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ドリトル先生と伊予のカワウソ

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第十一幕その五

「そう読んでいますので」
「こちらではあのお好み焼きを広島焼きと呼ぶのと一緒ですね」
「そうですね、しかしです」
「味は、ですか」
「負けていませんので」
 急にです、加藤さんのお顔がです。
 普段の優しいものからにやりとしたものになりました、そのうえで先生に対してお話を続けていくのでした。
「お楽しみに」
「僕も広島焼きは食べたことがありますが」
「美味しいですね」
「そうでしたか」
「そうでしょうね、しかしです」
「それでもですか」
「松山の見事な食材を使っていますので」
 だからだというのです。
「期待してもらって結構です」
「おお、凄い自信ですね」
「すいません、カワウソさん達のお好み焼きは広島のものになります」
「そう仰いますか」
「はい、先生は大阪派ですね」
「やはり神戸にいますので」
 この辺りは大阪に近いので当然と言えば当然です。
「そちらになります」
「しかしカワウソさん達はですか」
「そうです、広島のお好み焼きの洗礼を受けますので」
 それ故に、というのです。
「そうなります」
「加藤さんまさかお好み焼きは」
「大好物でして」
 その広島のものがというのです。
「ですから」
「そこまでの自信がおありですね」
「そうです、では」
「それではですね」
「狸さん達のお好み焼きを食べましょう」
「わかりました」
 こうしたお話をしているうちにお好み焼きはどんどん焼けてきました。他には焼きそばも焼かれています。鉄板の上でじゅうじゅうと音を立てておソースの香りも出しながら。
 そうして焼けたお好み焼きをです、狸さんは皆に出して言いました。
「さあ、食べてね」
「遠慮はいらないからね」
「僕達も焼けた傍からどんどん食べるから」
「皆で楽しもう」
「お好み焼きに焼きそばをね」
「酒もあるぞ」
 長老さんも焼いています、その頭にねじり鉢巻きをして。
「飲みながらな」
「楽しむんだね」
「このパーティーを」
「ほっほっほ、何を出そうと思ったがのう」
 長老さんはお飲み焼きを慣れた動きで焼きながら言いました。
「懐石料理も考えたが」
「何かね、あれだとね」
「宴じゃありきたりだしね」
「それに温泉もってなると陳腐だから」
「こうしたんだよね」
「そうそう」
 狸さん達も言うのでした。
「だからこうしたけれど」
「成功だね」
「そうみたいだね」
「よかったよ」
 こう言うのでした。
「気に入ってもらえたみたいでね」
「お好み焼きも焼きそばもね」
「これは」
 老紳士もです、鉄板で焼かれてからお皿の上に置かれた焼きそばをお箸で食べながら唸る様に言いました。
「イギリスにはとてもない味ですな」
「そうですよね、こんな味は」
「考えもつかないです」
「おソースをここまで上手に使って」
「ヌードルと絡めるなんて」
「珍味、いや美味」
 こう言ってもいいものだというのです。 
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