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閃の軌跡 ー辺境の復讐者ー

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第7話~商人たちの実情~

 
前書き
閃Ⅱを無事にクリアしました。何というか、感情がオーバーライズしました。自分でもちょっと何言ってるのか分かりませんが(苦笑)さて、今回は「商人らの叫びを聞け!」みたいになるよう努力はしました・・・ええ、努力はしました。←大事なことなので二度言っています。 

 
「ふざけんなあっ!ここは俺の店の場所だ!ショバ代だってちゃんと払ってるんだぞ!?」

「それはこちらの台詞だ!許可書だって持っている!君こそ嘘を言うんじゃない!」

喧噪のした大市へと駆けつけると、なにやら二人の商人が激しく言い争っているようだ。
双方の言葉から察するに、店を開く場所がかぶってしまい、場の取り合いをしているのだろう。暫し、事の成り行きを見守っていたケインたちだったが、商人たちが互いの服をつかみ合い始めた。このままでは殴り合いにまで発展しかねない。殴り合いなら街道でやれよと思うケインであったが、看過できる事態ではないのでラウラと一緒に後ろから彼らを抑える。

「事情は分からないけど・・・とりあえず落ち着いてくださいよ!」

「頭を冷やすがよい」

仲裁に入ると、ひとまずは怒りの矛を収めてくれた・・・

「制服・・・どこかの高等学校の生徒か?」

「おいガキども!大人の話に口出すんじゃねえ!」

「へぇ、最近の大人の話って殴り合いなんですか?物騒な世の中になったんですね」

「な、なにぃ・・・?」

・・・と思ったら片方の怒りが収まっていなかったのでつい余計なことを口走ってしまったケイン。リィンが話を繋いで自分たちの所属を明かす。士官学院のものであることを告げると多少はたじろぐが、双方ともにやりきれなさがあるのだろう。何とか事態を収められないかケインが考えていると、一人の老人の声がした。彼は大市の責任者であるらしく、ここでは他のお客さん迷惑になるから別の場所で事情聴取をすると二人の商人に言う。これでひとまず話がつくだろう。二人を止めたことに感謝した大市元締めであるオットーさんに自己紹介をされ、「お茶でもご馳走するからこの話の後、しばし付き合ってくれんか?」との申し出を受け、断る理由もないので了承した。

「先ほどの揉め事、殴り合いになる前に止めてくれて本当に助かったわい。
 面倒な依頼も一通り片付けてくれたようじゃし」

「元帥の旧友にご助力できたのなら至高の喜びです」

「ケインは相変わらず固いのう」

「・・・すみません。性分のようです」

ヴァンダイク学院長と旧知の仲であるらしいオットーさんは、ケインたちの特別実習に向けた課題を見繕って欲しいと頼まれて依頼を用意したとのこと。いつもより固い雰囲気のケインに面食らう四人であったが、とりあえずあの後の話を聞いた。使用期間が同じであった2枚の許可証は両方が本物で、週ごとに二つの場所を交替で使用するという条件で落ち着いたらしい。その二つの場は、正面と奥の二か所なので多少の不平等は生じるだろうが、妥当な判断だとケインは思った。

「しかし御老人・・・市の許可書は本来、領主の名で発行されるもの。
 今回のような手違いはいささか腑に落ちぬのだが」

領内における商売の管理は、領主の義務。つまり、許可書の発行ミスは必然的に領主の落ち度となる。確かに納得がいかないことだ。その疑問をある程度は予想していたのかオットーさんが説明してくれる。話によると、商売管理は帝国東部を治める四大名門が一角のアルバレア公爵が行っているそうだ。ユーシスの父である。しかし、問題は別にあり、先日、大市の売上税が大幅に上昇して売り上げからかなりの割合を納めなければならないこと。これにより、商人らで喧嘩沙汰のトラブルになることも少なくないらしい。場所代もかかるのにそれがパーになりかねないさっきのような状況はどんな商人たちも躍起にさせるだろう。殴り合いはよろしくないが。
これを見かねたオットーさんは、公爵家へ何度も陳情に行ったらしいが結果は門前払い。そんな状況が約二ヶ月続いているとのこと。各地の治安維持を担う領邦軍は、増税の陳情を取り消さない限り大市の問題等には不干渉を貫くらしい。

