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ドリトル先生と伊予のカワウソ

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第十幕その七

「では子供達におかしなことを教えたり暴力を振るったり」
「それも常ですか」
「セクハラも」
「はい、そうしたこともです」
「常ですか」
「そうなのです」
「恐ろしいですね、学校の先生に新聞記者がそうした人ばかりというのは」
 老紳士も唸るのでした。
「日本にも悪い部分はあるのですね」
「残念ですが。しかし」
「それでもですね」
「既に松山の街は歩き回られていますな」
「はい」
 このことについてはその通りだと答えた老紳士でした。
「毎日そうしています」
「どう思われますか」
「綺麗でしかも暖かいですね」 
 笑顔での言葉でした。
「人も」
「それもまた日本です」
「悪い人がいると共にですね」
「いい人もいます」
 そうだというのです。
「どの国でも同じだと思いますが」
「はい、イギリスでもです」
 カワウソさん達のお国でもというのです、勿論先生達の祖国でもあります。そのイギリスでもだというのです。
「悪い人がいれば」
「いい人もですね」
「います」
 老紳士は長老さんにはっきりと答えました。
「様々な人、そして妖精が」
「狸も同じですじゃ」
「いい狸さんと悪い狸さんがいますか」
「そうですじゃ。まあ我等八百八狸は」
「松山にそれだけの狸さんがおられるのですか」
「いや、これは四国全体の化けられる狸の数ですじゃ」
 それが八百八匹いるというのです。
「松山にはわしと何十匹かおるだけです」
「そうだったのですか」
「愛媛全体でこれだけです」
 今お屋敷の中にいてパーティーを楽しんでいるこの人達がというのです。
「二百程です」
「この方々は愛媛全体の狸さん達でしたか」
「左様です」
「わかりました、そうでしたか」
「はい、そしてそちらは」
「はい、我々は北アイルランドから来たのですが」
 老紳士はその生まれからです、長老さんにお話するのでした。
「ネイ湖からです」
「アイルランドですか」
「そうです、あの場所で一番大きな湖にいまして」
 北アイルランドの中で最も大きな湖です。
「そこに長い間暮らしていたのですが」
「日本に来られたのですが」
「よりよい水を求めまして」
「左様でしたか」
「日本の水はです」
 そのお水は、というのでした。
「やはりいいですね」
「確かに水は綺麗ですな」
「この松山でも」
「はい、非常に」
 だからだというのです。
「それでこの松山に来てです」
「定住されたいというのですな」
「そのつもりです」
「そうですか、しかし松山以外の場所には」
「最初は飛行機で東京に来ましたが」
「あそこの水が気に入りませんでしたか」
「それですぐに西に向かいました」
 そうしたというのです。
「西の方が水がいいと人に聞いたので」
「東京からすぐに」
「ですから東京のことは全く知らないです」
 すぐに去ったからです。
「まことに」
「そうしてですか」
「その西に行く時に」
 まさにその時にというのです。 
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