凡人? 天才? それとも……。
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第九話【お祭り騒ぎ】
前書き
男女が一つ屋根の下! これは寝るところが問題になるのか!
いい湯だったな、体ポッカポッカだぜ。今日はいい夢を見るといいな。
風呂から上がり、髪の毛を乾かして柔軟もしてバッチリやることをしてテンションが高めですっかり凛が来ていることを忘れながら、リビングのドアを開けると。テレビを見ながらジュースを飲んでいる凛がいた。
「まだ、いたのかよ!」
吃驚して、大声で叫んでしまう。
近所迷惑だなと思って慌てて口を塞ぐ。
「し、仕方ないでしょ。お母さんが泊まってこいって、言うんだから」
時計を見ると時間は十時を回っていた。確かに女の子一人で帰らせるにはちょっと不安でもある時間帯だ。……いや、普通に危ない時間帯だ。
しまった。洗い物なんてさせなくて、そのまま送れば良かった。量多かったもんな。
「ちょっと、遅いけど今から送ろうか? 泊まるのは親父さんが怒るだろ? 送っていくよ」
これも俺の判断ミスが原因だ。帰りたいのなら、送ってでも帰らしてあげるのが普通。
「いいわよ。風呂上がった後だし、体冷えるでしょ? お父さんもノリノリだったし……」
いいのかよ。男女が一つの寝の下で寝泊まりするんですよ。って、言っても凛の親は変っているからな。昔からちょっとズレてたし。
「じゃあ、大地。お風呂借りるわよ」
凛はその場から立って俺と入れ替わるように風呂へ行く。
ちょっと待て! 着替えはどうするんだよ。服は貸せるとして下着は!
「凛! 着替え、着替え。どうするんだよ」
慌てて凛を呼び止める。凛は、なに。と怠そうに答える。
「着替えだよ、着替え。服は貸せるけど……下着は? 予備とかないだろ? 下着を穿かないとかはダメだ――」
「し、下着、下着って、バカじゃない。あるに決まってるでしょ! バカ――っ!」
頬がヒリヒリする。痛い、平手打ちって、あんなにも威力のあるものだったのか。こっちは親切で聞いたのに。それに着替えならお父さんが持ってきてくれたって、その時に一緒に帰るって考えは思いつかなかったのかよ。この変わり者親子が!
こうして理不尽ことはあったがその後はないもなく二人とも就寝についた。幸いなことに俺の家は部屋が有り余っているかつ、いつでも親が泊まれるように布団なども一式そろっていた。寝床問題も勃発せずに済んだ。そして次の朝
はっ! ……って、夢かよ。吃驚したー。
悪夢で目覚めると言う酷い起き方をしたので、何度か深呼吸をして落ち着ける。
寝覚め悪っ。今、何時だろ? うーっ!
背筋を伸ばして、大きな欠伸をする。目を擦ってから立ち上がって、閉まっているカーテンを開ける。
眩しい。……そう言えば今日って何曜日だっけ? もしかして……
急いでスマホの画面を見る。九時五十六分ともうすぐ十時だ。しかも日曜日!
うわー、遅刻する。やばい、学校何時からだ……って、日曜か。なら、もう一眠りしよう。
布団の中に潜り込む。ドアが開き、母さんが部屋に入ってくる。
「大地、起きて。朝ご飯作ったから」
「母さん、まだ眠いから。朝ご飯いらないぜ、後少しだけ……」
「誰が母さんよ、バカ大地。早く起きて顔洗ってきなさい」
あっ! そうだ。昨日、凛が泊まっていたんだ。それに俺は一人暮らしか。……眠い。
「布団に逃げない。そんなに夢に夢中なんですかー? それとも昔の彼女との思い出に浸ってるんですかー?」
違う。と言って布団の中に逃げ込む。
「そう。なら、正直なパソコンさんに聞きましょうか?」
もう、勝手にどうぞ。メール、履歴なり、画像なり、なんなり確認してください。
「と思ったけど、パソコンはまた抜き打ちでしないと意味ないし。ちょっと、朝からにしては刺激的だけど……」
凛がエプロンをとって、近づいてくる。もしかして、と妄想するが現実は違う。凛は片足を天井に上げる。
「……踵落としでいいか」
また踵落としか、これで気を失ってゆっくり寝られ――
「はい、朝食。良かったね、暖かい状態で食べられて」
良くない、なにも良くない。いつも休みは朝食べないから、きつい。
「これも凛さんの踵落としの御陰さまです」
「皮肉をとやかく言われるのは納得できないわね。起きない大地が悪いんだから」
ははは、なんも言い返せねぇよ。
「そう言えば、昨日ね。お風呂入っている時に思ったんだけどね」
唐突に何をいいやがる。吃驚して口の中の物吐くところだったぞ。どうせ、湯船に髪の毛が沢山浮いていたとかだろ悪いな。
「お父さんが来た時に一緒に帰れば良かったなーと。それなら、全然危険じゃないし。車だから早く帰れるし。泊まる必要もなくなるよなーと」
「遅いよ! もっと早く気付よ!」
普通、来た時に気づくだろう。と呆れていると、そんなに居て欲しくなかったの? と捻くれる。
「別にそう言う訳じゃなくて、そりゃ、俺だって凛が居る方が賑やかでいいし嬉しいよ。でも、これとそれはまた別じゃん」
なに言っているんだよ、俺は。凛には他に好きな人がいるはずなのに……。
「そう。それはどうも、ありがとう」
大分、恥ずかしかったので慌てて食器を重ねて手を合わす。
「ごちそうさま。じゃあ、寝るわ」
凛にそう言って自室に立ち去ろうとすると、起きた時にいなかったら、スマホ見といてね。と言って凛は食器を片付ける。
「別に洗わなくていいぜ。起きたら洗うから」
「そう。嫌って言ったらどうする? 諦める?」
もう、勝手にしていいぜ。と言ってリビングを立ち去る。
結局、メールなしで電話も音沙汰なしと。まぁ、別に凛が勝手に帰ろうと知ったことじゃねぇしな。きっと、親父さんから呼び出されたんだって、うん。
「あれ? 外に洗濯物、干したかな?」
よく見るとリビング、さっきよりも片づいてないか? あれぇ?
