付加したスフィアを予め準備しておいて、魔力をバインドの限界を超える様に与え、最後に暴発させただけ」
「簡単に言ってますけど、こんな量のスフィアにバインドって………ティアナさん本当は高魔力所持者?」
「違うわよ。戦闘の役に立つと思って夏から毎日少しづつ準備してただけ。まさか今日ストック分全部使うとは思って無かったわ。………また1から作り置きしなくちゃ」
と気軽に言うティアナに機動七課のメンバーは驚き何も言えなかった。
「取り敢えず一時的に地上の部隊は一掃出来たわ。どちらにしても更に増援は来るでしょうけど、空に戦力を回す余裕は出来たわね。………ボウカーさん」
「分かった、俺達機動七課は空の援護に向かう」
「後ルーもいざという時は白天王を。エローシュには止められてるみたいだけど………」
「エローシュが心配性なんです。私は何時だっていけるのに………」
「まあまあ………」
ブツブツと文句を呟くルーテシアをエリオがなだめている中、ティアナは空を見上げた。
(こっちは何とか成功したわ。後はアンタ次第よ………)
「流石ティアナさん、キッチリ仕事こなしてくれる………!!」
『じゃあ………!!』
「地上部隊はこのままリミットまで安定して戦える。後は俺と大悟さんが耐えて、尚且つ突入組が上手くやってくれれば俺たちの勝ちだ」
『………全く有利になった気がしないな』
「それでも良い方向に風向きが変わったんだよ」
エクスの呟きにエローシュは突っ込みながら敵の攻撃を躱した。
「!?エローシュ君!!」
「ちっ!?プロテクション!!トーレさん!!」
「任せろ!!」
直ぐに追撃に移った敵の攻撃はティーダがエローシュの前に張ったプロテクションで守られた。
そしてトーレが近くにいる敵を片っ端から片付けていく。
(ホンマ助かるわぁ………エローシュの守りを気にしなくて済むお蔭で私も攻撃に回れる。こういう敵ばかりの戦場こそ、広域殲滅魔法の活躍の場やろな!!)
そう思いながらミストルティンの氷の刃がゆりかご付近にいた敵を広範囲に殲滅する。
普段の様によく狙わずとも敵の方が圧倒的に多い為準備が出来次第固まっていそうな場所に発射していた。
「はやて!!」
「主はやらせん!!」
そしてそれを守るのがフェイトとシグナムだった。皆、固まりつつそれぞれの役割に分かれていった。
(これなら何とか耐えきれそうや………さっきの爆発もティアナの策が成功しみたいやし後はやっぱり突入組次第やな………みんな、頼むで………)
はやては天に願う様に祈りつつ、再び戦場に集中するのだった………
「くぅ………!!」
「ほら、さっきの威勢はどうしたの!?パワーアップしたんでしょ!?」
と笑いながらライに襲いかかるホムラ。刀と鞘を使った巧みな連撃と、神速こそまだ使わないものの、それを使わずとも速いスピードにライも押し返す事が出来なかった。
「くそっ、何でこんなにやり辛いの………!!」
「あらら?パワーアップは失敗だったのかしら?」
ライのイライラに不思議そうな顔で答えるホムラ。それでも攻撃の手は休めず、むしろ増えている。
トリニティモードを発動した3人だったが、一気に形勢が逆転する様な事は無かった。
「あれ?………あれ?タイミングが………」
先ほどまで無意識に連携していた星や夜美もライの援護を出来ずにいた。
「何なのだ、この感覚は………?こんな感覚我は知らんぞ………」
「何で思い浮かんだ動きの通りに皆動くのでしょう………これは一体………」
自分の体に起こっている違和感にそれぞれ混乱していたのだ。
「このぉ!!」
「どこを攻撃しているの?」
やけくそ気味に横に鎌を振るうライだが、その攻撃は攻撃を止めただけで避けられてしまった。
「だけど、まだ!!」
そのまま遠心力を使い、魔力の斬撃を発射。
(えっ………?)
その時、不思議な感覚がライを襲った。
(嘘、動きがスローモーションに見える………)
世界がゆっくりと進む。星や夜美の動き、振るった鎌から発射される魔力の斬撃。
しかしそんな世界の中、異質の存在があった。
(レイだけ普通に動いている………?)
