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戦国異伝

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第百七十九話 集まる者達その十

「欠かさぬぞ」
「弓と剣もですな」
「槍も」
「やはり人はいつも身体を動かしておる方がよい」
 その身体にというのだ。
「だからな」
「兄上は今もですな」
「健康ですな」
「そういうことじゃ、そして身体を動かすとな」
 それでとも言う信長だった。
「飯も美味い」
「ですな、戦の時も飯は美味いです」
「身体を動かしているからこそ」
「そういうことじゃな、ではな」
「はい、我等も」
「ここまで来るのに身体を動かしてきましたし」
「まずは風呂に入れ」
 そして旅の垢を落としてというのだ。
「それから服を整えてな」
「はい、宴にですな」
「我等も」
「出て楽しむがいい」
 こう弟達に言うのだった。
「それではな」
「風呂に入り」
「そうしてからですな」
「それはもう用意しておる」
 その風呂をというのだ。
「ではよいな」
「お言葉に甘えまして」
「そうさせて頂きます」
 弟達は信長の言葉に笑顔で応えた、そうしてだった。
 二人も安土城に入り宴に加わることになった、それは松永も同じだった。
 松永は自身の家臣達と共に安土城に入った、すると家臣達が顔を顰めさせてこんなことを言い出したのだった。
「ううむ、どうもですな」
「息苦しいですな」
「石垣を見ただけで気分が悪くなります」
「特にあの天主とやらは」
 特にその壮麗な天主を見て言うのだった。
「あれは結界の中心ですな」
「中から神仏の気配を尋常でなく感じます」
「耶蘇の神もいますな」
「天使とやらも」
「日の者達ばかりですな」
「そうした者達ばかりいて」
「どうにも」
 こう言うのだった、実に忌々しげに。
 しかしだ、松永は明るい笑顔でこう言うのだった。
「左様か、御主達はか」
「はい、嫌な気分です」
「胸糞が悪うございます」
「神仏の力をこれ以上はないまでに感じ」
「不愉快です」
「どうにも」
「そうなのじゃな、しかしわしはな」
 松永はどうかというのだ、彼自身は。
「特にな」
「殿は何ともありませぬか」
「ご無事ですか」
「胸が悪くなることもなく」
「平気なのですか」
「うむ、確かに以前ならわしもな」
 松永は余裕のある、楽しげですらある笑みを浮かべている。そのうえで己の家臣達に対してこうも言うのだった。
「苦しいところじゃったがな」
「それが、ですか」
「今は」
「何ともないわ」
 そうだというのだ。 
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