ピーンポーンっと、チャイムの音がする。
「誰だよ、こんな忙しい時に……別に忙しくはねぇか」
玄関のドアを開けるとそこには加藤君が立っていた。
「やあ、遊びに来たよ」
「どうしたの、加藤君? こんなところに? てか、どうして俺の家を?」
加藤君は手に持ったビニール袋を差し出して、今日は誕生日パーティーするんですよね? と言って笑う。
なんのことだ? と小首を傾げているとポケットのスマホが震える、誰からだ。
「ちょっと、ごめん」
携帯電話の液晶を見るとまた【桜沢快】の文字が表記されている。
「なんだ、快?」
『変態っ! 今日は凛の誕生日だから今すぐ誕生日パーティーの準備しておいて、分かった』
って、陽奈かよ。一応、連絡先とか知っているだろ。自分の携帯使えよ。
『聞いている、変態? 凛の誕生日だから準備しておいて、分かれ』
そっか! 今日は凛の誕生日じゃん。危なっ、忘れるとこだった。
「分かった。で、準備ってなにを?」
プーッ、プーッ、プーッ。……って、切っているし。
「大地君、用事は終わったかい? 一応、陽奈さんに言われて来たんだけど、聞いてなかった?」
待てよ、陽奈に呼ばれて来たってことは、なにを準備したらいいか知っているかも知れない!
「加藤君、陽奈から準備のこと聞いた?」
「ごめんね、大地君。天海さんの誕生日パーティーを急遽開くから大地の家に集まって、って聞いた以外は」
陽奈の奴、まあ、適当に準備でもするか。でも、飾り付けとかないしジュースとお菓子やケーキを買うだけでいいか。って、また快から電話だ。
「なんだよ、快。準備なら確りす――」
『おい、変態』
また陽奈か。今度はなにを言いだけに電話をした。
『適当に準備をしたら、殺す』
「了解です」
携帯電話を切る。
やばいな、加藤君と一緒に準備しても間に合うのか?
「僕で出来ることであれば手伝うよ、大地君」
「勿論、そのつもりだぜ。加藤君、これだけで買えるだけのジュースとお菓子を買ってきてくれる? 後、ケーキも」
自分の財布から四千円を渡そうとすると、僕も半分は出すよ。と、言って二千円だけ受け取って、近所のスーパーへ行くと言って部屋を後にした。
「よし、俺も部屋の掃除をするか!」
始めは、戻ってきてどうなることかと思ったけど……。なんとかやって行けそうだよ、父さん。
玄関からピーンポーンとまたチャイムの音がする。
「もう、加藤君が帰ってきたのか?」
それとも、陽奈が適当に呼んだ客かな? などと考えながら玄関に向かう。扉を開けるとそこには誰も居なかった。
「気のせいかな?」
郵便かなと思い。一応、郵便ポストを確認すると一枚の手紙があった。気になって取ってみると、ゲームへの参加状と書いてあった。なんのゲームかな? と中身を見ようとしたら……
「あっ! 幸谷君。よっ」
「……こんにちは。お招きありがとうございます……です」
一瞬、誰だと思ったら、葭原さんと神凪さんと誰?
そこにいたのは、クラスメイトの葭原さんと神凪さんと同年齢ぐらいの男と中学生ぐらいの男の子だった。
「おい、何度もここ通ってた。しかも、何度もこの家って言った。なあ、光」
「あれれ? そうでしたっけ? 私は分かりませんわ」
「僕は流石に家を間違えたりしないですよ。葭原さん」
「そうだった? 気のせいだよ、栗生、光君」
葭原さんは惚けた様子で誤魔化す。
「……言っていた……と思います」
そうか、みんな俺の家知らないんだな。知っているとしたら桜沢兄妹と凛ぐらいか。
「えー、結局、私が悪者か。このイチャイチャカップル話し合わせたなー」
この栗生って、人が前言っていた彼氏さんか、納得。家は入れるか? 入れるな。
「みんな入りなよ、ちょっと散らかっているけど」
どうせ、陽奈がどうせなら大勢でとか言ってみんなを呼んだのだろう。
「私がお手伝いをしようじゃないか、まあ、使えるか分からなけどー」
「……私も手伝います……出来れば」
「どうする? 彼女は手伝うと言っていますが彼氏はどうします?」
この感じ、葭原さんって、以外と快と話しが合いそうだな。
「手伝うに決まっているだろ! お邪魔するんだから」
葭原さんに振り回されている栗生君が俺を見てなにかに気付いたように
「悪いな、初対面なのに」
「ただい――、お邪魔します!」
光君を先頭に女子が家に入っていく。
「なんか、ごめんな。こんなに大勢で」
「別にいいよ。人数が多い方が盛り上がるし、俺は幸谷大地。よろしく」
「ありがとう。百田栗生だ、あいつは……俺の従兄弟で名は幸谷光だ」
百田栗生、これでまた友達増えたぜ。やった。
「さあ、上がって。凛が来るまでに仕上げようぜ」
後書き
うーん。この先は本当に辛いな……。
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