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魔法少女リリカルなのはStrikerS~破滅大戦~

作者: Blue
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1st
邂逅篇
  第4話『沢田綱吉』

 
前書き

『‥‥確かに覚悟はしてねー。ホントにヤバくなったら逃げ出すかも知れねー。俺は赤の他人のために命を捨てるなんて約束ができるほどリッパな人間じゃねぇからな‥‥。けど────残念なことに受けた恩を忘れてヘラヘラしてられる程‥‥クズでもねぇんだよ!』
────by黒崎一護(BLEACH)
 

 
【3人称side】

夕暮れの刻──‥‥。

「痛ってぇ‥‥ってか、さっきもこのシチュあったな」

世界が夕闇に包まれようとする中、十数分前の出来事を思い出しながら、ナツは立ち上がった。

「‥‥どこだ、ここ?」

これも数十分前とまったく同じセリフだ。

「ミッドチルダってトコか?」

ナツは自問自答で答えを導き出した。

実際、ナツが今いる場所は、エレアが作り出した《次元の境界》のような皓伯とした世界ではなく、夕日に映える深緑が幻想的な木立の中だった。

一瞬「元の世界では?」とも思ったナツだったが、木の隙間から見える空に薄らと──かなり見辛いが──月が〝2つ〟あることを見て、それは思い違いだということを知った。

恐らく、エレアが言っていた《ミッドチルダ》という世界で間違いないだろう。

‥‥エレアがミスをしていなければの話だが。

「一護のヤツは‥‥いねぇな」

ナツは辺りを見渡し、次いでニオイを嗅ぎ、言った。

ナツに限らず、〝滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)〟は皆嗅覚が優れているらしい。

その為、この近辺に一護がいないことを、ナツは視覚と嗅覚の2つの情報から知ることができた。

どうやら転移の際に別々の──それもかなり離れた──場所に降り立ったらしい。

これはたぶん──いや確実に、エレアのミスだろう。

「さァて‥‥どうすっかな‥‥?」

なるべく早めに一護とは合流した方がいいだろう。

既にこの世界に来ているというもう1人の仲間とも‥‥。

しかし、如何せん情報が無い。

この場所についても『《ミッドチルダ》という世界だろう』という大まかかつ曖昧なモノしかわからず、一護やもう1人の仲間がどこにいるのかもわからない。

エレアに訊こうにも、エレアとどう連絡を取ればいいのかさえもわからない。

どうすればいいかわからず、「う~ん」とナツが頭を捻っていると、

「ここで何をしているんですか?」

「ん?」

突然、木立の影から女性が現れ、ナツに声を掛けた。

牡丹色のショートヘアーをした、修道服のような装いの女性だった。

「いや、まあ、ちょっとな‥‥」

女性の問いに、ナツは言葉を濁す。

まさか「世界の破滅を防ぎに来ました!」などと言える訳もない。

言ったところで信じてもらえる訳もないし、最悪の場合には〝不審人物〟として拘束されてしまうかも知れない。

普段は物事を短絡的に考えるナツだが、さすがにこの状況で言うべきことか否かは弁えられる。

「そうだ! お前、ここが何処だか教えてくんねーか?」

ナツは少しでも情報を得る為と、その場を誤魔化す為に、女性に訊いた。

瞬間、女性の表情が少し険しくなる。

さすがのナツも、この雰囲気には緊張したが、

「ここはベルカ自治領の〝聖王協会〟ですが‥‥」

女性は普通に答えてくれた。

彼女の言う〝聖王教会〟とは、その名の通り〝聖王〟を主神として崇拝する、いわゆる宗教組織である。

しかし一般に蔓延るちんけなカルト集団などではなく、協会騎士団という戦力を有し、かつ多数の次元世界への影響力を持つ(れっき)とした大規模組織なのだ。

だが、

「ベルカ? せーおーきょーかい‥‥? 何だそりゃ?」

この世界に来たばかりのナツがそんなことを知っているハズもなく、女性の発した言葉をただただ復唱するだけの形になってしまう。

その様子を見ていた女性の表情が、ホンの一瞬だったが、今度は驚愕に染まった。

女性は暫く沈思黙考に耽っていたが、ふとナツの方を見て言った。

「‥‥申し訳ありませんが、ご同行願えますか?」

「ん? ああ、いいぜ」

ナツも少しばかり考えたが、これに応じることにした。

別に逃げる必要も無いし、仮に逃げたところで今度こそ〝不審人物〟として追われる羽目になるだろうからだ。

ナツとしては追われること自体は色々あって──仕事先で暴れた結果として──慣れているし怖くもないのだが、エレアとの約束もある為、自重する。

「一応、名前を伺ってもよろしいですか?」

「オレはナツ・ドラグニルだ。お前は?」

「私はシャッハ。聖王教会所属、シャッハ・ヌエラです」

「そっか! よろしくな、シャッハ!」