皆がスローモーションで動く中、ホムラだけが普通に動いていた。
(私に襲い掛かってくる?………だけどそれなら………)
襲い掛かってくる事が分かっていた為、防御に移る。
「えっ!?」
「なっ!?」
完全に捉えた筈だった。だが、自分が攻撃しようとした箇所にライは防御に移っており、しっかりと刀をバルフィニカスで受け止めた。
「はぁ!!」
驚いて固まっているホムラにライは回し蹴りを決め、蹴り飛ばす。
「もしかして僕………」
「神速に付いて来た………!?まさかあなたも神速を使える様に………!?ちっ!!!」
ライの行動を分析しようとした時に、星の誘導弾がホムラに襲い掛かった。
「不確定要素が多い彼女よりも先ずはスピードの遅い2人を叩く!!」
そう決めた瞬間、神速を発動。再び1人別次元のスピードで星に迫る。
「なっ!?」
しかしそこで再び驚かされる。自分の行こうとした場所に砲撃に誘導弾、更にはバインドまで設置していたのだ。
「何よこれ!?まるで私がここを通る事を予測して………もしかして予測しているの!?」
そう感じたホムラは星から離れる事にし、回避を優先する。神速状態でも気を抜けば攻撃を喰らってしまうほど、巧妙に攻撃を行っていた。
「あのライって子に集中してた影響で準備の時間を与えてしまったって事ね………!!」
神速の持続時間が終わると、そこから更に砲撃は激しくなった。
「ディザスターアクセル、シュート!!」
ディザスターヒートのスピードを更に高速にした砲撃はホムラも避けきれず、刀で防いでしのぐしかかなった。
「くそっ………!!」
舌打ちをしつつ攻撃を耐える。
「そうか、この違和感を上手く利用すればこういう風に………!!」
「調子に乗るな!!!」
砲撃を受け流した瞬間、炎を纏わせた刀を上から星に向かって振り下ろす。
「翔凰烈火!!」
炎の鳥が星に向かって襲い掛かる。
「させん!!」
夜美の声と共に星の前に紫の不気味な円状の穴が現れた。
そしてその炎の鳥を飲み込む。
「嘘っ!?」
再び驚き、何処に行ったのか探していると、その穴は消え、ホムラの後ろに再び現れた。
「えっ!?」
ふと後ろから違和感を感じ、振り向くと先ほど、翔凰烈火を飲み込んだ穴がそこにあり、そこから星に向かって放った筈の翔凰烈火が現れた。
「嘘でしょ!?」
いきなりの事で驚きつつも攻撃を鞘で消し去る。
「まだまだこんな事も出来るぞ!!」
そう言った後、今度は先ほどよりも小さな穴がホムラを囲むように複数出現する。
「星!!」
「パイロシューター、シュート!!」
星の攻撃は星の目の前にあった、穴へと発射された。
「何を………まさか!!」
ある事に気が付き、逃げようとするホムラだが、既に逃げ道を防がれてしまったため、遠くに離れる事が出来ない。
そして次の瞬間、星の放ったパイロシューターが小さな穴から一斉に現れホムラを襲う。
「何なのよもう!!」
叫びつつ、再び神速を発動。スローモーションになったパイロシューターを当たらない様に避ける。
「ぐっ!!」
何発か、完全に避けられず致命傷にはほど遠いもののダメージを受けた。
「星!!」
「ええ、これがトリニティモードになった恩恵ってところですかね」
「僕はまだ違和感があるよ………」
「まさか3人にレアスキルが付いたの!?そんなバカな!!」
ライが合流し3人並んだ星達を見て叫ぶホムラ。
「アロンダイト!!」
ホムラに向かって一直線に発射された砲撃は、途中出現した穴の中に吸い込まれていった。
「また!?………けどそういう攻撃だって分かっていれば対応は容易い!!」
「ブラストファイヤー!!」
「えっ!?」
ホムラが動きながら周辺を予測している中、ホムラの移動するであろう2歩程先の場所に砲撃を放った。
「動きを読まれた!?ぐうっ!!」
星のブラストファイヤーに咄嗟に反応出来たものの、夜美のアロンダイトには反応出来ず、視界の外から攻撃を受けてしまった。
「よし、上手く攻撃が通った!!」
「夜美!!やりすぎるとレイが!!」
「分かっている、威力もちゃんと押さえている。ライも上手く足止めしてくれ。………そろそろ仕掛けるぞ」
「分かった、任せて!!」
「星も良いな」
「はい、タイミングを見計らって仕掛けます。後はアギト………あなた次第です」
もぞもぞと星の懐で動くアギト。それを了承と受け取った星と夜美は先に動いた。
「この小娘が!!!!」
零治自身も滅多に見せない形相で叫んだホムラはそのまま神速を使い、3人に攻め寄る。
「もうあなたのスピードに惑わされたりしない!!レイの顔でそんな顔しないでよ!!!」
ライはバルフィニカスを二刀に変え、ホムラに向かって攻め寄る。
「もう許さない!!一気に決める、フルドライブ!!!」
零治の身体から一気に魔力が高まる。
「はああああああああああああ!!」
身体能力が更に向上したホムラはそのまま刀を鞘に納め、ライに迫る。
(あの技は斬空刃無塵衝!)