(革新派と貴族派の対立は水面下で激化している。あの男やアルバレア公爵家は貴族制度の
思想が強い。ここでお金を欲するのは軍資金の為か?・・・ここまでやるのかよ)

オットーさんはこれは商人の問題で客人が気にすることではないから実習に集中することではないと告げ、歯がゆい思いを感じつつも一同は彼の家を出た。
駅前の広場でなんとかならないかと議論を交わしているとサラ教官がやって来た。
B班の方がグダグダになっているらしく、今からフォローしに行くのだとか。

「そういうわけでこちらは君たちに任せたわ。
 せいぜい悩んで、何をすべきか自分たちで考えてみなさい」

こちらの状況を理解していたかのようにそう言った教官は、
最後に「女神の加護を。レポート、期待してるわよ」と付け加えて駅の方へ去って行った。
何にせよ、今日は多くを知り、多くを学んだ。レポートを取るためにも夕食は早めに取る必要がある。

「今ごろB班のエマたちはどうしてるのかしら・・・?」

宿に戻り、地の物の料理に舌鼓を打った後、B班の様子を気にかけるアリサがそんな事を口にした。

「そうだな・・・こんな風に一緒にテーブルを囲んではいなさそうだけど。
 ケインはマキアスとは友人同士、だったよな?その、何とかできないのか?」

「ああ、確かに俺と彼は友人だ。でも・・・いや、だからこそ、かな。
 俺はマキアスに、自身の力で乗り越えて欲しいんだよ」

「そうか・・・」

「まぁ、この前、その話をしたら『むっ、君はあの男の肩を持つのか?』って
 へそを曲げられちゃったんだけどさ」

肩をすくめながらそういうケイン。友人だから彼もあまり強くは言えないのだろうとリィンは思った。
今度はエリオットが、どうしてⅦ組が設立されたのかに話の焦点を合わせる。

「この時代で、貴族と平民が手を取り合って歩いていける。
そんな道を模索しているんじゃないのかな・・・まぁ、ユートピアに過ぎないよ」

「ふむ・・・?そういった発想は無かったな。だが、貴族・平民のしがらみが皆無のこの
 クラスにおいては正論だろう」

「半月考えてやっと出せた答えだけどな。マキアスとユーシスの関係が、今の時代を象徴しているのかもしれない・・・けど、志望理由は各々違うと思うんだ」

そしてトークは、士官学院の志望理由へとシフトする。ラウラは目標としている人物に近づくため、実家と上手くいっていないらしいアリサは自立したかったから、エリオットに至っては元々音楽系の進路を志望していたらしい。そこまで本気じゃなかったけどと付け加え、リィンやケインの志望理由を訊いてきた。リィンは自分を見つけるためらしい。必然的にラストになったケインに、他の全員の視線が集まる。

「目的を果たすためだ。たとえそれが修羅の道であっても、俺は決して歩みを止めない」

「ケインの目的?そんなに強いのに、難しい事なのか?」

「強くなんかない!・・・ないんだよ。弱い部分がまだ、たくさん残っているんだ。
 大切なものを失い、全てを捨ててきた俺には、一生克服できないのかもしれない。
 でも、それでも俺は、その目的を果たすつもりだよ・・・何を犠牲にしても」

ケインがここまで感情を露わにして語るのを4人は初めて見たようだ。ケインは、目には確かな意志の炎が宿っているものの、運命に縛られた哀れな人形のようだった。
漠然とした重い空気の中、リィンがそろそろレポートを書こうと提案する。
全員が2階に向かおうとしたところで、ラウラは、リィンにどうして本気を出さないかと尋ねる。彼女は実習中、彼の方を見てはいわくありたげな表情だった。リィンは、<<剣仙>>ユン・カ-ファイに、東方剣術の集大成である<<八葉一刀流>>を習っていたが、剣の道に限界を感じて修行を打ち切られた初伝止まりの剣士であるらしい。だからこれが自分の限界だ、と。リィンの話を聞いたラウラは、「いい稽古相手が見付かったと思ったのだがな」とだけ呟き、外で素振りをしてくると言い残して宿を出た。街道に出て一心不乱に剣の素振りをするラウラ。いつの間にか、ケインも街道におり、彼女の素振りが一区切りついたところで話しかけた。

