ハイスクールD×D~魔王様は神殺しの使徒~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一話 「魔王セラフォルー・レヴィアタン」
前書き
い、一話からいきなり難産……。
ハイスクールD×D
~魔王様は神殺しの使徒~
第一話
「魔王セラフォルー・レヴィアタン」
懐かしい夢を見た。
執務室の机で居眠りをしていた四大魔王の一人にして女性悪魔最強と呼ばれるセラフォルー・レヴィアタンは目が覚めたばかりの寝ぼけ眼を擦りながら先ほどまで見ていた夢を思い出す。
「セリカ様と初めて会った時の夢……懐かしいなぁ~」
まだ15の小娘だった頃、突然別世界の二つの回廊の終わりに飛ばされ、そこで出会ったセリカ・シルフィルとエクリア・フェミリンスの事を思い出した。
あの頃はまだまだ悪魔としての実力は今と比べものにならないほど未熟で、精神的にも成人していなかったから、本当に迷惑を掛けたものだ。
「ソーナちゃんやサーゼクスちゃん達にも秘密なんだよね~☆」
言っても信じて貰えないのは明らかなので、誰にも話していない秘密。
まさか、魔王の一人である自分が、一人の男の使徒であるなどと、言える筈もない。
「こっちの世界に帰ってきてもう何百年も経つのに、まだ忘れないなんて、初恋は偉大だよね!」
初恋というのもあるが、セラフォルーは神殺しセリカ・シルフィルの使徒なので、セリカとの繋がりを感じられる。
それは世界が違っていても健在で、今でもセリカが生きているのだという事は常に感じられるからこそ、別れてから何百年と経とうが忘れられないのだ。
「セリカ様、エクリア様、マリーニャちゃん、シュリちゃん、みんな元気かなぁ~」
かつてお世話になった主であるセリカと、姉のように慕っていたエクリア、二人と出会ってから知り合い、そして同じくセリカの使徒となった後輩のマリーニャ・クルップや、妹のように可愛がっていたシュリ・レイツェン。
邪竜との戦いの後、この世界に戻ってきてから、二度と会えなくなった人たちに、もう一度会いたいという気持ちはあるが、それは叶わぬ願いだ。
「さって、お仕事お仕事~☆」
胸に湧いた寂しさを誤魔化すように、目の前の書類に手を付けるセラフォルーだったが、この日から、彼女の表情に若干の影が生まれるようになったのは、言うまでも無かった。
「セラフォルー、最近元気が無いみたいだけど、どうかしたのかい?」
とある日、一緒に仕事をしていたサーゼクスが最近表情が優れないセラフォルーを心配して、そう声を掛けてきた。
共に大戦を戦い、その実力を認められて同じ魔王になった者として、何より幼馴染として、サーゼクスはセラフォルーのことを心配していたのだ。
「ううん、私は別に何もないけど、どうしたの?」
「いや、最近君の元気が無いように思ってね、少し心配していたんだよ。アジュカやファルビウムも君の事を心配してる」
「そっかー……」
心配掛けないようにと心掛けていたのだが、どうにも失敗したようだった。
「別に大したことじゃないよ? ちょっと昔のことを思い出してただけで」
「それって、君が数日行方不明だった時のことかい?」
「そうそう、それ」
「あのとき何があったのか、結局君は何も語らなかったって聞いてるけど、その様子だと随分と大事な何かがあったんだね」
セラフォルーが二つの回廊の終わりに居た期間は数年単位だった。なのに、この世界に戻ってきたときは向こうへ行く前から数日しか経っておらず、そこまでの大事にはならなかったのだ。
セラフォルー自身は、二つの回廊の終わりに行ったこと、そこでの出来事や出会った人々のことは何一つ、誰にも教えていないので、結局は謎のまま、今日まで来た。
「う~ん、疲れちゃった☆ ねぇサーゼクスちゃん、少し休憩しよっか?」
「そうだね、グレイフィアに言って紅茶でも淹れてもらおうか?」
「それより、少し散歩したいかな~☆」
「わかった、中庭で良いかな?」
「オッケ~☆」
魔王の仕事場である議事堂には大きな中庭が存在している。
調度散歩するのに打ってつけの広さなので、二人は執務室を出て中庭に行くと、植えられている大木の根元に腰を下ろした。
「ん~! 良い天気だねぇ~」
「冥界の紫色の空じゃ情緒なんて無いに等しいけどね」
「気分の問題だよ☆」
そんなものか、とサーゼクスも笑いながら吹いている風の心地よさを肌で感じていると、ふと視界の隅に妙なモノを見つけた。
