ソードアート・オンライン ~白の剣士~
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番外編
リュミエール初代領主選定戦①
ALO内のアルンにて今日、あるイベントが行われていた。
アルン内に設けられたコロシアム、そこでイベントは開かれており、入り口に掲げられた垂れ幕にはこう書かれていた。
“リュミエール初代領主選定戦”と───
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「しっかし、随分と集まったもんだな・・・」
「そうだね~、エントリーしたのは300人くらいらしいよ」
「マジかよ・・・」
シオンとエリーシャは現在、選定戦にエントリーしているプレイヤーたちが待機している集会場の様なところに来ていた。
周りには男女問わず、腕に自信のあるプレイヤーが集結していた。
ちなみに、今回の選定戦におけるエントリーの条件は次のようになっている。
1,種族が《リュミエール》であること
2,自分の腕に自信のある者
そして最後に“未来を統べる覚悟がある者”と書いてあった。
「これ考えたの一体誰だよ・・・」
「たぶんクリスハイトでしょーね・・・」
クリスハイトとはシオンたちがSAOに閉じ込められていた時対策チーム、通信ネットワーク内仮想空間管理課、通称《仮想課》として活動していた菊岡誠二郎のALOでのアバターネームである。
この男はシオンがALOで戦いを終えてから訪ねてきて、今回の選定戦の参加を提案、企画した張本人である。
「やあ、シオン君!」
「クリスハイト、お前はこんなところにいていいのか?」
シオンは皮肉った顔で言うが、クリスハイトはそんなのを気にせずさらっと答える。
「僕はあくまで、企画した側だからね。進行は他に任せてある」
「そうかよ。で、なんのようだ?」
「おいおい、労いの言葉をかけにきたのにそれはないんじゃないかい?」
クリスハイトの言葉にシオンはジト目で答える。
「いらねーよ、んなもん。今回の選定戦のルールを教えてくれるなら考えなくはないがな・・・」
「君という人は・・・。まあでも、頑張ってくれたまえ♪」
「さっさと仕事に戻れ」
クリスハイトはやれやれとため息をつきながらその場を去っていった。
「ったく・・・」
シオンは小さく舌打ちをすると気持ちを切り替える。すると場内から聞き慣れた声のアナウンスが聞こえてきた。
「えー、エントリーしたプレイヤーの皆さま、これから今回の選定戦のルールを説明したいと思います」
「この声って・・・」
「アスナ、だな・・・」
現在ウンディーネとして活動しているアスナは今回の司会進行を勤めることになっていたことは二人は知らなかったが、なんとなく二人は納得していた。
「「しっかりしてるもんな(ね)・・・」」
「今回の選定戦のルールはいたってシンプル。これからA組、B組の二組に別れてバトルロワイヤルをしてもらいます」
その後の説明によると、現在エントリーしてるプレイヤーを二組に分け、その組内でバトルロワイヤルをするものだった。
残りの人数が一組16人になったところで終了し、そこからはランダムのトーナメント戦で決めるらしい。
「つまり、まずはこの中の32人になれってことだな・・・」
「なかなか難しいね・・・」
シオンとエリーシャが心高鳴る中、組分けが表示される。
組分けはシオン、エリーシャ共にA組に振り分けられていた。
「どうやら一緒みたいだな」
「みたいだね、取り合えず最後まで残ろっか♪」
「ああ!」
シオンとエリーシャは拳を軽く合わせ、健闘を祈る。
そして───
「では、フィールドに転送します!」
司会進行のアスナの声で待機場所にいたプレイヤーたちはそれぞれフィールドに転送された。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
飛ばされたのは草木が生い茂る森林エリア、シオンは辺りを見回し、マップを確認する。
「なるほど、フィールドは円形の森林エリア。広さはチョイスと同じか、それより少し広いかだな。さて・・・」
シオンは標準装備しておいたネーヴェアルモニーを構える。
なぜこの剣がシオンのもとに残っていたのかは本人にも分からない。ただ、決戦が終わってからはじめてこちらでリュミエールとしてプレイしたとき、データがほとんど吹き飛んでいた中で唯一残っていたのがこの剣だったのだ。
「そこにいるやつ、出てこいよ」
シオンがそう言うと、茂みの中から数人のプレイヤーがのそのそと出てきた。
『どうやら、一時手を組んだ訳か・・・。まあ、正しい選択だな』
「ヘヘヘッ、まず優勝候補であるあんたから消そうと思ってな!」
「ここで消しておけば俺たちが残る確率はグンと上がるもんだ!」
「ここであんたには大人しく死んでもらうぜ!!」
そう言って一斉に飛びかかるプレイヤーたちはシオンにめがけて刃を振るう。
「そうか、ならこっちも・・・ッ!」
シオンが剣を抜く、その後は一瞬の出来事だった。
シオンが何事もなかったかのように剣を納めると、飛びかかったプレイヤーたちは───既に斬られていた。
「な、何ッ・・・!?」
「何が、起こって・・・!?」
「あんた、一体何をした・・・!?」
「何が起きたか知りたければ、その目で捉えな・・・」
「ま、まさか・・・」
シオンがしたこと、それは敵をギリギリまで引き付けた後にリュミエールの“光速”を利用し、加速して斬ったのだ。今もまだ長距離の移動は無理だが、その場で加速することはできるようになっていた。
