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仮面ライダー龍騎【13 people of another】

作者:Миса
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Part One.
First chapter.
  第10話




あの日から、ライアはインペラーと何度も戦った。
お互いがお互いに気に食わないと思っているからこそ、この長い戦いは終わりを見せなった。
どちらも、己の信念のために戦っている……。

「いい加減、諦めたら!?」
「嫌だ!君がライダー同士の戦いをやめるまで、俺はやめない!」

……芳樹の性格が移ったかもしれない。
ライアはボンヤリとそんなことを考えていた。














───…



「芳樹、明日俺は昼間は家にいないからな」
「え、なんで?」
「コンテスト、覚えてないの?」
「あ、明日だったのか!?」

大学で、芳樹と亮平はいつもの通り一緒にいた。
最近は亮平がインペラーと戦うために単独行動を行うことが多くなってしまい、二人で居る時間は少なくなってしまったが、相も変わらずこの二人は名コンビとして知られていた。

「それじゃぁ、俺はそろそろ行くよ」
「おう!モンスターは俺に任せとけよな!」
「うん、頼んだ」

亮平は立ち去る芳樹が見えなくなるまでその背中を見送った。

「さてと……あと少し、頑張りますか……」
「塚原くん!」
「あ、宮藤……どうしたんだ?」
「塚原くんが見えたから、走ってきたの!」

亮平が後ろを振り向くとこちらへ向かってくる宮藤がいた。宮藤は嬉しそうに亮平にある物を見せた。

「見てこれ!」
「………これは?」
「ここのレストラン、とっても美味しいの。夜景も綺麗だし……」
「確かに、このチラシを見るとすごくいい景色だな」
「明日、一緒にここで食事しない?」
「え、でも明日は……」
「打ち上げよ、打ち上げ!」

宮藤は亮平に「お願い!」と手を合わせる。
明日は、久しぶりにライダーの皆でご飯を食べる予定なのだ、ナナがご飯を作ってくれるのだが……。

……仕方ない、ナナくんには悪いけど明日は断ろう。

「わかった。明日だよな」
「ありがとう!」



───…



「え?明日亮平さん来れないんですか?」
「ごめんね、ナナくん」
「いえ、お友達のお誘いなんでしょう?なら仕方がないですよ」
「せっかく俺のために準備してくれたのに、本当にごめん」

実は、明日は亮平の誕生日なのだ。それを知ったナナは「誕生会がしたいです」と言い出し、「ナナがメシを作るなら俺も行く」と油島が言い「ならいっそ皆で集まろう」と日ノ岡がまとめ亮平の誕生会が開かれることとなったのだ。

「当日は本人のいない誕生会をしますよ。ケーキと料理は置いておきますから」
「ありがとう、ナナくん。
でも、ナナくんはどうしていきなり誕生会がしたいなんて言い出したんだ?」
「俺にとって誕生日って特別な日だから……だから、誕生日って聞くと…お祝いしなきゃって…えっと……ごめんなさい、うまく言えないです。これ(・・)を亮平さんに言うのはどうかと思いますし……」
「いや、大丈夫だよ」

……そうだよね。ナナくんにも言いたくないことの一つや二つ……。

と、亮平はそう思って深く詮索しないようにしようとしたのだったが。

「あれはもうだいぶん前のことです」
「あれ、言うの!?」



───…



「ナナさん」

それはナナがまだ5歳の頃。
浅倉が死んでまだ数ヶ月しか経っておらず、浅倉が目の前で死んでナナ自身の心の傷がまだ癒ていなかったころ。
ナナは当時、浅倉を射殺した警察機動隊の読川という男に引き取られることとなった。
そこには、彼の妻もいた。彼女はとある浅倉の起こした事件のせいで子供が産めない身体になったそうだ。直接聞いたわけではないが、大人たちの会話を聞いて何と無くそういうことなのだろうと理解した。

