銀河英雄伝説〜門閥貴族・・・だが貧乏!
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第19話 フレーゲル混乱する
前書き
お待たせしました。今だ宴から抜け出せません。
ラミディアもフレーゲルも慌てまくりです。
帝国暦482年10月1日
■オーディン ブラウンシュヴァイク邸 ラミディア・フォン・ファーレンハイト
ご飯を美味しく頂いていたら、ブラウンシュヴァイク公が壇上に立った。
「皆、暫し儂の話を聞いて貰いたい」
その言葉に談笑していた人々が一斉に壇上のブラウンシュヴァイク公爵を見るから、私も招待されている以上は見ないと失礼にあたるし見ないとですよね。
「今宵は、皆が集まってくれて嬉しく思う。さて今宵の宴の趣旨を教えなんだが、今より話す事を良く聞いて貰いたい」
何を言うのか、原作潰したから全く思いつかないや、クロプシュトック侯とかの事件も違うし、ましてやココア閣下やラインハルトが居るわけでもないから、リッテンハイム侯に対抗して、貴族の連携を高めるとかぐらいかな。
「我が家に新しき家族が増えることと成った」
へー、あのオッさんアマーリエ様が怖いから浮気は出来ないだろうから、きっとアマーリエ夫人が妊娠したんだな、此処まで原作が壊れているとは、最早銀英伝じゃないかも。ヤンがどうなって居るのか知りたいよ、案外エル・ファシルで捕虜になってたりして。そうだ同盟軍のこと殆ど調べて無いや、帰ったら伝手を使って同盟軍の事を調べてみよう。
「儂に妹がいる事が判ったのだ」
ありゃ、公爵の子供じゃなくて、前公爵の隠し子か、やっぱ貴族様には居るんだ、家には関係無いけど。
「公爵、妹御と言いますと、エーリッヒ様のお子様ですか?」
アンスバッハさんも、渋い声で合いの手打つように質問しているな、あれ絶対仕込んでるよ。フェルナー辺りが嬉々として台本書いて演技指導してそう。それにしても、ブランシュヴァイク公爵の姉妹なんて原作にもOVAにも出てこないから、まあ話に入るようなキャラじゃ無かったんだろう。
「そうだ、父上の三女と言う事に成る」
「おお、それはおめでとう御座います。してその御方は?」
「うむ、その子は、ラミディア・フォン・ファーレンハイトと今は名乗っているが、間違いなき我が妹だ」
一寸待て!!ブランシュヴァイク公は何と言った????聞き間違えだよね。
ラミディア・フォン・ファーレンハイトって言ったような気がするが、そんな事はない、絶対に無いはずだ!って言ってる側から、シュトライトさん何故ここに来る?そして何故そんなに丁重なお辞儀をしてくるんですか????
「ラミディアお嬢様、公爵がお待ちです、壇上までお越し下さい」
まて、シュトライト中将、何を言っている、違う中将じゃない!!落ち着け落ち着くんだ、まずは深呼吸を、ヒッツ・ヒッツ・フーってラマーズ法じゃないか!聞き違えだ、シュトライトさんに再度確認だ、ホウレンソウが大事って違う!!!
「シュトライト大佐、つかぬ事をお伺いしますが、公爵様が私にいったいどの様なご用件ですか?」
さああ、シュトライト大佐、悪戯者フェルナーのドッキリだと言ってくれ!!
「御聞こえに為らなかったのであれば、今一度お伝え致しますが、ラミディア様がブランシュヴァイク公爵家の第3公女であることは間違いない事実で御座います。公爵様もお待ちで御座いますので、お願い致します」
ウギャー、なして、なして、私がブランシュヴァイク公爵家の子供なんですか????私はファーレンハイト家の子供でしょうに、橋の下から拾ってきたんですか?貧乏男爵が子供拾うわけが無いじゃないですか、それともお母様が浮気して出来たとか、それだったら家族不和だ!!!
「御混乱なさっているのは重々承知で御座いますが、今日の宴の目的はラミディア様のお披露目で御座います」
「えーーーーー!!」
そのまま、シュトライトさんに連れられて、壇上へ行くはめに為りました。何が何やらさっぱりだ!!
