真面目カップル
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四章
「一緒になるか」
「あの人と」
「そうだ、どうだ」
「そうだね」
一呼吸置いてからだ、ヴィンセントは父のその言葉に対して。
少し考えてからだ、こう答えたのだった。
「それじゃあ」
「よし、決まりだな」
「あの人がどう言うかだけれど」
「何、問題はない」
メアリーの方もというのだ。
「御前は心配するな」
「そうなんだ」
「後は式の段取りはだ」
もうそうした話になっていた、話は早かった。
「こちらでする、ではな」
「父さん達はが進めてくれるから」
「御前は卒業してな」
就職もしろというのだ。
「後は任せろ」
「わかったよ、それじゃあね」
「うむ、ではな」
こうしてだった、ヴィンセントは親達が段取りを進めてメアリーと結婚することになった、そうして。
卒業、就職と共にメアリーと結婚した。そうしてだった。
夫婦の新居にも入った、新居はマンションの一室で綺麗な部屋だった。彼はその部屋に入って妻にこう言った。
「じゃあこれから」
「はい、これからは」
「一緒に暮らそう」
「わかりました」
「何か急に話が進んで」
「最初から決まっていましたね」
「そうした感じだね」
ヴィンセントは首を傾げさせてこうも言った。
「どうにも」
「はい、私達のことは」
「会ってすぐにこうなって」
「はじまりましたね」
「そうだね、けれど」
「一緒になりましたね」
メアリーはその部屋の中、確かに綺麗で新しいが生活集はまだないその部屋を見回しながら夫となった彼に言った。
「それでは」
「二人で。夫婦として」
ヴィンセントも妻となった彼女に応えた。
「暮らしていこう」
「宜しくお願いします」
こうしてだった、二人で。
生活をはじめた、会ってあっという間に結婚し夫婦生活に入った。最初は何も起こらなかった。しかしであった。
次第にだ、ヴィンセントは妻と共にいて気付いたのだった。
妻は真面目でいつも丁寧に掃除も洗濯もしている、だが。
それは仕事をしながらだ、彼はそのことに気付いて妻に言った。
「頑張ってるね」
「そうですか?」
「うん、仕事もして家事もちゃんとしてるから」
「母がしていましたから」
「だからなんだ」
「これが普通だと思います」
「うちの母は家で仕事をしているからね」
彼の母の仕事はそうしたものだ、だから家事との両立は外で働いているよりは楽だったのだ。彼はこのことから妻を見ているのだ。
「外でする仕事と家事を両立させているのは」
「凄いですか」
「立派だよ」
こう言うのだった。
「本当にそう思うよ」
「そうだのですか、けれど」
今度はメアリーから言ってきた、共に部屋の中にいる夫に対して。
「あなたも」
「僕も?」
「はい、働いておられて」
そしてだというのだ。
「家事を手伝ってくれていますね」
「ああ、これね」
二人は今台所ので食器を洗っている、二人でだ。
ページ上へ戻る