「なんですか?」
「あの人と相談して、今日をナナさんの誕生日にすることにしたの……」
「なんで……今日?」
「今日、4月10日は……あなたの大事な人の誕生日だから……」

彼女たちは恨んでいるであろう、浅倉威の誕生日をナナの誕生日にした。一種のナナに対する償いなのかもしれない。それでも、その時まで戸籍が正式になかったナナにとって、誕生日をもらえなことはとても嬉しい事だった。

「誕生日、おめでとう」

そう言った彼女の顔を、ナナは忘れたことがない。
とても、苦しそうな彼女の顔……。

……やっぱり、この人もあの人の事を恨んでいる人なんだ……。

本当の親でもない彼女を、感謝をしたことは何度かあったが、信じることは一度もなかった。



───…



「まぁ、俺の誕生日は俺が世界で一番尊敬している人の誕生日なんですよ」
「それって、ナナくんがいつか言っていたナナくんのヒーローのこと?」
「はい!」

ナナは詳しいことまでは亮平に伝えなかったが、簡単にどれだけ彼が自身の誕生日を大事にしているかを伝えた。

「ナナくんは本当にその人が大好きなんだな」
「ええ、あの人がいなかったら俺は生きてません」
「命の恩人ってことか……もしかして、ライダーになったのも、その人に憧れたから?」
「…………そんなところです」

ナナは亮平から目を逸らした。
確かにナナは浅倉に憧れているし尊敬している。
しかし、ライダーになったのはそれが理由ではない。

「そろそろ、帰らないと夕飯作る時間なくなっちゃうんで……失礼しますね」
「うん、気を付けて」



──────────…



次の日の朝、亮平は芳樹よりも早く起きた。
ファッションコンテストの最終チェックをするために亮平はいつもよりも早い時間に起床したのだ。
いろんな人からの期待を一身に背負った亮平は、そんな人たちのためにコンテスト会場まで向った。

芳樹が起きたころには、もうそこに亮平の姿はなかった。亮平がコンテストで良い成績を取れるように、祈る。芳樹にできることと言ったら、恥ずかしい話しだがこれくらいしかないのだ。


「亮平のやつ、大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ。正式な誕生会はまた今度にしましょう」
「そうだな」
「そういえば、日ノ岡さんは?」
「あいつか?あいつは、図書館に本を返しに行ったぞ」

ナナの用意したお茶をすすりながら芳樹は答える。

「……この前も行ってませんでした?」
「あいつ、昔っから本の虫だからな。勉強もできるし」
「なんか、一生分かり合えなさそう。性格的にもライダー的にも」
「ライダー的って……どういう意味だ?」
「いいえ、なんでもありませんよ」

ナナはかつての仮面ライダー王蛇と仮面ライダーゾルダの二人を思い出した。個人的に仮面ライダーゾルダの北岡秀一には遊んでもらった覚えがあるため(ほとんど浅倉が押し付ける形となっていた)ナナは北岡が嫌いではなかったし、嫌われていた様子もなかった。が、問題は浅倉と北岡は仲が悪かった。発端は浅倉の逆恨みなのだが。
だから、ライダー的には合わないだろうとナナは思ったのだった。

……勉強ができるって……イヤミか。

新事実、ナナは勉強ができなかった。

「お、おいナナ……手が震えまくって、麦茶がこぼれてるぞ」
「あ、すみません。日ノ岡さんが羨ま……日ノ岡さんが勉強できるなんて知らなくて動揺しただけです」
「え、今羨ましいって言いかけ……」
「日ノ岡さんが勉強できるなんて知らなくて動揺しただけです」
「二回言った!」



