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燃えよバレンタイン

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第二章


第二章

「そこ、継げって言われてるから」
「大変だな、あんなの毎日振るってな」
「まあその結果全国大会にもいけたしね」
 それ自体はいいというのだった。
「最初はかなり苦労したけれどね」
「けれどそのお陰で力も強くなったんだよな」
「そうなるよね、やっぱり」
「あいつはもっとそうなったしな」
 ここでだ。もう一人の名前が出て来たのであった。
「古賀はな」
「雅のこと?」
「あいつは御前よりまだ強いだろ」
 こう猛に言うのであった。
「全国大会優勝だしな」
「強いよねえ」
「鬼百合だったよな、仇名」
 これまた随分とありきたりだがそれでいて物凄い仇名であった。
「とんでもない仇名だよな、考えてみれば」
「誰がつけたのかな」
「それもわからないしな。それでその古賀だけれどな」
「うん、雅だね」
「あいつもだろ。八条大学に進学するんだったよな」
「うん、そうだよ」
 猛は素っ気無い感じでそうだというのであった。クラスメイトは最初は立っていたが何時の間にか自分の椅子を持って来てそこに座って彼と話をしている。
「それで剣道部に入るんだって」
「あいつ滅茶苦茶強いからな」
 クラスメイトは少し呆れたようにしてこう言うのだった。
「いや、呆れる位にな」
「実際呆れてない?」
「御前よりまだ強いだろ」
「ずっとね」 
 猛はその実力をだ。はっきりと認めていた。
「一度も勝ったことないから」
「そこまでかよ」
「うん、握力とかも凄いから」
「えげつない奴だな。顔もスタイルもいいっていうのによ」
 女の子が聞くと喜ぶような言葉も出て来た。
「それでも。中身はかよ」
「気も強いしね」
「だよなあ。しかし御前あいつと幼馴染だったよな」
「実は従姉弟同士なんだ」
 血縁関係であるというのだ。
「親父の妹さんの子供でさ」
「全然似てないな」
「僕は母親似で雅は向こうのお袋さんに似てるんだ」
「つまり御前の叔母さんにかよ」
「うん、そうなんだ」
 顔立ちの話もここでされた。
「それでなんだよ」
「何かとややこしい関係だな」
「もう物心ついたらいつも一緒で」
 そんな関係だというのである。
「道場で一緒だよ。いつもね」
「部活でも道場でもか」
「そうなんだ。子供の頃はよくいじめられて泣かされたよ」
「その光景滅茶苦茶簡単に頭の中に浮かぶぞ」
 クラスメイトは真顔で猛に告げた。
「そうか、ずっとか」
「本当に幼稚園からずっと一緒で」
「夫婦みたいってか」
「だから何でそうなるんだよ」
 夫婦と言われてだ。猛は困った顔になって言葉を返した。
「そういうのじゃないから」
「何だ、違うのかよ」
「違うよ、僕達そんな関係じゃないから」
 それを否定するとだった。ここでだ。
「猛、いるかしら」
「あっ」
「噂をすればだな」
 背は一七〇位、長い黒髪を後ろで束ねた少女がやって来た。制服から見える白い脚が黒のソックスをよく映えさせている。胸もかなり目立つ。凛とした顔をしていてそこには中性的なものがある。だが少女に相応しい初々しさも見せている。そんな少女であった。
 
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