帝国暦482年10月1日
■オーディン ブラウンシュヴァイク邸 ヨアヒム・フォン・フレーゲル
ラミディア・フォン・ファーレンハイト、確かに伯父上はそう言った。あの小娘が、伯父上の妹だと。お爺様の娘で、伯父上の妹と言う事は、母上の妹と言う事にも成る。つまりは、叔母上と言う事に成るのではないか!
伯父上のお戯れ言ではないことは、此ほどの人を集めた宴で、しかもアマーリエ様、エリザベートも参加しているのだ、その上伯父上自らが満面の笑みで叔母上の名前をお呼びになり、妹であると宣言した事でも判る事だ。此は伯父上はおろか、アマーリエ様もまた、叔母上の存在をお認めに成られた証拠、それに自分は伯父上とは幼き頃よりの仲、伯父上の儀式の際の作り笑顔と違い、今の笑顔は心から喜んでいる笑顔だと判る。
つまりは、ラミディア・フォン・ファーレンハイトがブランシュヴァイク公爵家へ迎え入れられることは、皇帝陛下すらご存じの可能性が高い、どうしたら良いのだ。その上、こんな大勢の中でのカミングアウトだ、つまりは、ラミディア・フォン・ファーレンハイトという存在が、ブラウンシュヴァイク公爵家にとって、非常に重要な存在で有る証拠だ。
もしかしたら、リッテンハイムが後見しているグリューネワルト伯爵夫人の対抗馬として皇帝陛下の後宮に入内する為に呼び戻したのかも知れない。不味い不味すぎる!このままあの小娘、いや娘、いやいや、叔母上をコルプトなんぞが襲いでもしたら、伯父上どころか、お爺様も怒髪天で怒りまくるはず、さらには皇帝陛下の御不興を得る可能性も。
あわわわ、コルプトは馬鹿だから、真っ正直に襲うかも知れない、不味い不味い!!
どうしよう、どうしよう、自分でも冷や汗が流れ始めるのがよく判る。このまま叔母上が傷物にでも成ったら、コルプト自身どころか、コルプト子爵領も間違いなく、伯父上の私兵軍により銀河から消え去りかねん。それなら別に構わんのだが、更に伯父上の事だ、アンスバッハ達に命じて、背後関係を探るに違いない、そうなれば自分が示唆した事が、ばれる可能性が、あわわわ、不味い、このままでは、伯父上とお爺様に殺されかねん。どうしたら良いんだ!
全財産持ってフェザーンへ逃げるか、いや、それは、銀河帝国開闢以来の続くフレーゲル男爵家当主としての誇りが許さない。此処は抜け出して、コルプトに連絡し作戦中止を命じるしかない、いや、それを自分が言ったら、叔母上襲撃計画の立案者として、此も又、伯父上に殺されかねん。
うがー、どうしたら良いのだ。名誉ある死なら望むところだが、阿呆の巻き沿いの犬死には御免だ!
「ヨアヒム、ヨアヒム」
なんだ、自分は考えているんだ、それに名前を気安く呼ぶなど失敬な。
「ヨアヒム、どうしたのです?」
今度は肩を揺すられた、五月蠅い奴だ。いったい何処の誰だ!
「ヨアヒム、お兄様の所へ挨拶に行くわよ」
「は、ははは母上」
其処には我が母、ヘンリエッテ・フォン・フレーゲルの姿が有った。
「どうしたのです。ヨアヒム、青くなったり、顰めっ面をしたり、ブツブツと独り言を言って、我が妹が増えたのです、喜ばしいことなのですよ。早くお父様と、お兄様の所へ行きますよ」
「母上、いやその、少々気分が優れません、飲み過ぎたようで」
此処で、伯父上の所へ行くのは不味い不味すぎる。此処は、別室へ下がらせて貰い、対応策を考えなければ。
「何を言っているのですか!ブランシュヴァイク公爵家に、新たな家族が増えるのですよ。ましてや男児である、貴方が顔を出さない事には示しが付かないでしょう!」
母上が、怒り出した。普段は大人しい母上だが、家族の事となると、人が変わる。やはりご自分も妾の子という事も有るだろうな。我が母ヘンリエッテはお爺様が年若い行儀御見習いに来ていた男爵家令嬢に手を出して生ませた子だ。従兄弟のシャイド男爵の母上と双子であった。そのせいか、母上達は幼い頃は隠されて育てられたそうだ、その後それぞれ、下げ渡されるように一男爵家に嫁がされた。本来であれば、公爵家令嬢の婚姻先は皇室、高位貴族になるのに、そうでなければ、公爵家令嬢が男爵家に嫁ぐはずが無いではないか。
「母上、ラミディア殿の事ですが、如何様にお考えで」
「あら、ヨアヒムは、気になるのかしら?凄く可愛い子ね、でも叔母さんに欲情したら駄目ですよ」
「母上、そう言う事では無く、いきなりの妹が出来たことに驚かないんですかと言う事です」
「父上ならあり得ると思っていたから、別に驚かないわ」
駄目だ、逃げ道が見つからん。このままでは本当に命の危険が、死刑台に登る囚人の感情とはこの様な物なのかと考えなければならないとは、大神オーディンよ助けてくれ!!ロキでもいいから、助けてくれ!!
