戦国異伝
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第百七十七話 安土城その五
「願うのはな」
「天下」
「その泰平ですか」
「政でも護るが」
それと共にというのだ。
「神仏の力でもな」
「国を護られますか」
「そうした考えじゃ」
こう家臣達に言ってみせた。
「この城についてはな」
「護国とは」
「そこまで考えておられるとは」
「そして、ですか」
「政でも」
「山城は守るにはよい」
山だからである。
「しかし動きにくく政はしにくいな」
「はい、それは平城の方がよいです」
「政を執るのなら」
だから平城も多くなっている、政は第一だからだ。
「そしてこの安土城は」
「山にありますが」
「そうじゃ、山にあるがな」
そうした意味で山城だ、しかしなのだ。
「それでいてな」
「平城も入っていますな」
「あの城のものも」
「そうじゃ、両方を入れたのじゃ」
この安土城には、というのだ。
「安土山に築きながらな」
「城は高い方が守りやすうございますな」
ここでだ、言ったのは加藤清正だった。
「左様ですな」
「そうじゃ、しかしな」
「高い城は政には困るところがあります」
「わしが今言った通りな」
「行き来に不便であるが故」
敵が攻めにくいということはそのままこちらの行き来が難しいということになる、それに山城は山深くにある場合が多い、これでは政を執りにくい。守るに易くとも。
「そうなります」
「平城は行き来がしやすいので政はしやすいです」
今度言ってきたのは藤堂だった、加藤と同じく確かな声で語る。
「また場所も都や奈良もそうでしたが」
「平地にあるだけにな」
「はい、人を送り迎えやすく」
「政には平城じゃ」
「しかし守るとなると」
今度はその人の行き来のしやすさが問題になるのだ、そのまま敵が攻め入りやすくなるからである。山城にも平城にもそれぞれ厄介なものがあるのだ。
しかしだ、この安土城はというと。
「山にありますが行き来しやすい」
「人は行き来しやすく守りやすい」
「そうした城ですな」
「この城は」
「そうした城を考えたのじゃ」
信長は加藤と藤堂にも述べた。
「安土城はな」
「ではこの城の名は」
羽柴が問うた、山城と平城の利点を併せ持ったこの城の名を。
「何というのでしょうか」
「平山城じゃな」
それになるとだ、信長は答えた。
「この城は」
「平山城ですか」
「うむ、山にあるが平城のよさも持っておるからな」
「確かに。守りやすいうえに政も執りやすいですな」
「岐阜はそこが厄介じゃった」
山城だ、その為行き来はしにくかったのだ。
「しかしこの城は違う」
「行き来もしやすく」
「守りもいい」
「敵兵もですな」
「かなり来ても恐るkとはありませんな」
「そうじゃ、この城は違う」
まさにとだ、信長は誇っている笑顔で言い切ってみせた。
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