───…



『ただいまから、第○○回○○大学主催、ファッションコンテストを行います!』

都内にある某大学のファッションコンテストが始まった。実は、亮平はこのコンテストでまだ一度も優勝することができずにいた。

「いよいよか……ドキドキするな」
「絶対に大丈夫だって!」
「塚原は心配症だな!」

亮平と共にこのコンテストに臨む仲間たちは亮平を和ませる。

「でも、珍しいよな」
「何が?」
「塚原が、レディース物の衣装じゃなくて、メンズの衣装を作るなんて」

その言葉に周りは「そういえば」と納得する。

「確か、この衣装にはモデルがいるんだったよね」

宮藤が亮平に尋ねる。

「うん、その子が男の子で……このコンテストが終わったら……その子にこの服をあげるつもりなんだ」
「え、あげちゃうの?」
「何その意外見ないな目は……」
「いや、だって塚原が作った服は、ほとんど捨てるから」
「あれ、もったいなかったよな」
「これだから金持ちは」
「仕方ない、優勝できなかったんだから」
「じゃ、この衣装はいいのか?」
「何言ってるのさ、コレは優勝できる!どんな人にも劣らない出来だ!」

亮平は熱くこの服の良さを語り出した。

「……この衣装には俺の全てを入れたんだ。絶対に優勝できる。これは、俺の第一歩のつもりなんだ」
「塚原……」
「それじゃ、そろそろヘアアレンジとメイクを済ませよう!この服に劣らない良いできにするんだ!」
「腕が鳴るぜ!」

ここにいる人たちは亮平の情熱を知っている。
だからこそ、今回こそはと皆張り切っていたのだ。

キィィィイン…

そこで、亮平はハッと顔を上げる。

「ごめん、皆……ちょっと、トイレに行ってくる!」
「お、おい!塚原!?」
「次、俺たちの番だぞ!?」

亮平は皆の制止を聞かずに走り去った。


トイレの鏡の前にやってきた亮平はカードデッキを取り出す。

「変身!!」



───…



「よぉ……また会ったな」

右手を挙げてライアに挨拶するインペラーにイラっとするがライアはそれをスルーする。

「そっちが呼んだくせによく言うよ」
「え?」
「どうしたの?」
「いや、あんたが呼んだんじゃないのか?」

その言葉にライアは唖然とする。
こいつが呼んだんじゃないとすれば、誰がこのミラーワールドに入ったんだ?

……まさか、王蛇……?

しかし、その考えは消し飛ぶ。

「グァッ!?」

インペラーがいきなり倒れこんだ。
その後ろには白い、トラのようなライダー、仮面ライダータイガが立っていた。

「お前、いったいなんだ!?」
「……神よ、この者を裁く許可を………おお、神よ感謝いたします……」

……この声……女性!?

そう言うとタイガはカードを取り出した。

『Strike Vent』

タイガは【デストクロー 3000AP】を召喚すると、その鋭利なデストクローの爪でインペラーのカードデッキを一突きにした。

「な、に?」

インペラーが手元を見ると粒子状になっており、次第に変身が解けて行ってしまった……。

「っあ、ああああああぁぁああ、あ!?」

インペラーの変身が完全に解け、そこには変身する前の姿、植原数馬の姿が露になった。

「そ、そんな!?」

植原は叫びながらその場を離れて行った……。
そしてタイガは……そのまま、まだ動揺しているライアへ標的を変える。

『Copy Vent』

ライアはタイガのデストクローをコピーし同じ【デストクロー 3000AP】を構える。

「神よ、この者を裁く許可を………神よ、感謝いたします」

そう言ってタイガとライアが合間見えようとした瞬間、凄まじい衝撃が二人の腕に伝わった。
二人がその衝撃を確かめると、そこにはあの脅威が二人のデストクローを弾いていたことが解った。



───…



「塚原の奴、何やってるんだよ!」
「どこのトイレにもいない?」
「もっと他の場所を……!」

バタバタと慌ただしい会場で、宮藤は亮平の帰りを待っていた………。

「塚原くん……塚原くん、優勝したんだよ?どうして帰って来ないの?」

その手には、あのレストランのチラシが……。








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