「あれは……?」
「どうしたの?」
「いや、あれは何かと思ってね」
そう言ってサーゼクスが指差した先を見て、セラフォルーは息を呑んだ。なぜなら、それはあまりに見覚えのあるものだったのだから。
空間に出来た裂け目、その周辺空間にある歪みは、間違いなく若き日のセラフォルーを二つの回廊の終わりへと誘い、そしてこの世界へと送り返してくれたもの。
「裂け目から、何か出てくる!?」
「え……うそ、あれって」
裂け目から、人影らしきものが出てきた。人数にして6人、全員が女性と思しき顔なのだが、その6人の内、4人はセラフォルーが会いたかった人物だった。
忘れもしない赤い髪に緑色の服を着た美女にしか見えない男性、ブロンドの髪をストレートに伸ばしたメイド服の美女、青い髪を短く切りそろえた美女メイド、茶髪の髪をセミロングにしたアホ毛が特徴の美少女メイド、4人ともずっとセラフォルーが会いたかった人たち。
「セリカ様! エクリア様! マリーニャちゃん! シュリちゃん!」
慌てて駆け寄ったセラフォルーが6人の様子を見たが、気を失っているだけのようなので安心した。
そして、後ろから警戒した様子で付いて来たサーゼクスは彼らがセラフォルーの知り合いらしいというのを彼女の言葉から察して問いかける。
「セラフォルー、彼女達はいったい……?」
「……私の行方不明事件の折に知り合った人達なんだけど、でもどうしてここに」
「とりあえず、彼らを運ぼう。執務室にある簡易ベッドじゃ足りないか……」
「う~ん、とりあえず起こすのが先じゃないかな?」
「それも、そうだね」
運ぶにしても人を呼ぶのはまずいだろう、だが二人で6人も運ぶのは無理があるので、可哀想だが起きてもらうしかない。
「セリカ様、起きて! セリカ様!」
セラフォルーが赤髪の男性、セリカを揺すって声を掛けた。すると、ゆっくりとだがセリカの目が開かれ、セラフォルーの姿を確認して、慌てて起き上がる。
「セラフォルー……なぜ、お前が」
「お久しぶりです、セリカ様。ここは私の故郷、冥界にある議事堂の中庭なんですけど……セリカ様たちはどうしてここに?」
「お前の故郷……? っ! エクリアたちも一緒だったか……」
「はい、エクリア様たちも気を失っているだけみたいです」
「そうか……」
とにかく、事情を知りたいので、エクリア達も起こして、場所を移動する事になった。とは言っても先ほどまでサーゼクスとセラフォルーが仕事をしていた執務室に移っただけなのだが。
「まず最初にサーゼクスちゃん、彼らの紹介からするね?」
「ああ、頼むよ。私は事情が判らないのでね」
「じゃあ、まず赤い髪の彼から」
「ちょっと待った……彼? 彼女、ではなくかい?」
「あ~……」
サーゼクスはやはりというか、勘違いしている。
セリカはどこからどう見ても女性にしか見えないが、れっきとした男なのだ。その旨を説明すると、当然のようにサーゼクスは驚愕していた。
「それで、彼がセリカ様……セリカ・シルフィル様で、お隣のメイドさんがセリカ様のお屋敷でメイド長をやってるエクリア・フェミリンス様」
「セリカだ……一応、男だ」
「エクリアです、よろしくお願い致します」
「それで、青い髪の子がマリーニャ・クルップちゃんで、隣の女の子がシュリ・レイツェンちゃん」
「よろしくね~」
「よ、よろしくお願いします」
それから、緑色の髪の少女とピンクの髪の少女については、セラフォルーも知らない。今回が初対面なのだから。
「それで、セリカ様……その二人は?」
「お前が帰った後に新しく使徒になった二人だ。緑色の髪の方がサリア・レイツェン、もう一人はレシェンテ」
「さ、サリアです~」
「レシェンテじゃ、よろしくのセラフォルー」
「うん、よろしくね~☆」
それから、セリカ達にサーゼクスの紹介と、改めて自分のことを紹介する事にした。
あの頃とは、今の自分は色々と違うのだから。
「彼はサーゼクス・ルシファー、私の幼馴染で冥界では魔王を勤めてるんです」
「よろしくね」
「それで、セリカ様……改めまして、セラフォルー・シトリーは昔の名前、今の私はセラフォルー・レヴィアタンと申します。あなた方と別れてから、魔王となりました」
神殺しセリカ・シルフィルの第2使徒セラフォルー・シトリー改め、魔王セラフォルー・レヴィアタンの名乗りに、表情の薄いセリカが珍しく目を見開いて驚いていた。
後書き
次回はセリカがD×D世界に来た理由についての説明が入ります。
ページ上へ戻る