そのまま拳を突いてくるホムラを見て、ライは直感した。
(あの攻撃に移らせないためにも!!)
向かって来たホムラに向かってライも更に前へと攻め込んだ。
「なっ!?」
勢いよくライに迫っていたホムラは正に特攻と言えるような勢いで突っ込んでいた。
その勢いにおされ、下がった場合ホムラの連撃がライを捉えていた所だ。
しかしライはこの技を知っている。
「この技は相手よりもスピードが優っている時や、相手が怯んでいる時じゃないと続かない。レイなら絶対にこの技で来ない!!そこが貴女の敗因だよ!!」
そう言いながら拳を避けたライは、そのまま肘鉄をホムラの腹に打ち付け、2歩下がる。
「行くよ!!」
そのままライの連撃が始まった。
「はあああああああああ!!!」
右左双剣からなる袈裟斬り、横薙ぎ、蹴り、拳と攻撃の手を休めない怒涛の連続攻撃にホムラは全く守れずにただ受けるがままとなっていた。
「天覇迅雷双破斬!!」
最後に雷を帯び、光り輝く二刀で同時に斬り上げ、最後にバツの字に斬り裂いた。
「夜美、星今だよ!!」
「バカ者!!ライこそやり過ぎだ!!!」
「夜美それは後!!お願いします!!」
「分かっている!!ダークリングバインド!!」
夜美はすかさず小さなリング上のバインドをホムラの両腕と両足に付け、伸ばした状態で固定した。
「星!!」
「はい!!」
夜美がバインドで固定したのを確認した後、すかさず星がホムラに向かって駆け出した。
「舐めるなああああ!!!」
ライの攻撃を受け、ボロボロの状態ながらホムラはその場から消えた。
「えっ!?神速!?」
「いや、違う!!これはレイの転移!!星!!!」
星の後ろ、先程まで居た場所にホムラは居た。
「偶然とはいえ、私はついている!!先ずは1人!!」
勝ち誇った笑みを浮かべつつ、星に刀を向け、突こうとするホムラ。
「くっ!!」
「星!!」
慌てて夜美とライが止めようと動くがとても間に合わない。
「大丈夫です、もう結果は見えてます」
「何を……えっ?」
「あなたの敗因は敵は私達だけだと思った事です。有栖家は私達だけじゃないんですよ?」
その存在に気がついたのは触れられた感触だった。
「へへっ!!」
そこには片腕でラグナルを抱えたアギトが居た。
「!?しまっ……!!」
「ユニゾンイン!!」
光が周りを包む。
『皆さん!!』
「星、ライ!!」
「はい!!」
「うん!!」
ラグナルに呼ばれ3人は光の中へと入っていった………
『零治さんの救う方法の話なんだけど、一応俺が考えた方法で二通りかな。どちらも方法は一緒なんだけどやり方が違います。一つは俺が皆さんと零治さんを繋げ、精神の奥底に居るであろう零治さんを無理矢理引きずり出す。もう一つはアギトがユニゾンして繋がりやすくした状態で精神へと入っていく』
『しかし我々にそんな事が出来るのか?』
『ディアーチェ達から聞いていたんですが、星さん達は元々マテリアルとして彼女達と同じデータの存在だった。ディアーチェ達もユーリを助け出すのに精神世界へと潜りこんでいた。同じく星さん達も可能な筈です。でもリスクもあります。俺達を通じてなら俺達が何とかフォローしますけど、アギトのユニゾンはどうなるか未知数です。その上でチャレンジになるので何が起こるか分かりません。下手をすれば零治さんの様に眠っているのではなく、そのまま壊れ死んでしまう可能性も………』
「…………何とか侵入は出来たみたいですね」
「しかしここが本当に精神の中なのか………?」
星達3人は気が付くと見知らぬ荒野に居た。
周りには鎧を着た騎士の様な人間が電源の切れたロボットの様に全く動かず寝ていた。
「何なのここ………?」