「あ、は、はい。よろしくお願いします‥‥?」

女性──シャッハは面食らったように答える。

初対面でしかも正体不明の人物に、まさか「よろしく」などと言われるとは思っても見なかったのだ。

当のナツも別に何かを企んでいる訳ではなく、ただ単に直感からシャッハが信用に足ると感じたが為の発言だった。

「んんっ! ではナツ・ドラグニルさん、私のあとについて来てください」

シャッハは咳払いを1つして、ナツに同行を促す。

ナツは素直にその指示を受け、彼女のあとをついて行く。

そして2人はそのまま木立を抜け、目に飛び込んできた建物──〝聖王教会〟の大聖堂へと入っていった。


◆◇◆◇◆◇◆◇


所変わって、とある建物内の一室──‥‥。

部屋の中では、その部屋の主と思しき初老の男性が椅子に座している。

コンコンッ、コンコンッ

不意に、部屋の扉が4回ノックされた。

回数を見るに、部屋の中の人物に敬意を払ってのモノである。

ノックを聞いた男性が入室を促すと、扉が開き、1人の女性が入って来た。

10代後半~20代前半の、茶髪をボブカットにした女性だった。

「お! 来たな、八神二佐」

「別に〝二佐〟はいりませんよ、ナカジマ三佐。今日はプライベートなんですから」

「じゃあ俺の方もいらねぇよ。普通に〝ゲンヤ〟って呼んでくれ」

男性と女性は、それぞれ『ゲンヤ』、『はやて』と言うらしい。

どちらも何かしらの軍職に就いているらしく、互いに〝二佐〟、〝三佐〟と階級を付けて呼ぶ。

しかし中々友好的な関係でもあるらしく、苦笑交じりに雑談を交わす。

「まぁ、立ち話もなんだ。適当に座ってくれ」

「じゃあ、失礼します」

そう言って、2人は室内で机を挟んで置かれた2つのソファに、それぞれが向かい合って腰を下ろす。

「それでゲンヤさん。なんでまた急に呼び出したりしたんですか?」

階級的にははやての方が上官に当たるのだが、一時期ゲンヤが隊長を務める部隊で研修を行ったことがあり、関係的に言えば彼女にとって彼は〝師匠〟に当たる。

縦え階級が上であっても、はやては〝師匠〟に対しての礼儀・恩義は忘れない。

話す時は常に敬語だ。

今回、はやてはゲンヤに『用件があるから』と呼ばれてここへ来たらしい。

雑談もそこそこに、彼女はそのことについて訊ねた。

「ん? ああ、実はな‥‥」

ゲンヤが口を開こうとした時、

コンコンッ、コンコンッ

再び、部屋の扉が4回ノックされる。

2人目の来訪者も、ゲンヤに対して敬意を払っているということだ。

「失礼します」

ゲンヤがはやての時と同様に入室を促すと、今度は茶髪の少年が入って来た。

少年は黒地のTシャツにオレンジのパーカー、下は草色のカーゴパンツといった服装で、一見すると中学生のような容姿をしている。

しかし、それでもどこか落ち着いた大人のような雰囲気を醸し出す、不思議な少年だった。

「この子は?」

はやては少年を一瞥すると、ゲンヤへと視線を戻し、訊ねる。

「こいつは今朝方近くの歩道で倒れてたんだが、どうやら《次元漂流者》らしくてな‥‥」

「次元漂流者?」

2人の口から出た《次元漂流者》という単語。

その言葉からもわかるように、〝次元〟を〝漂流〟する〝者〟──端的に言えばつまり、途轍もなく大きなスケールでの迷子という意味である。

「ってことは、用件ってもしかして‥‥」

「ああ。こいつを六課で面倒見てやって欲しいんだ。それに‥‥」

ゲンヤはクイッと指ではやてを呼び、その耳で囁くように言った。

「こいつからは何か〝チカラ〟を感じるんだ」

「チカラ‥‥ですか?」

「ああ。俺には魔力が無ぇから確かめる術も無ぇが、もし〝戦うチカラ〟があれば、お前の助けにもなるだろ?」

ゲンヤの耳打ちを受け、はやては暫く考えた。

そして、

「わかりました、お引き受けします」

ゲンヤからの依頼を了承した。

「悪いな」

「いえいえ」

苦笑交じりで申し訳なさそうに謝罪するゲンヤだが、はやてはそれに笑顔で返した。

はやてとしては師匠から頼ってもらえることが嬉しいらしい。

「それじゃあ君、名前教えてくれるかな?」

はやてはソファから立ち上がり、少年の方へと歩み寄った訊ねた。

「オレは『沢田綱吉』です。〝ツナ〟で結構です」

「私は『八神はやて』や。私も〝はやて〟でええよ。後、敬語も別にいらんから」

はやての言葉に、少年──ツナは少々戸惑ったような表情になる。

初対面の、しかも女性に対して、いきなりタメ口というのに気が引けたようだ。

「よろしく、ツナ君」

しかし、はやてが笑みを浮かべながら差し伸べた手を見て、

「こちらこそ、よろしくね、はやて」

優しい笑みを浮かべ、その手を取って握手を交わした。

「っ!!」

瞬間、ツナの笑みを見たはやての顔が、少しばかり赤くなった。

(な、なんて可愛らしい、純粋な笑顔なんや)

それだけでなく、心なしか表情筋が緩んでいるようにも見える。

(なんというか‥‥役得?)