「別に移動するために加速する必要はない、その気になれば武器だけを加速させることもできるかもな」
「グッ、さすが、だな・・・」
「いや、これじゃあまだ全盛期には及ばない。まだ力をコントロールにムラがあるからな・・・」
シオンの言葉に一人のプレイヤーは苦笑する。
「そこまでの強さがあってなお妥協せず自分を磨く、か・・・。そりゃ敵わないわけだ・・・」
そう言ってプレイヤーのHPが0になると白いリメインライトとなってフィールドから退場した。
それから数十分後シオンはすぐにエリーシャと合流した。
「あ、シオン。よかった、残ってたのね」
「そういうお前もな。どうだ、敵の方は?」
「私は合流するまでに何人かでくわして倒してきたけど、そっちは?」
「同じく、さて今はどうなっているかね・・・」
シオンはマップの端に表情されている残りの人数を確認する。
ゲーム開始から数十分の今、その数は開始時の1/3を切っていた。
「あと少しといったところか」
「そうだね、どうする?このまま人数が減るまで待つ?」
「そうだな、少し見晴らしのいいところで待つとしよう」
シオンとエリーシャは空中での奇襲を避けるため地上から移動をし、途中で遭遇したプレイヤーを倒しながら見晴らしのいい小高い丘に来た。
「ここで様子を見るか」
「うん」
シオンはスペルを唱えると、二人の姿は見えなくなった。これは光魔法の一つで光の屈折を利用し、周りからは見えないようにしているのだ。
「ねぇ、もし領主になったらどうする?」
「そうだな、考えてはいるんだが・・・」
「いるんだけど?」
「それはなってから言うよ」
「え~・・・」
シオンとエリーシャはそんな他愛もない会話を小声で交わしながら監視を続けると、突然ブザーが鳴った。
「どうやら、終わったみたいだな」
「なんとか残れたね~」
ステルス状態を解くとエリーシャは伸びをし、シオンは剣を鞘に納める。
「前のシオンだったら数秒で終わらせたのにね~」
「その場合、下手したらフィールドにいるプレイヤー全員を消すかもな」
シオンは軽く冷や汗を流しながら苦笑する。
フィールドから待機場所に転送され、そこには生き残った計32人がいた。その32人は皆、生き残っただけあり強者の雰囲気を出していた。
「さて、ここからが本番だな。おそらく先程より一筋縄ではいかないだろう」
「そうだね。シオン、決勝まで行ってよ!」
「ああ、はじめからそのつもりだ!」
『第一ステージ突破おめでとうございます。トーナメントは30分後に開催されます。それまで皆さんは自由に過ごして構いませんので、10分前になりましたら再びこの待機フィールドに集合してください』
トーナメントの開始時刻は30分後、そのためシオンとエリーシャは観戦していたキリトたちのもとへ向かった。
「おおシオン、エリーシャ、決勝トーナメント進出おめでとう!」
「おめでとう二人とも!」
「ああ、サンキュ」
「ありがとう!アスナもお疲れさま♪」
「あ~、やっぱりバレてた?」
「当たり前だ、お前の声は分かりやすいからな」
「そうかな?」
本人は気がついていないが、アスナの声はSAOの時からよく通る声だった。
そのため今回の選定戦の司会の時も二人はすぐにわかったのだ。
「まぁ、なんにせよ第一ステージは突破できたんだ。後はトーナメントを勝ち抜くだけだ」
「いや、そこまで簡単なほど甘くはないさ。気は抜けねーよ」
「そうだね、中にはかなりの強者の雰囲気を出してる人もいたし・・・」
「そっか、二人とも頑張ってね!」
「「ああ(うん)!!」」
シオンとエリーシャはキリトたちと別れると、再び待機フィールドに戻った。
丁度10分前に戻ってきて、空き時間で装備を整えていると、再びアナウンスが聞こえてきた。
『プレイヤーの皆さん、これより決勝トーナメントのルールを説明いたします。皆さんにはここ、コロシアムにてランダムによって決められた相手と一対一で戦ってもらいます』
説明によると、一対一で戦ってHPを先に2割以下にしたほうが勝利といういたってシンプルなものだった。しかし、そのトーナメントは勝ち上がるごとに毎回ランダムで相手が決められ、勝っても次の相手はランダムで決まる直前まで分からないことになっている。
「まぁ、それはそれで面白いな」
『因みに、コロシアムのフィールド内は飛行を無効とさせていただきます』
「純粋な腕の勝負ってわけね・・・」
そう、飛行を封じられた今、最後は純粋な個人の技量が求められるのだ。
こんなところを見るとやはり領主選定戦らしいルールである。
『それでは皆さん、自分の力を十二分に発揮してください!』
シオンは拳を手で打つと、ニヤリと笑った。
「久々だな、純粋な剣の勝負は・・・!」
「そうだね、久しぶりに楽しめそう・・・!」
エリーシャも微笑みながら楽しみにしていた。
「さあ、行こうか!」
「ええッ!」
コロシアムに集まった観客は開始を今か今かと待っていた。
そして───
『それでは決勝トーナメント、開幕です!!』
観客が熱狂する中、領主選定戦決勝トーナメントが開幕した───
後書き
はい!今回はリュミエール領主選定戦の第一ステージを書かせていただきました!
ただ領主をいきなり置くのは味気ないと思ったので、番外編として書かせていただきました!
次回は決勝トーナメントの模様を書ければいいなと思っております!
コメント待ってます!
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ
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