第四真祖一家が異世界から来るそうですよ?
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YES!ウサギが呼びました!
第四話 「ジン・ラッセル」
「ジン坊ちゃ―ン!新しい方を連れてきましたよ―!」
黒ウサギが元気一杯に手を振りながら一人の少年に近づく。
見た感じまだ子供。ダボダボのローブに跳ねた髪の毛が特徴的だ。
「お帰り、黒ウサギ。そちらの五人が?」
「はい、こちらの六名様が――」
ジンの言葉に固まる黒ウサギ。
そして、ゆっくりと古城達の方を振り返る。
「・・・・・・え、あれ?もう一人いませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、全身から“俺問題児!”ってオーラを放っている殿方が」
「ああ、十六夜君のこと?彼なら『ちょっと世界の果てを見てくるぜ!』と言って駆け出して行ったわ」
飛鳥の言葉に黒ウサギがウサ耳を逆立てる。
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「『止めてくれるなよ』と言われたもの」
「なら、どうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」
「『黒ウサギには言うなよ』と言われたから」
「嘘です!絶対嘘です!実は面倒くさかっただけでしょう御二人さん!」
「「うん」」
打ち合わせをしたかのような息の合い具合がいい飛鳥と耀である。
「暁さん方も、見てたなら止めて下さいよ!!」
苦笑しながら黒ウサギを見る古城に抗議をするが。
「止める間もなく飛び出して行ったのに、俺にどうしろっていうんだ?」
「そうですよね・・・・・・」
「私も行きたかったな~」
三人の言葉に、黒ウサギは前のめりに倒れる。
ジンはというと顔面蒼白になって叫ぶ。
「大変です!世界の果てにはギフトゲームのために野放しになっている幻獣がいるのに!?」
「幻獣?」
「魔獣じゃなくてか?」
「は、はい。世界の果てには強力なギフトを持った幻獣がいます、幸い魔獣はいませんが。出くわしたら最後、人間じゃ太刀打ちできません!!」
「あら、なら彼はもうゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?・・・・・・斬新?」
「冗談を言っている場合じゃありません!!」
黒ウサギは溜息を吐きつつ立ち上がる。
「・・・・・・ジン坊ちゃん。申し訳ありませんが、こちらの五名様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わかった。黒ウサギどうする?」
「問題児を捕まえに参ります。ついでに・・・・・・“箱庭の貴族”と謳われるこの黒ウサギを馬鹿にしたこと、
骨の髄まで後悔させてやります!」
その瞬間、黒ウサギの艶のある黒い髪が淡い緋色に変わった。髪を緋色に染めた黒ウサギは空中高く飛び上がり。
「一刻程で戻ります!皆さんはゆっくり箱庭ライフを御堪能ございませ!」
門柱に飛び乗り、そこから全力の跳躍で俺たちの視界から消えた。
「箱庭のウサギは随分速く飛べるのね」
「ウサギ達は箱庭の創始者の眷属ですから、力もありますし、様々なギフトに特殊な特権も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣に出くわさないかぎり大丈夫なはずです」
「へぇ~、黒ウサギって意外と凄い奴なんだな」
「なるほど・・・・・、かなり高位の獣人といことですね」
「おぉ~速いね~」
そんな姿に、関心する古城達を見ながら、飛鳥はジンに話し始める。
「取りあえず、十六夜君のことは彼女に任せて、箱庭に入りましょう。貴方がエスコートしてくださるの?」
「は、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ものですがよろしくお願いします。皆さんのお名前は?」
「久遠飛鳥よ」
「・・・春日部耀」
「暁古城だ」
「暁雪菜です」
「暁零菜だよ!」
一同はジンに一礼し、ジンに一人、一人に握手を求めた。
「それじゃあ、箱庭に入りましょう。まずは、軽い食事でもしながら話聞かせくれると嬉しいわ」
飛鳥はジンの手を取り笑顔で箱庭の外門をくくった。
「へぇ~、これが箱庭か」
