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(仮称)武器の御遣い

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第壱章
  第二席。法正、旅に出るとのこと

 
 
 Side:飛鳥


 ……桃香殿等一行が白蓮殿の元に来て早一月。……桃香殿達が来てからの一月は怒涛の一月だった。……しかし、内容は割愛する。
 ……傭兵契約を白蓮殿と交わしてから三月が経ち、契機を満了したオレは、旅に出ることを白蓮殿に告げ、今までの働き分の報酬を払ってもらった。

 ……そして出立の時。……白蓮殿と桃香殿、愛紗、鈴々、星、北郷が見送りに来てくれた。


『……白蓮殿、世話になった』
「ああ、達者でな飛鳥。お前がいてくれて助かったよ。賊討伐とか兵の調練とか」
「また会いましょうね♪ 飛鳥さん」
『……ん。……また近くに寄ったら顔出す。……それと桃香殿、余り政務をサボらないようにね?』
「うぅ~、分ってるよ~」


 ……ほんとに分ってるなら良いんだが。


「飛鳥よ。私は絶対にお前より強くなってみせるぞ」
「鈴々も次は負けないのだ!」
『……そう。……頑張れ。……愛紗達ならさらに強くなれる』


 ……愛紗も鈴々も強くなる。……鍛錬をサボらなければ、な。


「また共に酒を酌み交わそうぞ」
「飛鳥の持ってくる酒は飲みやすいからな」
『……ん、わかった。……と、云うより北郷、飲むのはいい。……けど、北郷も政務をサボらないようにね?』
「う、分ってるよ」


 ……愛紗達は苦労しそう。……主に政務の面で。…………愛紗()じゃなくて愛紗一人(・・)かな?


『……まだまだ賊は出て来ると思う。……けど、大丈夫だと思う。……又、いつか』


 ……オレは会釈をしてそのまま去っていった。


 Side:END








――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――








 飛鳥が旅に出てから二週間ほど経ち、飛鳥は森の中を移動していた。ただ、一人ではない。


「頑張れ飛鳥!! まだ見ぬ苦しいんでいるであろう患者を救うために!!」


 飛鳥の隣を歩きながらやたらと熱い声で話しかけてくる赤髪の男。名を華陀。真名を水虎(シェイフー)


〈………………〉


 同じく隣を歩き、静かについてくる銀色の巨大な狼。名を的盧。


 何故、飛鳥が森の中を華陀と的盧と共に歩いているか。
 理由は簡単。 的盧は飛鳥がこの大陸に降り立ってから数日後、何処かの森にて的盧が飛鳥に懐いたからだ。因みに、公孫瓚に雇われていた時は幽州内の森に身を隠しており、契機満了で旅立ってから合流したのだ。
 大きさは、もののけ姫に出てくる“モロの君”並。一日ノンストップで三千里を走り抜けてもへっちゃらと言う強靭な肉体を持っている。


 水虎は昨日、荒野にて賊と戦っている所に遭遇。知己であった為加勢して追い払って話すと水虎は病人を探して無償で治療する旅をしていたらしい、そして「行く宛てが無いなら薬の材料集めを手伝ってくれないか? 少々入手が困難な材料があるんだ」と申し出た。そして飛鳥はその申し出を、『五斗米道(ゴットヴェイドォー)の者達には世話になった事がある。何より知己の頼みを聞くのは吝かではない』と快諾し、共に旅をしている。


『……水虎』
「うん? どうした?」
『……探してる薬の材料、まだ聞いてない』
「ああ、言ってなかったか。この近くの樹海に大きさ約一丈(3mくらい)の大虎がいてな。そいつの睾丸と、南蛮に住む龍の玉だ」
『……龍の玉? それなら確か持ってる』
「何!? ホントか!?」


 ――――ガシィ!! と聞こえるくらいの勢いで飛鳥の肩を掴む水虎。


『……水虎、少し落ち着く』
「あ、ああ、すまない。しかしどうやって手に入れたんだ?」
『……南蛮に居た時、襲われたから返り討ち。……特に使い道ない、必要ならあげる』
「ホントか!? 助かったぞ!」








――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――








~~虎の居る樹海~~


『……ここか?』
「ああ」


 暫く歩いて、目的の森に辿り着いた一行。


 ――――バキバキバキ!!!


 一行が森に入ろうとしたら、木々を薙ぎ倒しながら巨大な白虎が現れた。その大きさたるや、約三丈。話に出ていた虎の大きさの三倍以上である。


『・・・・・・・・・・・・・・・』
〈・・・・・・・・・・・・・・・〉
「・・・・・・・・・・・・・・・」


 飛鳥と水虎とギンコは虎の大きさを見て呆然としていた。


『……水虎』
「………何だ?」
『……大きさってどれ位って言ったっけ?』
「………約一丈(3mくらい)だ」
『……どうみても三丈(9mくらい)は軽くある』


 先にも記したように、虎の大きさが聞いたものの三倍は軽くあるのだ。驚かない方か変であろう。


『……水虎、下がってろ。……多分、水虎じゃ無理』
「うむ、そうさせてもらう」


 水虎は飛鳥の言に素直に了承し、離れる。


『……的盧、お前も下がってて』
〈大丈夫なのか?〉
『……ん。……危なくなったら、手伝って』
〈わかった〉


 的盧も渋々だが了承し、飛鳥の後方に下がった。


 ――グルルルルルルルル。ガァァァァァァァァァァ!


 獲物を見つけた喜びか、侵入者を発見した怒りか、どちらとも取れぬ雄叫びを上げ、虎が飛鳥に向かって飛び掛る――――――

『……無駄』

 ――――――が、飛鳥はそれをジャンプで難なく避け、苦無を幾つか取り出して投げつける。


 ――――グルァァァァァァ!!


 しかし虎は苦無を咆吼で全て弾き飛ばした!

 咆哮を至近距離で聴いた飛鳥は不快そうなオーラを纏い、右拳に氣を集中させる。


 そして。


『……やかましっ』


 ――――ズドンッ!!




 ――――ドゴッシャァァァァ




 そう呟いて、飛鳥は虎の額を全力で(・・・)殴った。

 するとどうだろう。殴られた途端に虎の顔の上部が柘榴の様に破裂、下部が地にめり込み、前足はズタボロ。白い体躯は己の血でアートを描いていた。


『……無知故に野生を忘れ、敵の力量も感知出来ない生物が勝てると思うな』


 その後、水虎は巨虎から睾丸を摘出し、毛皮を剥ぎ取った。


 後に残ったのは巨大な虎の骨のみだった。


 
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