「分かりません、一刻も早くレイを起こさなくてはいけないのに………」
そう呟きながら辺りを見回すと遠くの方で人影が見えた。
「行ってみましょう」
「ああ」
「分かった」
3人は人影の方へと走り出した………
「えっと………誰だろ?」
「1人は金髪の女性、それに対しているのは赤い髪の女性だな………」
3人は人影を目視出来る距離まで詰め寄ると、近場の少し大きな岩に身を隠し、様子を伺っていた。
「何か話しているね」
「取り敢えず聞いてみましょう」
3人は聞き耳を立て、2人の話を聞く事にした………
「何よ………戦争に勝ったのに何その顔?見てみなさい!この戦場はあなたの力でやったの!!多くの敵が眠りに付いた!!!恐らく、長くにわたる戦争もこれで終戦!!!あなたは後世まで語り継がれるでしょうね!!聖王オリヴィエの武勇伝として」
「やめて!!!!」
頭を抱えながらオリヴィエと呼ばれた女性は叫ぶ。
「こんな事になるなんて知らなかった………私はただみんなの為にと………」
「そう、みんなの為に!!これで聖王家はこれから先もずっと繁栄を続けていくでしょう!!!だって周りの国全部を結果的に潰したのだからね。エンジェルソング………こんな素晴らしい兵器があるなんて知らなかったわ」
「素晴らしい!?ゆりかごに乗った人間と聖王器を持った人間以外全員退行しているのよ!!私達の国民達も全て巻き込んで………」
「犠牲は戦争ではつきものですよ。それに死んでいる訳じゃないですからもしかしたら前みたいに復帰できるかもしれませんよ?」
「本気で思ってますか?」
「いいえ」
全く感情の無い顔でそう淡々と答えるオリヴィエ。
「私が愚かでした………ベルガントの首を見て、訳が分からなくなっていたのでしょう。彼にいつも言われていました。『上に立つものとして冷静に物事を判断できる目を養え。周りに流されず自分の考えで判断しろ』と。これじゃあベルガントに会わす顔が無いですね………」
そう言って赤い髪の女性の手を取るオリヴィエ。
「クレア、私は私のした過ちを償う事にします。何人社会復帰出来る様になるか分かりませんが、それでも皆を導いて、2度とこのような戦争の無い世界を作ろうと思います。だからクレア、あなたにも副団長として、そして聖騎士の1人として私の力になってくれませんか?」
懇願するようにお願いするオリヴィエ。
「………どうやらこれは大昔の戦争の頃の話だな。オリヴィエとは今の聖王教会を作った聖王の名だ」
「夜美、良く知ってるね!!」
「ライ、レイが話してたではありませんか………あのヴィヴィオって子は聖王のクローンだって」
「ああ………そう言えば………」
と互いに情報を整理していた3人。そんな中、話しているオリヴィエとクレアにも動きがあった。
「………」
「クレア?」
黙って何も話さないクレアを不思議そうに見るオリヴィエ。心なしか体が震えている様にも見えた。
「どうしたの………?」
「駄目限界……………ぷぷ……あはははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」
そう言うと大きな声で笑い始めるクレア。
余りの出来事にオリヴィエおろか、見ていた3人も呆気にとられていた。
「ここまでくると………くく………本当におめでたいわね!!いい?教えてあげる!!!あの時、団長の首を持って来たのはね…………………私なの」
「……………え?」
「それなのにまさか大好きな人を殺した犯人の私にお願いするなんて………!!滑稽過ぎてお腹が痛い………!!!」
「嘘よ………だって私は確かに反対派の人間に捕らわれて………」
「それを動かしていたのは私よ。私の聖王器、ホムラなら造作もない」