箱庭の中に入りまず驚いたのは。天幕で覆われていたのに中は太陽の光が指している。
『ニャ、ニャー!ニャーニャニャニャーニニャー!(お、お嬢!外から天幕の中に入ったはずなのに、お天道様が見えとるで!)』
「・・・本当だ。外から見たときは箱庭の内側は見えなかったのに」
確かに、外からは天幕で中は見えなかったのに箱庭からは天幕が見えなく代わりに太陽は見えてる。
「箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんです。この箱庭には太陽の光が受けられない種族もいますし」
「あら、それは気になる話ね。この都市には吸血鬼でもいるのかしら?」
「はい、いますよ」
「・・・・・・そう」
「(すぐ隣にも、三人居るんだけどな)」
苦笑しながら飛鳥を見る古城達だが、飛鳥自身は本当に吸血鬼がいて驚いてる様だ。
「(しっかし、ここにも吸血鬼はいるのか・・・・でも何で太陽の光が受けられないんだ?太陽光に当たれば体が怠くなったりするが『受けられない』って程じゃないはずなんだが??)」
雪菜と零菜も同じ事を考えたのか、首を傾げている。
余談であるが、古城達の世界での吸血鬼は、日差しに弱いという点は昔話に出てくる吸血鬼と同様であるのだが、不老不死や再生能力に特化しており、日差しを浴びた程度では死亡するわけではなかったのである。
それを知らない古城達は、色々な疑問懐きながら一行“六本傷”の旗を掲げるカフェテラスに入り、そこで軽食を取ることになった。
「いらっしゃいませー。ご注文はお決まりでしょうか?」
店の奥から猫耳を生やした少女が注文を取りに来た。
「えーと、紅茶を二つと緑茶を一つ、コーヒーを三つ。
あと軽食にコレとコレと『ニャー!(ネコマンマを!)』」
「はいはーい。ティーセット六つにネコマンマですね」
「・・・・・・ん?ネコマンマなんて誰も頼んでないぞ??」
首を傾げる一同の中で春日部耀だけは信じられない物見るような眼で猫耳店員に問いただす。
「三毛猫の言葉、分かるの?」
「そりゃ、猫族ですからね。分かりますよ。それにしても、お歳の割に綺麗な毛並みの旦那さんですね。
ここは、少しサービスさせてもらいますよ」
『ニャー、ニャニャニャニャー、ニャニャ、ニャー(ねーちゃんも可愛い猫耳に鉤尻尾やな。
今度機会あったら甘噛みしにいくわ)』
「やだもー、お客さんったらお上手なんだから♪」
猫耳店員は鉤尻尾を揺らしながら店内に戻る。耀は嬉しそうに笑って三毛猫を撫でた。
「箱庭ってすごい。私以外に三毛猫の言葉が分かる人いたよ」
『ニャー二ニャー(よかったなお嬢)』
「ちょっと待って、春日部さんは猫と会話できるの?」
動揺した飛鳥に耀は頷く。
「も、もしかして、猫以外にも意思疎通は可能なんですか?」
ジンが興味深く質問してくる。
「うん。生きているなら誰とでも話はできる」
「そう、素敵ね。なら、あそこに飛び交う野鳥とも会話が?」
「うん、出来・・・・・・・・・る?ええと、鳥で会話したことがあるのは雀や鷺、不如帰ぐらいだけど
ペンギンがいけたからきっとだいじょ「ペンギン!?」・・・う、うん、水族館で知り合った。他にもイルカとも友達」
「し、しかし全ての種と会話可能なら心強いギフトですね。箱庭において幻獣との会話は大きな壁ですし」
「そうなんだ」
「一部の猫族や黒ウサギのような神仏の眷属として言語中枢を与えられていれば意思疎通は可能ですけど、幻獣達はそれそのものが独立した種の一つです。同一種か相応のギフトがなければ意思疎通は難しいと言うのが一般です。箱庭の創始者の眷属に当たる黒ウサギでも全ての種とコミュニケーションをとることはできないはずですし」
「そう・・・春日部さんと修也君は素敵なギフトを持ってるのね。羨ましいわ」
飛鳥に笑いかけられ、困ったように頭を掻く耀、対照的に、憂鬱そうな声と表情で飛鳥は呟く。
「久遠さんは・・・」
「飛鳥でいいわ」
「う、うん。飛鳥はどんな力を持っているの?」
耀の質問に更に顔を曇らせる。
「私? 私の力は・・・・・・酷いものよ。だって」
飛鳥が自分の力の話をしようとすると、余計な奴が会話に入ってきた。
「おやぁ? 誰かと思えば東区画の最底辺コミュニティ『名無し』の権兵衛”のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないのかな~?」
