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美しき異形達

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第二十四話 麗しき和服その六

「そうでした」
「そうだったんだな」
「あの服は今見ればロマンですが」
「昔はガテンだったのか」
「そうだったのです」
「全然思えないけれどな、あたしも」
 薊は首を傾げさせて腕を組んで言った、いつものポーズだ。
「あの格好ハイカラだろ」
「そうね」
 その通りだとだ、菖蒲も言う。
「大正時代のお嬢様という雰囲気で」
「何でなんだ?」
 また言う薊だった。
「あの格好がガテンなんだよ」
「当時はそうだったのです」
 あくまでこう言う桜だった。
「その時で考え方や価値観も変わりますので」
「ファッションもか」
「そうです」
「そういえば」
 菊がここではっと気付いて言う。
「昔の欧州の服でもね」
「あっ、王子様とかよね」
「貴婦人の服もね」
 菊は向日葵に応えて言った。
「凄いわよね」
「タイツとかね、エリマキトカゲみたいなカラーとか」
「物凄い格好よね」
「そういえばそうね」
 菫も言う。
「ブルマにタイツなんてのもね」
「あの格好で普通にいたのよね」
 裕香は当時の王子というか貴族の若者の格好について彼女も言った。
「昔は」
「あの格好で外歩けとかな」
 どうかとだ、また言う薊だった。
「羞恥プレイだよな」
「それか仮装大会ね」
「貴族の奥さんの服ってな」
 さらに言う薊だった。
「動きにくいしおまけに脱ぎにくいよな」
「そうみたいね」
 裕香も薊に答える。
「それでおトイレもね」
「どうやってしてたんだよ」
「脱げなかったからね」
 ここで言って来たのは智和だった。
「だからね」
「まさかと思うけれどな」
「うん、そのまましていたよ」
 中で、というのだ。
「そうしてたよ」
「うわ、それはないだろ」
 薊は智和の話を聞いてかなり引いた顔で言った。
「ちゃんと脱いでおトイレでするものだろ」
「だから一回着たら脱げないからね」
「そのままだったのかよ」
「そうだったんだ、バロックやロココの頃はね」
「世界史のか」
「そう、ルイ十四世やマリー=アントワネットの頃だよ」
「ベルサイユの薔薇とか三銃士とかか」
 その頃のフランスはどういった作品の舞台かとだ、薊はややあやふやだがそれでも言った。
「あの頃だよな」
「そう、まさにね」
「その頃の貴婦人ってそうだったんだな」
「しかもね、お風呂もね」
「ああ、それはあたしも知ってるよ」
 薊は智和にすぐに返した。
「滅多に入らなくて」
「それで香水も発達したんだ」
「匂い消しか」
「まさにそれでね」
「ううん、何かなあ」
 そこまで聞いてだ、薊が言うことはというと。 
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