帝国暦482年10月1日
■オーディン ブラウンシュヴァイク邸
ラミディアが壇上に上がると、ブランシュヴァイク公が、目に涙を浮かべながら、抱きしめてきた。
「ラミディア、我が妹よ、苦労かけたな。今日からは我がブランシュヴァイク公爵家一門がラミディアの味方だ、本当に嬉しいぞ」
大げさに見えるが、その言葉に嘘偽りのない様にラミディアが感じる程である。
「ラミディアさん、アマーリエですわ、貴方のご帰還を心よりお祝いします」
「ラミディアさん、叔母さんって呼ばないとですね」
アマーリエ、エリザベートも満面の笑みでラミディアを迎え入れる。
更に、前ブランシュヴァイク公エーリッヒも現れ、ラミディアに話しかける。
「ラミディア、我が娘よ、すまんかった。お前とお前の母クラーラを捨てた、儂を許してくれ」
前公爵が頭を下げる姿を多くの参加者が驚きを持って見ている。そして悟った、ラミディアは嘸や身分の高い人物へ嫁ぐのではないかと、そうでなければ、門閥貴族筆頭とも言えるブランシュヴァイク公爵家が、一庶子の為に此ほどの宴をするわけがないと。
早速彼方此方で、ラミディア嬢の嫁ぎ先は何処に為るのであろうかと、ヒソヒソ話が始まっていた。
それを聞きながら、フレーゲルは従兄弟であるシャイド男爵と共に青い顔をしながら震えていた。2人は母親が双子と言うだけでなく、シャイド男爵の両親が早くになくなり、フレーゲルの母が育ててきた事も有り非常に仲の良い従兄弟であった。
「フレーゲル男爵、不味い、あのことが明るみに出たら、身の破滅ですぞ」
フレーゲル男爵は必要以上に怯えるシャイド男爵を見ながら、平常心を保とうとワイングラスを持つが、小刻みに震えてワインが波打っている。
「直ぐに、あの馬鹿《コルプト》を止める様にすれば、大丈夫だ」
「本当でしょうか?」
「大丈夫だ・・・・・と思いたいが・・・・・」
「連絡は付けたのですか?」
「いや、抜け出せなくて・・・・・」
絶望感が2人に重くのしかかる。
「いっそ、我々が、叔母上を護衛して家に送り届けると言うのは如何ですか?」
シャイド男爵の言葉に光明が見えたフレーゲルは大いに喜び始める。
「それだ、シャイド男爵、素晴らしい考えだ。此で我々は救われる」
「しかし、我々が今までしてきた言動で、叔母上が警戒するかも知れないのが心配です」
「そうか、それがあるか」
フレーゲル達のしてきた事を考えれば、ラミディアが警戒する事の方が大きいことで、又暗雲が立ちこめ始める。
「しかし、実際に色々してきたのは、フレーゲル男爵ですから、私なら大丈夫かもしれません」
シャイド男爵が、全ての悪行をフレーゲルに背負って貰おうという感じで話し始める。
「それは、不公平と言うもので有ろう、我らは同じだ、此処は、潔く叔母上に今までの非礼を侘びで許していただこう」
「ヨアヒム、ハーラルトも居たのね、ご挨拶に上がるわよ」
フレーゲルの母の声で、我に帰った二人は意を決して壇上へと上がって行った。
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