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ドリトル先生と伊予のカワウソ

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第十一幕その三

「そこからさら検査され品行方正でないと」
「入隊出来なかったのですね」
「そうでした」
 それが戦前の日本の徴兵だったというのです。
「入隊出来た方が凄かったのです」
「そこまで厳しかったのですね」
「クラスの男の子で入隊出来るのは一人か二人か」
「それはまた少ないですね」
「そうでした、徴兵とはいっても」
 実際はそうだったというのです。
「難しかったのです」
「少数精鋭だったのですね」
「そうでした、皆兵ではなかったです」
「では強制徴募も」
「発想がなかったですね」
「領民を無理矢理兵隊にすることもですね」
「浪人を雇っていましたね、戦国時代のお話ですね」
 加藤さんはすぐに先生の今のお話の内容を理解しました。
「それは」
「はい、今のお話は」
「そうですね、あの頃でもです」
「領民を強制的に兵士にする等ということは」
「実際はなかったみたいですね、浪人を雇えばいいですし」
 加藤さんは歩きつつ腕を組んで述べました。
「足軽、兵士もです」
「その人達もですね」
「農家の次男、三男に来てもらっていました。しかも農閑期だけでした」
「そうだったのですか、穏やかだったのですね」
「戦争は武士がするものと考えられていましたので」
「成程」
「戦いが起こればその戦いを観戦することもよくあったそうです」
 加藤さんはこのこともお話しました。
「略奪とかそういったこともです」
「あまりなかったのですね」
「ですから観戦も出来ました」
「平和ですね、戦争とはいっても」
「そちらでは違いましたか」
「信じられない話です」
 イギリスから見ればというのです。
「いや、まことに」
「では略奪等も」
「酷かったです」
 イギリスだけのことではなくとお話する先生でした。
「三十年戦争は特に」
「ああ、あの」
「はい、ドイツ全土で欧州各国が争った」
「欧州最大の宗教戦争でしたね」
「同時に最悪の」
 そうした戦争だったとです、先生もお話するのでした。
「とんでもない戦争でした」
「相当荒れていたのですね」
「酷いものでした、観戦なぞとても」
「出来なかったですか」
「そんなことをすれば傭兵達に何をされるか」
「そうした状況でしたか」
 加藤さんも他の国の戦争のことはある程度は知っていました、ですがご自身の専門外なのであまり詳しくなかったのです。
 それで、です。こうも言うのでした。
「だから強制徴募といったものも」
「ありました、そして水兵は過酷でした」
「軍隊、そして船の中の生活だったからですね」
「泳げないですから船が沈みますと」
「その時はですね」
「死ぬしかありませんでした」
「それはとても嫌ですね」
 加藤さんにしてみてもです、そうしたことで死にたい筈がありません。
 それでなのです、こう言いました。
「日本に生まれてよかったです」
「今の日本にですね」
「はい」
 まさにというのです。 
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