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戦国異伝

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第百八十話 天下の宴その十五

「本願寺と手を結び攻めて来るのなら」
「その毛利の水軍にも」
「切り札を出す」
 彼等にも、というのだ。
「その二つで西で勝ちじゃ」
「東でもですか」
「あちらでも」
 弟達はその信長に問うた。
「勝たれますか」
「同じ様にして」
「そうする、見ておれ」
 その戦の時にというのだ。
「どの相手でもな」
「勝ち、ですな」
「天下を定められますか」
「あと伊予もな」
 この国も、というのだ。
「そろそろじゃな」
「手に入れますか」
「あの国も」
「うむ、伊予は多くの国人達に分かれているが」
 織田家が領有していない四国の残る一国もというのだ。
「そろそろな」
「手に入れて、ですか」
「治めますか」
「とりあえずは関東と山陰、山陽はな」
 この三つの地域を、というのだ。
「完全に手中に収める」
「本願寺と四つの家を倒し」
「そのうえで」
「そしてまた、じゃ」
 東西での戦に勝ち、というのだ。
「手に入れた国を治めるとしよう」
「九州と奥州、羽州はどうされますか」
 信広が残る場所のことを問うた。
「それ等は」
「まだじゃ」
「まだ、ですか」
「うむ、焦らずにな」
 今はというのだ。
「そうした場所を治めることじゃ」
「勝ったうえで」
「九州やみちのくはその後でよい」
 西国、そして東国を治めてからというのだ。
「慌てることはない」
「奥羽では伊達が暴れているとか」
「独眼竜じゃな」
「はい、そう聞いておりまする」 
「気になることは事実じゃ」
 信長にしてもだ、伊達政宗のことは耳に入っている。だがそれでもだというのだ。
「しかし山陰、山陽と関東を手に入れればじゃ」
「かなり広うございますな」
「確かに」
「そうじゃ、合わせて九百万石を超える」
 それだけ大きいからだというのだ。
「じっくりと治めねばならぬ」
「だからですな」
「戦に勝てばまた暫くは政じゃ」
 それに専念するというのだ。
「わかったな」
「わかり申した」
「東国には、特にな」
「特にとは」
「武蔵じゃな」
 信広と話しつつこの国の名を挙げた。
「あの国じゃな」
「武蔵で何を」
「うむ、あの辺りに大きな城を築きな」
 そして、というのだ。
「東国を治める要としたい」
「それならばです」
 ここで信行が言ってきた。
「小田原がありますが」
「あの城じゃな」
「はい、東国を治めるには」
 あの城がいいのではというのだ。 
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