普通だった少年の憑依&転移転生物語
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ゼロ魔編
042 激戦の後
SIDE ヴァーリ・ルシファー
「宿命のライバルに看取られるのも存外と悪い気はしないな」
平賀 才人に完膚無きなまでに倒されて、倒された相手に己の最期を看取られた俺──ヴァーリ・ルシファーは、白と黒がマーブル状にかき混ぜられた様な空間に居た。
(この空間は…)
俺はこれと似た空間に覚えが有った。……この空間は元の世界から平賀 才人が居る世界にトばされる前に居た空間に似ている。……なら、そうだとすれば──
「……居るんだろう? 〝神〟とやら」
――『よく判ったのぅ』
「……なにか用か?」
どうやら俺の憶測は正鵠を射ていたらしく、どこからともなく鈴の音の様な──されど尊大な口調の声が応える。……俺は警戒を怠らずに、その声の主──〝神〟とやらに訊ねる。
――『そう急くでない。妾はお主にとある話──お主にとっても、益になる話を持ってきただけじゃ。贖罪の意味合いもあるし…まぁ、乗るか逸るかはお主次第じゃがの』
「……どうせ死んだ身だ。それに、する事も無いし話だけでも聞こうか」
――『端的に要件だけ言えば、ヴァーリ・ルシファー──お主には転生する権利がある』
……どうやら、より詳しく話を聴く必要が出てきたようだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
結論から言ってしまえば、俺は転生した。……どうやら俺が死んだのは〝神〟とやらが俺をハルケギニア──平賀 才人が居る世界に〝間違えて〟トばしてしまったらしく、それでその〝間違い〟の末に死んでしまった俺を転生させてくれたらしい。
「………」
<悩んで居る様だな、ヴァーリ>
「まぁな、アルビオン」
俺に話し掛けて来たのはウェルシュ・ドラゴンに殺されたはずのアルビオン。〝神〟に転生させる際に〝特典〟とやらでアルビオンの蘇生とアルビオンの〝神器〟を貰った。
俺が転生したのは俺が元居た世界に頗る似ていて、天使に悪魔や堕天使──果てには、修羅神仏が跳梁跋扈しているそんな世界だった。……平賀 才人に会う前の俺なら無事に帰れた事を安堵していただろう。
<平賀 才人の事か>
「まぁ、な」
……しかしながらも、俺の心には空虚しか無かった。……その時だった。〝彼〟に会ったのは──
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE 平賀 才人
ヴァーリとの凄まじい死闘の後、アルビオン──アルビオン大陸への損害の半分は俺の所為だったので、ウェールズに頭を下げた。……人の良いウェールズは苦笑いをしつつも許してくれた。……一応、出すモノは──賠償金は出したが…。ヴァーリのお陰(?)で人的被害が無かったのも幸いした。
後学院に帰ってユーノに会って数秒。俺の身に某かが有ったのかがソッコーバレて、〝アルビオンに【ハイスクールD×D】のヴァーリ・ルシファーが出現して、俺がそのヴァーリと戦った〟──てな感じに掻い摘まんで説明する事になった。……さすがにソッコーでバレるとは思わなかった。
何でも、ユーノ曰く…
ー3年くらいの付き合いなら判る事だけど、真人君は意外と顔に出やすいんだよねぇ。……多分、ボクだけじゃなくてシュウも見抜いたと思うよ?ー
……らしい。……げに恐ろしきは幼馴染みなのだろうか。
後はドライグや〝神器(セイクリッド・ギア)〟関連の近況か。“白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)”を相反〝していた〟、“赤龍帝の籠手に(ブーステッド・ギア)”に丸ごと取り込んだ所為で、やはりと云うべきか色々と変質した。
例を上げるとするなら──
「おいドライグ、〝右腕〟にある白い籠手は何だ?」
今俺が言った通り、〝右腕〝には肘までを覆う、白銀の──しかも装飾がところどころ翼っぽい、白銀の籠手が顕現していた。……それも〝左腕〟に顕現している“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”とは別に…だ。
「しかも、〝鎧〟は赤いままだが、〝外套〟が白くなった。……これじゃあ色的に〝翼〟がある“神ノ道化(クラウン・クラウン)”だよな。……そこんところ、どうなんだ? ドライグ」
<端的に言えば、全体的にアルビオンの力を取り込んだ所為だな。……だが、アルビオンの能力を取り込んだ赤龍帝は歴代にも居なかったからな。俺にもどうなるかは判らなかったんだ。……まぁここからは俺の推論になるが、アルビオンの〝神器〟が相棒の無意識の願望を汲み取ってその様な形になったのだろう>
「……まぁ、普通は相反する力を混ぜようとは思わないもんな。……でだ、能力の方ではどう変質したんだ?」
……確かにドライグの言う通りで、赤い色をしている“神ノ道化(クラウン・クラウン)”には違和感しかなかったが。
(……あっ、そこでイメージの近い〝白〟が割り込んだのかもしれないな)