そんなことをはやてが考えていると、

「はやて? どうしたの?」

ツナが覗き込むようにしてはやての顔色を窺った。

「──っ!? な、なんでもあれへんよ!」

「そう?」

はやてはバッと身を引き、ツナから離れる。

〝初対面の男の子の笑顔に見惚れていた〟なんて、口が裂けても言えない。

その態度は明らかに挙動不審だったが、ツナは特に気にはしていないようだった。

はやてはホッと胸を撫で下ろす。

しかしふと後ろを見ると、ゲンヤがなにやら不敵な笑みを浮かべ、はやてに視線を送っていた。

「そ、それじゃあし、失礼します! ほ、ほな行こか、ツナ君」

「あ、ちょ、はやて!?」

はやてはツナの手を引き、足早にゲンヤの部屋を後にした。

どうやらゲンヤの視線に耐えられなかったようだ。

「ハハハッ、あいつも〝女〟だってことか」

先ほどまでのはやての様子を思い出し、ゲンヤは1人笑っていた。



ゲンヤの部屋を後にしたはやての許に、《聖王協会》の『カリム・グラシア』という人物から連絡が入った。

なんでも、聖王協会でも次元漂流者らしき人物が保護されたのだと言う。

その連絡を受けたはやてがその場所へと向かうと、そこには確かに、それに該当する人物がいた。

ツナもその人物‥‥桜色のツンツン頭の少年──ナツ・ドラグニルを見て、理解した。

同時にナツも、持ち前の嗅覚とエレアから聞かされていた情報で理解した。

自分たちが同じ立場にある仲間であると。

そしてカリムとはやては話し合い、結果、ツナと同様にナツも六課で保護することで決着した。

「よろしくね、ナツ」

「ああ!」

2人はガッチリと握手を交わす。


◆◇◆◇◆◇◆◇


─ 機動六課 隊舎 ─

ミッドチルダ南駐屯地内A73区画──‥‥。

その場所に位置するのが、はやてが部隊長を務める《古代遺物管理部機動六課》──通称〝機動六課〟の隊舎である。

聖王協会を後にしたはやて・ナツ・ツナの3人が隊舎に着いたのは、すっかり辺りも暗くなった夜のころだった。

余談だが、六課に着いたナツは乗り物酔いでぐったりしており、ツナは苦笑しながらソレを介抱してた。

そして、ナツとツナの漂流者組は、はやての私室である部隊長室で、六課の主要メンバー──隊長陣と顔合わせをする。

「今日から六課で保護することになったツナ君とナツ君や。なんや名前がややこしいけど、よろしくしたってな!」

「沢田綱吉です。ツナって呼んでください」

「ナツ・ドラグニルだ!」

はやてが紹介し、その後2人が名乗るという形となった。

「ああ、よろしく。ライトニング分隊・副隊長、『シグナム』だ。シグナムで構わん」

対して名乗ったのは、桃色の髪をポニーテールにした女性と、

「スターズ分隊・副隊長の『ヴィータ』だ。あたしもヴィータでいいぞ」

赤い髪を三つ編みにした少女──幼女(?)──だった。

さらに、

「ザフィーラだ。よろしく頼む」

シグナムとヴィータの近くで行儀良く〝お座り〟をしていた蒼い毛並みの狼が、律儀にもお辞儀をしながら名乗った。

その光景にツナは一瞬驚いていたが、ナツはケロッとした表情で「オウ! よろしくな!」と言っている。

住んでいた世界の違いだ。

これで、今この場にいる全員の紹介が終わった。

「ホンマはまだ隊長が2人と、新人が4人と、他にも隊員が結構おるんやけど、今はこれでええわ」

はやてが言うには、残り2人の隊長が留守らしく、どうせなら全員が揃ってから紹介した方がいいだろうとのことだ。

斯く言うナツ達にも、未だこの場にいない仲間が1人いる。

「あ、はやて」

「ん? なんや? ツナくん」

「実は──」

ツナがもう1人の仲間のことを伝えようとしたその時、はやての許に、六課の部隊の1つ《ロングアーチ》から通信が入った。

