ロックマンX~5つの希望~
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第六話 エックスSIDE3
前書き
エックスSIDE2の続き。
エックスはデータ整理をしていた。
画面にはびっしりとプログラムが書かれている。
エイリアが作成した物だ。
本人曰く現在、ライフセーバーと共に働いているゲイトには劣るとのことだが、エックスは改めてエイリアの情報処理能力の高さを知る。
この仕事は働き詰めのエイリアとアイリスを見かねて、エックスが手伝っていた。
レッドアラートとの戦いが始まってからエイリアもアイリスも休みなく働いている。
いくら気丈な彼女達でも、顔、声、動作には疲労の色が浮かんでおり、見ているこちらが苦しかった。
エックスは2人の仕事のうち、簡単なものを手伝っているが、それでもオペレート専門ではないエックスにはキツイ。
プログラムに四苦八苦していた時、アイリスとエイリアが入って来た。
アイリス「ありがとうエックス。はい」
エックス「ああ、ありがとう2人共」
アイリスからコーヒーの入ったカップを受け取り、一口飲む。
コーヒーの心地好い苦みにエックスは表情を綻ばせる。
アイリス「本当にありがとうエックス。あなたが手伝ってくれたから久しぶりに仮眠が取れたわ」
エックス「オペレーターの仕事って大変なんだな。忙しくて目が回りそうだよ。特にこのデータ処理なんか」
画面一杯のプログラムを指して笑うエックス。
アイリス「あ、分かる?私も初めての時は戸惑ったわ」
エイリア「それに大変なのはあなただって…ごめんなさい」
言いかけて止めた。
己の軽率さを悔やむ顔となる。
エックス「いいんだ…気にしないで」
エイリアはエックスを見るが、顔に怒りの表情はなかった。
エックス「どうしてこんなことになったのか自分でも分からないんだ。ライフセーバーは“精神的なもの”だと言っていた。確かに俺は悩んでばかりの意気地無しだけど…俺は今まで戦って来れたのに…何で急に…俺は戦わなければいけないのに…戦いを止めなければいけないのに…」
エイリア「いいんじゃない?」
唐突にエイリアが言う。
明るく、優しさに満ちた瞳をしていた。
エックス「え…?」
驚きに目を見開くと、エイリアの優しく、凛とした表情が映し出された。
エイリア「あなたは最初の反乱から充分戦った。沢山傷ついた。今休んだって誰もあなたを責めないわ。だってゼロもルインもルナも…みんなあなたの気持ちを分かっているはずだから。戦うの、嫌なんでしょう?」
エックス「そりゃあ…出来れば戦いたくないよ」
ぎこちなく笑いながら言うエックスをエイリアとアイリスはジッと見つめる。
エックス「けど、目を閉じても戦いがなくなるわけじゃない。多くの人々が苦しみ、悲しんでいる。一刻も早く戦いを終わらせなければならないのに…っ!!」
アイリス「エックス…」
エックス「それが分かっているはずなのに…どうして戦えない…?もう迷わないって…ルインを失った時、誓ったはずなのに…っ!!」
触れていただけの手が、ギリギリと使えぬ腕を締める。
自身への怒りが肉体的な痛みとなってエックスを蝕む。
エイリア「エックス!!」
彼の自傷行為を止めようと身を起こした。
エックス「止めろ!!」
彼女の手がエックスの腕に触れる寸前、勢いよく振り払われた。
アイリス「エックス!?」
アイリスは思わず我が目を疑った。
あのエックスが人を拒絶したことに。
同時にエックスは我に帰った。
エイリアは顔を真っ青にして慄いていた。
エックス「エイリア…すまない…本当にすまない……」
何度も謝るエックス。
彼女は自分を心配してくれたというのに、その手を払いのけてしまったことに。
顔をくしゃくしゃにしてエイリアに何度も謝った。
その表情はエイリアとアイリスの方が心苦しくなるほどである。
アイリス「私…コーヒーの代わりにハーブティーを淹れてきますね」
心を落ち着かせるために代わりにハーブティーを淹れに向かうアイリス。
エイリアは俯くエックスの手にそっと自身の手を重ねた。
エイリア「エックス…気にしないで。私は大丈夫だから、もう自分を責めないで…。あなたはもう充分傷ついた。もういいのよ。それにあなたは何も出来ないわけじゃない。あなたがいてくれるから私は頑張れるの…あなたがあの時助けてくれたから今の私がいるの…だから……これ以上自分を責めないで…」
エックス「エイリア…でも、俺は…」
と言いかけて、何か閃いた表情を浮かべた。
エックス「いや…まだだ、まだ俺にも出来ることがあるはずだ……」
力がなくても出来ることはあるはずだ。
それを思い付いた。
エイリア「エックス…?」
彼を怖ず怖ずと見つめる。
エックスの瞳に光が射していた。
希望の光を。
エックス「…ありがとうエイリア。俺にも出来ることがあった。」
エイリア「え?」
エックス「今からライフセーバーの元に向かう」