「嘘よ………だってあなたも私と一緒に泣いてくれたじゃない………」
「ええ。笑わないで泣けた私を自画自賛してます」
「嘘よ………嘘………」
「流石団長でしたよ。あんなボロボロになりながらもあなたの元まで辿り着いてきた所をズブリ!!だけど簡単には死にませんでしたね………あんなに斬りつけてやっとでしたから」
「嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ!!!!!」
「うるさいわ」
叫ぶオリヴィエに冷たい眼差しを向けながら刀を突き刺すクレア。
「全くピーピー騒ぐんじゃないわよメス豚が、全て貴女のせいよ。私から団長を奪ったからこうなった。貴女が弱く無ければ団長もあんなにボロボロになる事も無かった。貴女が居なければベルガントも死なずに済んだ………」
「あ…………あ………」
茫然と空を見ながら虚ろな目でクレアを見る。
「死んで団長に詫びなさい。そしてそのまま地獄に落ちなさい」
刀を引き抜き、そのまま袈裟斬りで斬り裂いた。
「ベル………ガント………」
ぴくぴくと体が動いた後、完全に動かなくなった。
「終わった………これで邪魔な女はいなくなったわ!!団長、もう直ぐ私も行くから待っててね!!」
「オリヴィエ様………?」
そんな中、丁度その場に現れた男が居た。
「クレア………これはどう言う事だ?」
「うん?何を言ってるのキルレント?」
「何故オリヴィエ様が血だらけで倒れているのかと聞いている!!!」
「そんなの私の団長を奪ったこいつの天罰を行っただけよ?良い顔で死んでいったわ!絶望し、自分を大いに攻めながら死んでいくさまは今までで見た物の中でも一番面白か………」
「もう良い、黙れ逆賊」
話している途中にキルレントの大剣が横なぎにクレアを真っ二つにした。
「ああ………これで私もあなたの元へ行くわ、ベルガント…………」
その顔は目を開いたまま幸せそうな笑みを浮かべていた。
「何なのだこれは………」
キルレントが死体を回収したのを見た後、3人は暗い顔で話していた。
「こんな光景レイと何か関係があるのでしょうか?」
「もしかしてこれが私達に言っていない秘密?」
「いいや、違うよ」
「「「えっ!?」」」
いきなり聞こえた声に立ち上がり周りを確認する3人。
するといきなり下から世界が真っ暗に変わって行った。
「何が起こってるの!?」
「我にも分からん!!」
「これは一体………」
上も下も右も左も暗い。しかし互いの姿はしっかりと見えていた。
「何も無い………」
「さっきのは幻聴か?」
「いいや、幻聴じゃないさ」
またも声が聞こえ、3人が声のした方を見ると、少し先に小さなお店が見えた。
「さっきまで何も無かったはずなのに………」
「あれは………カフェか?」
「何でこんな世界にカフェが?」
不思議に思いながらも、目的地も、自分達が何処に居るのかも分からない以上、3人の進む先は決まっていた。
「………行ってみましょう」
3人は意を決して進むことにした………
「よっ、待っていたぜ」
「初めまして………じゃないかな。さっき振り?………で良いのかな?」
店に入るとそこには1人の男と金髪の女性が居た。
「えっと………銀髪じゃないけどラグナル?それとあなたは何処かで………」
「久しぶりだな。………って言ってもちょっと顔を合わせた程度でハッキリと覚えてないか」
そう苦笑いしながら答える男。その姿に不思議と親近感が湧いていた。
「俺はウォーレン・アレスト。かつての零治の相棒だ。………と言ってもその残滓だけどな」
そう言って頭を掻きながら答えたのであった………
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