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足こそ大事

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第五章

「そのことを知ったか」
「足で踏むといいんだ」
「足の方が手でやるより力が強いじゃろ」
「確かに」
「しかも体重もかかる」
 踏むとだ。
「だから余計にいいのじゃよ」
「そうだったんだね」
「そうじゃ、よくわかったな」
「それでなんだ」
「わしの拳法の動きも見ておったな」
 既に気付いていた、祖父にしてみても。
「そうじゃな」
「うん、見ていたよ」
「拳法もまたじゃ」
「足なんだ」
「そうじゃ、足じゃ」
 それを使うというのだ。
「足を使ってじゃ」
「足さばきだね」
「それを使ってこそじゃ」
「祖父ちゃんの動きが出来るんだね」
「拳法全体に言えることじゃが」
「足をどう使うか」
 託神は真剣に考える顔で言った。
「そこだったんだ」
「そうじゃ、よくわかったな」
「いや、今やっとわかったよ」
 託神はここでこう言ったのだった。
「よくじゃなくてやっとだよ」
「その歳でわかったのは凄いぞ」
「凄くないよ、二十年近く生きてきてやっとだから」
「ほんの二十年近くと言うべきじゃぞ」
「そうかな」
「そうじゃ、そしてじゃ」
 王は孫にこうも言った。
「拳法のことばわかればな」
「料理もっていうのは」
「そうじゃ、わしの料理は特に麺じゃな」
「うん、そうだよね」
「麺はコシじゃが」
「踏んでだったんだね、足で」
「拳法の動きで踏むのじゃ」
 ここでだ、王は孫にこのことを教えたのだった。
「さすればな」
「あのコシが出せるんだね」
「すぐには出せぬがな」
「動きを身に着けていけば」
「いいのじゃ、そうなのじゃ」
「そういうことだね。じゃあ」
「修行することじゃ」
 王は温かい目で孫に話した。
「これからもな」
「そして何時かは」
「わしに並ぶか」
「うん、祖父ちゃんみたいな料理人、拳法家になるよ」
 託神は微笑み目を輝かせて祖父に答えた。
「これからも修行に励んでね」
「その時を楽しみにしておるぞ」
 王もまた笑顔で言うのだった、そうしてであった。
 託神は足に気付いてだった、拳法でもその動きを身に着けるべく修行に励み。
 麺を打つことにも使った、そうしたのだった。
 そのうえで日々料理と拳法に励んだ、その中で言うのだった。
「これからも精進しないとな」
「何か動きが変わりましたね」
「前と比べて」
 周りもその王に言う。
「かなり速くなりました」
「さらに」
「わかったからね」
 王はこう答えるのだった、厨房でも道場でも。
 そうしてだった、祖父を目指し頑張るのだった。足を動かしながら。


足こそ大事   完


                          2014・3・24 
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