美しき異形達
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第二十一話 菖蒲の友人その八
「化学部は合ってるな」
「そうよね」
「とにかく先輩も忙しいんだな」
「それで今もね」
「生徒会の仕事でか」
「おられないの」
そうした事情でだというのだ。
「また今度よ」
「そうか、また先輩にお話聞くか」
薊はあらためて言った。
「まあ聞きたいことは今はな」
「ないのね」
「やっぱりあたし達の相手のことを聞きたいけれどさ」
「すぐにわかることではないわ」
「ああ、絶対にな」
薊もこのことはわかっていた、それもよく。
「錬金術とかの話も出てたしな」
「そうしたことはね」
「簡単にわかる筈ないさ」
確信を以てだ、薊は言い切った。
「当分かかるな、というかな」
「というか?」
「先輩も高校生だしさ」
一介のだ、だからだというのだ。
「やっぱり調べられることもさ」
「限度があるわね」
「探偵さんでもない限りな」
薊はここで菊を見た、そのうえでの言葉だった。
「調べられることにも限度があるさ」
「うちでもそんなね」
その菊が答えた。
「あんな連中を出せる組織とかを調べるとなると」
「難しいよな、やっぱり」
「命の危険があるわよね」
「怪人だからな、相手は」
「そうした相手の調査はやっぱり慎重にするし」
「時間もかかるか」
「ペットを探したり浮気調査をするよりもね」
そうした探偵本来の仕事よりも遥かに、というのだ。
「というかうちそうした危ない仕事はね」
「引き受けないさ」
「組織とかなんて」
それこそ、というのだ。
「ヤクザ屋さんでも調べてくれって言われたら」
「断るか」
「まだ日本のヤクザ屋さんならいいけれど」
「外国の系列はか」
「マフィアとかになるとね」
シチリアや中国にルーツがある面々だ、彼等は尋常ではない。
「あと麻薬の密売組織とか」
「ちょっとでも調べようとしたらな」
「冗談抜きに消されるから」
だからだというのだ。
「そんな依頼はまずね」
「普通の探偵さんだとか」
「受けないわよ、うちは確かに忍者だけれど」
それでもだというのだ。
「裏の仕事はしないから」
「錬金術とかそうした話があるしな」
「普通の探偵さんは受けないわよ」
「だから先輩もか」
「調べてくれるだけでもね」
それだけでもというのだ。
「凄いわよ」
「だよな、考えてみたら」
「とにかくね」
「先輩の方はか」
「かなり時間がかかるわ」
怪人を送って来ている相手がどうした存在ということをだというのだ。
「だからね」
「待とうか」
「そうしましょう」
「だよな、しかし先輩ってな」
「先輩がどうかしたの?」
「いや、やっぱり頼りになるよ」
こう言うのだった、あらためて。
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