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エクシードライフ・オンライン

作者:藤原とも
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始まり1 〜ログイン〜

2032年の3月。もうすぐそこまで春の息吹は来ているのだろうが、冬の置き土産のせいか、まだ肌寒い日が続いていた。
そんな日に、俺こと、伊達結人《だてゆうと》は、あるゲームを始めようとしていた。

その名は、『エクシードライフ・オンライン』略してELOだ。

今日、正式サービスが開始されるVRMMORPGだ。
今までたくさんのVRMMOをプレイし尽くしたが、このゲームは一味違うらしい。噂だと自分だけの固有スキルが存在し、空を飛べるのはもちろん、変身したり、色々とゲーマーの心をくすぐるような要素が満載ということだった。
俺が注目したのは、固有スキルがあるということだ。これだけは今までプレイしてきたVRMMOにはなかった。空を飛ぶことができるとかは、ほかのゲームにもある。
どんな能力を授かるのか、ワクワクしながら正式サービス開始の午後1時を待つ。

pipipipi…

ベットに置いていたスマホが着信を知らせる音が鳴る。

「んっ? 紬《つむぎ》か…、もしもし」
『あ、結人? もうすぐ開始するねー』
「ああ、そうだな。さっきから楽しみでしかたねーよ」

相手は、俺の幼馴染である日下部紬《くさかべつむぎ》だ。親同士が知り合いのため、昔から一緒に遊んだりしている仲だ。
俺とは違い、普段ゲームはあんまりしない奴なのだが、俺がいつもゲームの話をするので興味を持ち始めたらしい。それで今回、一緒にELOをプレイしようということになったのだった。

「そういや集合場所、決めてなかったよな?」
『うん、そうだね。どうしよっか?』
「最初にログインするのは、エイプリルって町なんだ。そこの中央広場でいいだろ」

前に見たELOの情報を思い出しながら、紬に伝える。

『うん、わかった』
「おっ、そろそろだな。じゃ、切るぞ」
『じゃあ。あっちで会おうね』
「おう、じゃな」

電話を切り、机の上に置いているアミュスフィアを頭に被り、ベットに横になる。
スマホの時間を見ると12時59分になっていた。あと一分でサービスが開始する。そして13時ちょうどになり、俺はあちらの世界に行くための言葉を発する。

「リンク・スタート!」



「お、ここは…」

気づけば、不思議な空間にいた。薄暗い空間の中に俺が漂っている。多分、初期設定空間のだろう。待っていれば初期設定の案内のアナウンスが聞こえてくるだろう。

『エクシードライフ・オンライン。略してELOの世界へようこそ!』

ほら、さっそくだ。このまま聞くことにしよう。

『ここでは、まず初期設定を行います。選択肢が現れますので、どれかにタッチして下さい』

そういうと同時に選択肢が出てくる。
ちなみに性別や容姿を選ぶことはVRMMOでは不可能。容姿はランダムに設定される。

「へー、自分の好きな世界を選べんのか」

青の世界、黒の世界、赤の世界、白の世界、と四つの選択肢が出てくる。それぞれに特徴があるみたいだ。
世界ごとの説明を見てみる。青はバランス、黒はパワー、赤はガード、白はスピードみたいだ。

「別になんでもいいか、青にしよ」

青の世界をポチッと押す。すると名前を決めてくださいというメッセージが表示される。俺はなんの迷いもなく、《Yuito》にする。
ユイト、これが俺のこの世界での名前だ。由来は特にない。

『それでは、ユイトさん。これから始まる冒険をお楽しみくださいませ』

アナウンスが聞こえた瞬間、目の前が真っ白になった。



「ん、ここは…?」

気がつくとそこは、町の広場だった。多分、最初の町であるエイプリルだろう。
周りを見てみると、俺と同じくログインした人達がチラホラいるみたいだった。

(とりあえず、紬を探さねーとな)

そう思いながら、歩き始めようとした時

「結人、みっけ!」
「うおっ!?」

いきなり、後ろから衝撃が走る。後ろを振り返るとそこには、身長150ぐらいで、長い黒髪で黒い瞳。いつも見慣れてる人懐っこいそうな顔がそこに居た。

「紬?」
「そだよ?」

俺は驚きを隠せない。以外にもすぐに合流できたことにも驚いているが、一番の理由が紬の容姿、見た目が現実と変わってないことだった。
通常、容姿はランダムに設定される。現実では、やせ細っていてもボディビルダーのような容姿になったりとか、本来の姿とはかけ離れた容姿になるのがほとんどだ。稀に自分と似た姿になる人もいるみたいだが。
しかし紬の場合は、完全に現実の容姿のまま。

(こんなことってあるんだな…)

そんな奇跡みたいな出来事に驚きながらも紬にある疑問を聞いてみる。

「お前、どうやって俺を見つけたんだ? 今の俺、現実とは姿が違うのに」
「え? すぐにわかったよ? 結人も現実と同じ姿だし」
「え、嘘だろ!?」
「嘘じゃないよ、ちゃんと見てみなよ」

紬の言うとおりに、建物のガラスに自分の姿を映す。

「マ、マジかよ…」

身長170前後で少し長めの黒髪で青みがかった瞳。友人にはよくネクラ顏と呼ばれていた顔が見える。見間違いようがない。現実の俺そのものだ。

「ね? 言った通りでしょ?」
「あ、あぁ。そうだな」

驚きながらも、このまま突っ立てるわけにもいかないと思い、紬を連れて武器屋に行くことにした。
ここエイプリルという町の構造は、頭に入っているので迷うことになく進んでいく。

「ねー、結人。どこ行くの?」
「武器屋だ。あと、ここでは《ユイト》な」
「ユイト? へんな名前ー」
「ほっとけ。じゃ、お前はなんて名前にしたんだ?」
「《ツムギ》だよ」
「そのまんまじゃないか」
「駄目だった?」
「そういうわけじゃないけど…。まあ、とにかくここではアバターネームで呼べよ、ツムギ」
「うん、りょーかい。ユイト」

こうしてツムギと話している間に目的の武器屋に着いた。俺は直剣にするつもりだが、ツムギは何を選びつもりなのか気になり、聞いて見ることにした。

「ツムギは何を選ぶんだ?」

早速買った直剣《スモールソード》を持ちながら、ツムギの方を見る。

「うーん、これかな?」

ツムギが手に取ったものは、弓だった。

「弓かぁ、お前、現実じゃ弓道部だもんな」
「うん、だから扱えそうな気がしたの」
「じゃ、決まりだな」

こうしてツムギも武器が決まり、フィールドへ出てみることにした。

 
 

 
後書き
ユイト達の初期ステータス、装備

ユイト
青の世界
装備
片手用直剣『スモールソード』
男性用 ルーキーの服一式
STR、AGI重視のアタッカー

ツムギ
青の世界
装備
弓『コモンアロー』
女性用 ルーキーの服一式
ユイトの教えで、DEXとSTRを中心にステ振り
後方支援型
 
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