ジンを呼ぶ声、見ると、二メートルは超える巨体にピチピチのタキシードを着た変な男がいた。
ピチピチのタキシードを着た男は俺達の座っているテーブルの空いてる席に腰を下ろした。
そんな男が纏う血臭いに顔をしかめる古城、雪菜、零菜であった。
しばらくジンとこのタキシードを着た変な男の話を聞いて分かった事を纏めるとこうである。
1タキシードを着た変な男はここら辺の中流コミュニティの全てを支配下にしている『フォレス・ガロ』のリーダーでガルド=ガスパー。
2黒ウサギとジンのコミュニティは数年前まで東区画最大手のコミュニティだったが、箱庭で最悪の天災である『魔王』に『旗印』と『名』さらには『人材(仲間)』までも奪れた。
3箱庭で活動をするコミュニティには『旗印』と『名』が必要で、黒ウサギとジンのコミュニティにはそれがない『ノーネーム(名無し)』であり、かなりの崖っぷちで古城達を召喚して即戦力にしたかったらしい。
4ウサギ(黒ウサギの種族)は『箱庭の貴族』と呼ばれ、コミュニティにとって所持してるだけで大きな“泊”が付くのでガルドは古城達共々勧誘しにきた。
というものであった。
「(相当、崖っぷちなんだなそのコミュニティ・・・・・・そりゃ~隠したくもなるか)」
「(ですがそれは向こうの事情であって、私達を騙していいことにはなりません)」
「(それはそうだけど・・・・・・少し可哀そうじゃない?)」
古城達は隠し事の中身を知りどうしたものかと小声で話す。
「どうですか?返事は直ぐにとは言いません。コミュニティに属さずとも貴女達には箱庭で三十日間の自由が約束されます。一度、彼のコミュニティと私のコミュニティを視察して検討してからでも・・・・・・」
「結構よ。だってジン君のコミュニティで私は間に合っているもの」
「「はっ?」」
ジンとガルドの声が重なり飛鳥の顔を窺うが当人は紅茶を飲み干して耀と古城達に話を向ける。
「春日部さんと古城さん達は今の話をどう思う?」
「別に、私はどっちでもいい。私は友達を作るためにここに来たから」
「あら意外。じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら?私達って正反対だけど、意外に仲良くやっていけそうな気がするの」
「ならなら、私は友達二号に立候補!!」
恥ずかしかったのか髪を触りながら言う飛鳥に自分も仲間に入れろとばかりに零菜が声を上げる。
耀は少し考えた後、小さく笑った。
「・・・・・・うん。飛鳥も零菜もは私の知る女の子と少し違うから大丈夫かも」
『ニャニャー・・・・・・ニャニャニャニャニャ―、ニャニャ
(よかったなお嬢に友達できてワシも涙が出るぐらい嬉しいわ)』
耀と飛鳥と零菜が友達になり、三毛猫が泣きながら喜んでいる。
古城と雪菜はそんな娘を見ながら互いに笑いあう。
「失礼ですが、理由を教えてもらっても?」
ガルドが額に青筋を浮かばせながら聞いて来るが顔が引きつっているため動揺がまる分かりである。
「私、久遠飛鳥は、裕福だった家庭も、約束された将来もおおよそ人が望みうる全てを支払って箱庭に来たのよ。『小さな一区画を支配してる組織の末端に迎え入れてやる』と言われても魅力を感じないわ」
「お、お言葉ですが『黙りなさい。』
急にガルドが口を閉じ喋れなくなる。
「(へぇ~、これが飛鳥の力なのか)」
「(恐れくは、言霊に近しい能力なのだと思います)」
「(飛鳥ちゃん、かっこいい~)」
飛鳥の使った力は正確にはギフトなのだが、いまいちそこら辺の認識にズレのある古城達であった。
「貴方にはいくつか聞きたいことがあるわ。『大人しくそこに座って、私の質問に答え続けなさい』」
ガルドは椅子にひびが入るぐらいの勢いでイスに座る。
店の奥から猫耳店員が慌ててやってくる。
「お客さん!当店での揉め事は控えてください!!」
「ちょうどいいわ。猫耳の店員さんも一緒に聞いて。多分面白いことが聞けるわ」
飛鳥は悪そうな顔をして言う。
「さっきこの地域のコミュニティに『両者合意』で勝負をしたと言ってたけど・・・・・・コミュニティそのものを賭けるようなゲームはそうそうあるのかしら?そのへんはどうなの、ジン君」
「かなりのレアケースですが、やむを得ない状況なら稀にとしか・・・・・・そもそもコミュニティの存続を賭けたゲームですよ?」
「でしょうね。箱庭に来たばかりに私でも分かるくらいだもの。なら、どうして貴方はコミュニティを賭ける大勝負ができたのかしら?『教えて下さる?』」