「ちょっとごめんな、ツナくん」

ツナに断りを入れ、通信に応答するはやて。

「シャーリー? どないしたんや?」

はやては通信相手であるシャリオ・フィニーノ──通称シャーリーの名を呼ぶ。

《そ、それが‥‥なのはさんたちが向かった《ガジェット》の討伐任務なんですが‥‥》

「2人に何かあったんか!?」

通信内容は、今この場にいない2人の隊長であり、はやての大切な友人でもある『高町なのは』と『フェイト・(テスタロッサ)・ハラオウン』が向かった任務のことだった。

それを受けたはやては、2人に何かあったのかと思い、思わず声を荒げてシャーリーに問う。

しかし、

《い、いえ‥‥お2人には何も異常はないのですが‥‥》

「え? そ、それじゃあ、どうしたんや?」

はやての危惧しているようなことは一切無いらしい。

では一体、これは何の連絡なのかとはやては問うた。

《じ、実は、なのはさんたちは未だ現場に到着していないんですが‥‥。しょ、正体不明の人物が、数十機のガジェットと戦闘を行っているんです! それも、圧倒しているんです!》

「なんやて!?」

はやては驚愕した。

並の魔導師でさえ苦戦するガジェットを、1人で、しかも1度に数十機を相手にし、さらにそれを圧倒しているということに。

一体何者かと思い、はやてはシャーリーにその現場の映像を映すように命令する。

すると、シャーリーは手際良くコンピューターを操作し、部隊長室に空間モニターを展開した。

そこには、映っていた。

ガジェットと呼ばれる数十機の機械の群れと、それをたった1人で圧倒している、黒い着物を纏ったオレンジ頭の青年の姿が──‥‥。


─ To Be Continued ─ 
 

 
後書き

本作の主人公3人が出揃ったということで、各作品の時間軸を説明したいと思います。

BLEACH→死神代行消失篇後

FAIRY TAIL→冥府の門編後(仮)

REBORN!→原作終了から3年後

StrikerS→ホテルアグスタ前

以上の時間軸となります。

BLEACHが上記のような設定なのは、最終章後だとパワーバランスがかなり偏ってしまうからです。

FAIRY TAILが(仮)なのについては、原作でかなり重要な展開になっているため、場合によっては本作の設定も変更になる可能性があるからです。

けど基本的にはこのまま行きます。

REBON!は単純に他2人との年齢を合わせるためと、10代目としての風格を出させるためです。

以降の話で書きますが、ツナは非死ぬ気モードでも冷静な判断が下せるほど精神的成長を遂げている設定です。

なのはについては、オリジナルストーリーに入るまでは特に原作と変わりありません(多分‥‥)

ただデバイスが無口ですがね‥‥(汗)

あとなのはのみアニメ作品で設定資料(コミック等)が無いため、他3作品に比べて設定描写が荒い場合がございますが、大目に見ていただけると嬉しい‥‥です。

‥‥はい、言い訳です。

余談になりますが本文中でのとツナに対するはやての描写ですが、あれは別にニコポではありません。

心情的には「可愛らしい子を見つけた」って感じですかね。

‥‥はい、これも言い訳です。

それと、これまでは毎週日曜に更新してきましたが、これからは不定期となります。

基本的には土日辺りに更新しますが、場合によってはかなり間が空いてしまうかも知れません。

それでも更新は必ずいたしますので、何卒ご容赦ください。

本作に関する感想・指摘・意見・要望・質問等、お待ちしております。

では今回はこの辺で‥‥。


次回、第5話『集結』 
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