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戦国異伝

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第百七十九話 集まる者達その四

「手伝わさせて頂きます」
「有り難い、それでは」
「はい、共に」
 明智は細川と共に仕事を進めた、こうして織田家の面々が宴の用意を確実に進めていた。そして彼等の仕事ぶりを聞いてだった。
 徳川家の者達は安土城の一角、用意されたそこに集まってだ。その中で顔を寄せ合いそのうえで話すのだった。
「織田家の宴は恐ろしいまでになっておるそうな」
「山海の珍味、南蛮の食いものまであるとか」
「酒も凄いものが出るというしな」
「それではどうした宴になるか」
「想像もつかぬな」
「全くじゃ」
 そしてだ、彼等のその中でだった、酒井がこう言ったのだった。
「しかし贅沢はのう」
「はい、それはですな」
「我等としては」
「うむ、贅沢は民百姓の重しになる」
 それでだというのだ。
「だからな」
「はい、そのことは」
「どうもですな」
「贅沢は民を苦しめるもの」
「そうなるものですから」
「殿もじゃ」
 彼等が敬愛し絶対の忠義を見せている家康もなのだ、贅沢は嫌いとかく質素な暮らしに徹しているのだ。
 酒井はそのことをだ、どうもという顔で言うのだった。
「宴ものう」
「はい、出されるものはあくまで質素で」
「民を苦しめぬものであるべき」
「それが我等ですが」
「織田殿は民百姓の重しにならぬといいますが」
「やはりそれは織田家だからですな」
「一千万石を超えますから」
 それだけの力があるからだというのだ。
「ですな、それでは」
「それだけの力があるからこそ」
「山海や南蛮から珍味を集めようとも」
「平気なのですな」
「それに対して我等はというと」
 どうかとだ、今度は石川が言った。
「五十万石じゃ」
「全く話になりませぬな」
「織田家は千五十万石です」
「最早比べものにもなりませぬ」
「それでは贅沢なぞ」
「とても、ですな」
「大きくなりたいのう」
 ここでこうも言った石川だった。
「当家も」
「ですな、織田家程とは言いませぬが」
「せめて百万石ですな」
「それだけの家になりたいですな」
「そう思う、しかし我等の前には武田家がある」
 この家の名前を出すのだった。
「あの家を倒すことはな」
「とてもですな」
「当家だけでは」
「何とかしたいものじゃ」
 切実な声で言う石川だった、他の者達も彼と同じ顔になっている。
「殿もな」
「はい、殿程の方ならば」
「五十万石も小さいですな」
「百万石でもまだまだ」
「小さいですな」
「そうじゃ、まだ小さいわ」
 こう言うのだった、石川も。
「百万石でもまだまだじゃ」
「しかしです」
 井伊が切実な声を出す石川に身体を前に出して言ってきた。
「当家の力では武田には」
「我等では勝てぬな」
「はい、武田は二百四十万石です」
 織田家程ではないがこの家も大きいのだ、二百四十万石の武田家に五十万石の徳川家が勝てる筈がなかった。 
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