飛鳥の命令に歯向かうように抵抗するが徐々に口が開く。
「強制させる方法は様々あるが。一番簡単なのは、相手のコミュニティの女子供を攫って脅迫し、ゲームに乗らざるを得ない状況にした」
「まぁ、そんなとこでしょう。でも、そんな方法で吸収したコミュニティが貴方に従ってくれるのかしら?」
「各コミュニティから子供を人質にとってある」
「それで?子供たちは今どこに幽閉されてるの?」
「もう殺した」
空気が凍り付く。
耀も、ジンも、店員も、そして、飛鳥も一瞬耳を疑った。驚かないのは最初からガルドに血の臭いがこびり付いていることに気ずいていた古城達くらいである。
「始めてガキ共を連れてきた日、泣き声が頭に来て思わず殺した。それ以降は自重しようと思っていたが、父が恋しい母が愛しいと泣くのでやっぱりイライラして殺した。それ以降、連れてきたガキは全部まとめてその日のうちに始末することにした。けど身内のコミュニティの仲間を殺せば組織に亀裂が入る。始末したガキの遺体は証拠が残らないように腹心の部下が食『黙れ!!』
飛鳥の言葉でガルドが黙る。
さっきよりも力を強めたためか、勢いよく閉じた。
「素晴らしいわ。ここまで絵に描いたような外道とはそうそう出会えなくてよ。流石は人外魔境の箱庭の世界といったとこかしら・・・・・・・ねぇジン君?」
飛鳥の言葉を慌ててジンが否定する。
「か、彼のような悪党は箱庭でもそうそういません」
「そう?・・・・・・ところで、今の証言でこの外道を箱庭の法で裁くことはできるかしら?」
「もちろんそれは可能です・・・・・・ですが裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえば、それまでです」
「そう・・・・・・なら仕方がないわね。」
飛鳥が指を鳴らすとソレを合図にガルドの体を縛り付けていた力が解かれた。
「この・・・・・・小娘がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ガルドの体が激変し、タキシードは弾け、体毛が黄色と黒のストライプ縞模様になった。通称、ワータイガーと呼ばれる姿である。
「テメェ、どういうつもりか知らねえが・・・・・・俺の上に誰が居るかわかってんだろうなぁ!? 箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後見人だぞ!! 俺に喧嘩を売るってことはその魔王にも喧嘩を売るってことだ!その意味が「『黙りなさい!』私の話はまだ終わってないわ」
先ほどと同様にガルドの口が閉じられる。だが、ガルドの腕が飛鳥を襲うが耀と零菜が飛鳥とガルドの間に割って入った。
「喧嘩はダメ」
「女の子に手を上げるなんて紳士失格だよ」
ガルドの手を捻り回転させ、そのまま地面に押し倒す、当のガルドは二人の少女の細腕には似合わない力に目を剝くが飛鳥だけは楽しそうに笑っていた。
「さて、ガルドさん。私は貴方の上に誰が居ようと気にしません。きっとジン君も同じでしょうね・・・・・・だって彼の最終目標は、コミュニティを潰した『打倒魔王』なんだもの」
飛鳥の言葉に驚きつつも、しっかりと決意をした目でジンは答える。
「・・・・・・はい。僕達の最終目標は、魔王を倒して僕らの誇りと仲間達を取り戻すこと。いまさらそんな脅しには屈しません」
「そういうこと。つまり貴方には破滅以外の道は残されていないのよ」
「く・・・・・・くそ・・・・・・!」
耀と零菜のせいで身動きが取れないガルドに飛鳥はさらに追い打ちをかける。
「だけどね。私は貴方のコミュニティが瓦解する程度の事では満足できないの。貴方のような外道はズタボロになって己の罪を後悔しながら罰せられるべきよ・・・・・・そこで皆に提案なのだけれど」
飛鳥の言葉にジンと猫耳店員が首をかしげる。
飛鳥は悪戯を思いつた少女のような笑みを浮かべている。
古城はそれを見て嫌な予感が止まらずにいた。
「私たちと『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の『フォレス・ガロ』存続と『ノーネーム』の誇りと魂を賭けて・・・・・・ね」
後書き
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