「さすが、ラウラは向上心が高いよな」

「ケイン。どうしてここへ?」

「君が心配だったから。それ以外の理由はないよ」

「そうか・・・」

月明かりに照らされたラウラの微笑に、図らずも見とれてしまうケイン。

「?どうしたのだ?」

「・・・な、何でもないよ」

怪訝な顔をするラウラからいったん顔を逸らしておいて、「俺で良ければ相談にのるよ」と言って近くの芝生に腰を下ろす。ラウラもそれに倣ってケインの隣へ。

「リィンは別に、剣の道を諦めてないと思うんだ」

「えっ?」

「普通、リィンのように初伝止まりなら、俺は剣を捨ててしまうかもしれない。
 でも彼は、そうしない。たぶん剣を、捨てきれないんだ。未練がましくもがいてでも、
 強くなろうとしている。いつかは初伝を抜け出したいって思っているんじゃないかな?
 リィンは剣を嫌っていない。剣の道を愛する一剣士として、俺はそう思うよ」

「ケインも、剣の道が好きなのだな。リィンのことに関しては、そなたの方が分かっているのかもしれない。だが、リィンは自分自身を軽んじている。私は、身分に関係なくどんな人間も誇り高くあれると信じているのだ。だから・・・」

「・・・腑に落ちないのか?」

「そうだ」

「その点に関しては下手なことは言えない。でも、これから自信をつけていくしかないと思うんだ。自身の剣の師匠から修行を打ち切られたんだから、少なからすショックは受けるよ。言いたくないけど、ラウラだって自分の父親、<<光の剣匠>>に同じ事をされたら嫌だろ?」

「それは、そうだが・・・」

「まぁ、明日にでもリィンにあんまり自分を軽んじるなって一喝してやろうぜ。
 そんなに難しく考えないでも、ラウラの思っていることを素直に話したら、
 きっとリィンだって分かってくれるよ」

「そうだな・・・フフ、そなたに感謝を」

ケインはどういたしましてと返し、ついでに宮廷剣術での手合わせを申し出る。
ラウラはこれを快く受けた。勝敗は語るまでもない事だろう。
手合わせを終えてご満悦した様子のラウラは、先に宿に戻っていった。

(俺も、歩んでいかないといけないな・・・ッ!)

突如として顔に飛んできた一発の銃弾を間一髪のところで避けたが、頬を軽く掠めたのか出血している。

「よく躱したな。フン、破滅の王(ルインモナーク)は健在、か」

「領邦軍か・・・あと三人隠れてるんだろうけど、あんたらに勝ち目は無いよ」

「鉄血の(イヌ)が、あまり粋がるなよ。今回はただの挨拶だということを覚えておくがいい」

領邦軍の隊長たちは、そんな捨て台詞を吐きながら走り去っていった。一応は彼らも警戒しておこうと考えながら、ケインも宿に帰った。

「帰ったのか、ケイン・・・そなた、出血しているではないか!?どうしたのだ!?」

「え~と、ちょっとガラの悪いチンピラに絡まれr」

「冗談を言うのは止めるがよい!今治療するから待っているのだ!」

「いや、大袈裟だって。こんなの十分もしないうちに治r」

「待・っ・て・い・る・の・だ・・・よいな?」

「は、はい。すみませんでした」

出血の詳しい経緯を訊かれることこそ無かったが、宿に戻るやいなや、ケインは大人しくラウラに治療されるのだった。
 
 

 
後書き
リィンの気持ちについて、ケインなりの考えでまとめてみたのですが合ってるんでしょうか、これ。少し懸念が残っていますが「違うよ!」と思う方は感想にてツッコんで頂いても構いません。 
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