俺の〝外套〟に関する推論はさておいて、取り敢えずドライグに頼まなければならない事がある。……だがその前に、どんな風に変質したかドライグに訊かなければならない。
<……アルビオンの神器を取り込んだからなのか、能力は〝倍加〟の回数を減らす代わりに、その分〝半減〟が使える様になった。……とは云っても、調整が完璧では無いから〝半減〟は2回までしか使えないがな>
「……ドライグ、今の最大倍加回数って何回だっけ?」
<……最大回数だけ言うなら20回。……更に、後のリバウンド等に目を瞑るなら、24回かギリギリ25回くらいまではいけるだろうな。……相棒なら判っているだろうが、推奨はしないがな>
24回…。さすがにそんなには要らない。ただの戦闘として考えるなら──
「……戦闘中に使うこと──〝禁手(バランス・ブレイカー)〟の維持を考えるなら…12回。たとえ欲張っても16回までだな。……更に〝半減〟の回数分を引くなら、10回が妥当なところか」
<だな。それが賢明だろうな>
……ここらで少し気になっていた事を訊く。
「なぁ、ドライグ。わざわざ〝半減〟の回数分〝倍加〟の回数を減らさなければならないと云う事は、もしかしてこの〝赤〟と〝白〟の双籠手はセットにでもなってるのか?」
<? ……ああ。だが馴れれば片方だけでの顕現が可能になるはずだがな>
「……だったら──そこまで変質しているなら最早〝これら〟は“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”とは言い難いな。……なら、名前を変える必要性が──新しく名前を付ける必要性が出てきたな。……そうだな、奇をてらわずに名付けるなら“赤龍皇帝の双籠手(ブーステッド・ディバイディング・ツインギア)”ってところで、〝禁手(バランス・ブレイカー)〟も──もとい、〝外套〟や〝鎧〟そのまま例に倣って、適当に当て嵌めれば良いか」
<“赤龍皇帝の双籠手(ブーステッド・ディバイディング・ツインギア)”…か。……うむ、中々悪くない名前じゃないか、相棒>
ドライグも同意してくれた。何だか、なんだかんだ言っててもわりと楽しんでいる自分が居た。
「後は…デメリットか。デメリットとかは有るか?」
<アルビオンの〝神器〟にくっ付いて来た歴代所有者達の怨念も相棒が〝喰った〟からか、別段気になるデメリットは特に無いな。……強いて言うならさっき言った通り、〝倍加〟の回数が〝半減〟の回数分減るくらいの事だ。それと、これもさっき軽く触れた事の補足になると思うが、調整が終わり次第〝半減〟の回数は増えていくぞ>
ドライグも言った通り、“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”に居た歴代所有者達の怨念同様、“白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)”にくっ付いて来た怨念を〝処理〟済みである。……何が出来るようになったかは追々と語るべき時が来たら──だ。
「そうか、じゃあ──」
そんなこんなで、ドライグと滅茶苦茶──それこそ日をまたぐまで話し明かした所為で、寝不足気味になったのは至極どうでも良い蛇足である。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ふっ…! ふっ…! ふっ…!」
ある日森の中、幾分か拓けた場所。残身を心がけつつ、一振り…一振りと、出来るだけ丁寧に〝槍〟を振るう。……何故剣ではなく槍を振っているかと云うと、〝剣〟の才にこれ以上の展望が見えなくなったからだ。……そこで趣向を変えて槍を振るっているという事だ。
「……下手すれば、剣より馴染むな」
そう、トリスタニアの武器屋に叩き売りしてあった何の変哲も無い槍を持っただけなのに、槍が手に引っ付いてきと錯覚するほどにフィットした。
(メインを槍にするべきか…。はたまたその逆にするか…。……ん?)
ふと、べとり、とへばり付く様な──絡み付く様な視線を感じた。……だが、今は生憎と場所が場所ならうらぶれた女が藁人形などを持ち寄って参りに来る時間帯だ。……なので、梟でもないので月光があるとは云え、その光量は申し訳程度なのでよく見えない。……辛うじて見えるのは、ざわめいている木々くらいなものか。
(……生命的な反応は無い)
仙術や〝見聞色〟で探ってみるも、生命反応は無い。……夜の森の中──そんな〝いかにも〟なロケーションも相俟ってか、現在の不気味さに拍車を掛けている。
視線があるのに、生命反応は無い。……以上の事から考えられるのは、サーチャーや専用のマジック・アイテム等の線が濃厚。
「部屋に戻るか…」
ちやほやされるのはわりと好きだが、観察──ないしは監視されるのが嬉しいとか、そんな奇特な趣味なんて俺には無いので部屋に戻る事に。……次からの鍛練は人間の居ない〝別世界〟にする事に決めて…。
SIDE END
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