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ドリトル先生と伊予のカワウソ

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第八幕その七

 それだけでなくです、先生は長老さんに尋ねました。
「もう一杯宜しいでしょうか」
「勿論ですじゃ」
 長老さんもこう応えてでした。
 先生にたぬきそばをもう一杯食べてもらうのでした。こうして先生は天ぷらそばだけでなくたぬきそばも楽しみました。
 その後で今度はカワウソさん達のお屋敷に向かいます、ですが。
 その道中のバスの中で、です。先生は加藤さんに尋ねました。
「あの、たぬきそばですが」
「ご馳走になったあのお蕎麦ですか」
「はい、揚げが入っていましたね」
 薄揚げが、です。
「あれがたぬきそばですね」
「そうです、西ではそうです」
「西日本ではですね」
「そうです、あれがたぬきそばです」
 油揚げを入れたそれが、というのです。
「うどんに入れますと」
「きつねうどんですね」
「それがきつねうどんとたぬきそばです」
「つまり揚げが入ったおうどんがきつねうどんで」
「揚げが入ったお蕎麦がたぬきそばです」
「そうなのですね」
「はい、ただそれは西のお話でして」
 西日本の、というのです。
「東ではまた違います」
「そうなのですか」
「西ではたぬきうどんはありません」
 加藤さんはこの前提からお話しました。
「何故なら揚げで決まるからです」
「今お話された通りですね」
「はい、そうです」
 まさにというのです。
「ですが関東、東ではです」
「どうなのでしょうか、あちらのたぬきそばは」
「天かすです」
 加藤さんはこれをお話に出しました。
「天かすを入れて、です」
「そうしてですか」
「はい、それをたぬきそばと言い」
 天かすを入れたお蕎麦がたぬきそばというというのです、東の方では。
「天かすを入れたおうどんもたぬきうどんといいます」
「関東ではたぬきうどんもあるのですね」
「そうなのです、あちらでは」
「そうですか、僕は神戸にいますので」
 言うまでもなく西の方です、だからだというのです。
「そのことは知りませんでした」
「関西では普通に立ち食い蕎麦屋さんに天かすが置いていますね」
「はい」
 このことは先生も知っています、神戸でも大阪でも立ち食い蕎麦屋に入ったことがあるからです。
「立ち食い蕎麦も好きですが」
「そこで御覧になられましたね」
「それで、です」
 知ったのです、先生も。
「天かすが置いてあってそれを入れますと」
「おうどんもお蕎麦も美味しくなりますね」
「かなり、僕も好きです」
「天かすは関西では非常によく使います」
「お好み焼き屋さんやたこ焼き屋さんで」
「ああいった粉ものには欠かせません」
 それが天かすです。
「焼きそばにも入れます」
「入れると味が違いますね」
「格段に上がるので」
「だから皆天かすを使うのですね」
「そうです、たかが天かすですが」
 それでもというのです。
「されど天かすです」
「大きなものですね」
「極めて、そういった食べものの名脇役です」
 それこそが天かすだというのです。 
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