ライフセーバーの元に向かうと聞いたエイリアは目を見開いたが、すぐにエックスの考えを理解した。
エックスはライフセーバーと共に救助活動に向かおうとしているのだ。
エイリア「そう、気をつけてエックス…」
エックス「ああ…本当にありがとう…エイリア…」
彼女を両腕で包み、少しの時間の経過の後、ライフセーバーの元に向かうエックス。
アイリス「エイリアさん?エックスは?」
エイリア「エックスならライフセーバーの元に向かったわ。きっと自分に出来ることをしに。」
アイリス「そうですか。あ、ハーブティー飲みますか?」
エイリア「あら、いい香り。頂くわ」
ハーブティーの入ったカップを受け取り一口飲もうとした時、ディープフォレストから帰ってきたゼロが指令室に入って来た。
次のミッション先が決まるまで暇を持て余してきたのだろう。
アイリス「ルインは?」
ゼロ「あいつなら仮眠を取っている…ハーブティーか?」
アイリス「ええ、ゼロもどう?」
ゼロ「次のミッションまで時間がある。頂くとするか。」
ハーブティーの入ったカップを受け取り、一口飲んだ。
ゼロ「やはりアイリスの淹れた物は美味いな」
アイリス「そ、そう?」
ゼロ「ああ、俺が言うんだ。間違いない」
そしてハーブティーを飲み終えたゼロはしばらくして、ミッションに向かう。
サイバースペースの最奥で、スナイプ・アリクイックが、何もかも知っているかのような目でゼロを見つめていた。
アリクイック「ふぉふぉふぉ…よう来たのう。真の使命を忘れた者よ」
アリクイックの意味深な言葉にゼロの眉が動く。
アリクイック「幾重にもプロテクトされたお前のデータから垣間見えたのは…未来の記憶か過去の虚像か…」
ゼロ「ふん。何を見たかは知らんが、興味無いな。この場でお前を倒す。それが今の俺の使命だ!!」
セイバーに手をかけながらゼロが叫ぶ。
アリクイック「ふぉふぉふぉ…確かに迷いはないようじゃな」
ゼロ「老人の戯れ言に付き合っている暇はない。行くぞ!!」
飛び掛かったゼロにアリクイックは静かに嘲笑う。
アリクイックの能力は自身のダメージを武器精製に変換することである。
一定のダメージを負うごとに増強される。
最初は鎌鼬を繰り出す程度だったのが、アリ型爆弾、ホーミングミサイルを放つまでになる。
ゼロは攻撃のチャンスも与えられぬまま、攻撃を避けるのみだ。
アリクイック「ふぉふぉふぉ、どうしたゼロよ…わしを倒すのではなかったか?」
ゼロ「ああ、今すぐ倒してやる!!」
小馬鹿にしたようなアリクイックの物言いにゼロは怒りを高めていく。
アリクイック「威勢がよいのぉ、じゃが」
アリクイックは身体の周囲にレーザーポッドを召喚する。
ポッドは8つ。
特殊な金属で出来ているのか、ゼロのセイバーを持ってしても破壊出来ない。
アリクイック「この攻撃はかわせぬよ」
ポッドから一斉にレーザーが発射された。
白い光が雨の如く降り注ぎ、ゼロは成す術もなく被爆した。
ゼロ「くっ…」
アリクイック「紅き邪神よ。本来のボディと力があればわしを倒せただろうに。ふぉふぉふぉ…邪神は使命を奪われ、偽りの使命を背負わされる。人間達の都合を押し付けられた哀れな男よ…」
ゼロ「馬鹿馬鹿しい…」
震える足で立ち上がるゼロ。
迷いなき瞳で敵を貫いていく。
ゼロ「爺から与えられた下らん使命も、予測のつかない未来も必要ない。俺に必要なのは“今”だけだ。今ここで戦っているという事実が俺を支えてくれている!!お前の戯れ言など何の意味もない!!」
セイバーが煌めく。
破壊不可能のはずのレーザーポッドが破壊され、それはアリクイックすらも屈服させる。
アリクイック「流石じゃのぉ…遥か昔に造られた最初のレプリロイドよ」
アリクイックはアーカイブを検索して古きデータを検出する。
現在厳重に保管されているケイン博士の日記にはレプリロイドの始祖はエックスであると言われているが、真実は違う。
“ロックマン”というロボットが存在していた時代にゼロは密かに造られていた。
ロックマンを破壊するために生み出されたロボット。
アリクイック「言葉の続きじゃ。これより遠い未来。世界は偽りの蒼とその子らに支配される。創られた紛い物の理想郷、それを突き抜ける斜陽の如き鮮烈な紅き光。蒼と紅は再び戦う運命にある」
ゼロ「下らん…」
ゼロは突き付けたセイバーを離し、静かに口を開いた。
ゼロ「その戯れ言が未来となるかどうか、その老いぼれた目で見ているがいい」
アリクイックの戦闘用プログラムをセイバーで破壊すると強制的に連行した。
後書き
アリクイック撃破。
エックスの武器ってエックスの感情に性能と威力が左右されるような気がするんですよね。
イレハンのラスボスのエックスといい。
フルチャージショットを通常弾のように連射とかラスボスのエックスは凄い。
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