FAIRY TAIL 友と恋の奇跡
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第193話 幕開けと共に終焉、終焉と共に惨劇は訪れる
前書き
紺碧の海で~す♪
今回は激しくぶつかり合う大魔闘演舞、その対決の組み合わせが全て決まる!そして、ナツ達の知らない一方で、マヤに異変が起きていた―――――!?
ナレーション風に書いていきます。
それでは、第193話・・・スタート♪
チャ「熱き激戦の結果、勝ったのはグレイ!妖精の尻尾のグレイ・フルバスターだぁーーーーーっ!!」
観全「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
大歓声が沸き起こる。会場が熱気と歓喜で震えだす。
ジェ「おっしゃァァァア!」
リサ「さっすがグレイ!」
エル「漢だーーーっ!」
アル「そのまま一気に行けーーーっ!」
応援席ではジェット、リサーナ、エルフマン、アルザックの順に声を上げる。
メイ「見事でした。」
メイビスが緑色の瞳を輝かせながら満足気に頷いた。
カオ「嘘ォ!?」
キー「アンナがやられたっ!?」
映像魔水晶に映る、倒れているアンナの姿を見て、別々の場所にいるカオリとキースが驚嘆の声を上げた。その片隅に映っている、ボロボロな姿のグレイを見て、キースは小さく笑った。
キー「やっぱすごいね、妖精の尻尾。」
チャ「それではここで、最終戦の途中結果を見てみましょう。」
チャパティ・ローラの実況と共に、一際大きな映像魔水晶が現れ順位表が映し出された。
『順意表』
1位 妖精の尻尾 75
1位 銀河の旋律 75
3位 蛇姫の鱗 51
4位 海中の洞穴 35
5位 白い柳 31
6位 幸福の花 29
7位 月の涙 17
チャ「何とっ!妖精の尻尾と銀河の旋律が同点でお互い首位に立っている!」
ヤジ「これは接戦になりそうだねぇ。」
マト「どっちのギルドも頑張るカボよ~!」
チャパティ・ローラが身を乗り出しながら驚嘆の声を上げ、ヤジマが顎に手を当てながら呟き、マトー君が白い手袋をした両手を振る。
チャ「だが、有利なのは妖精の尻尾かっ!?未だに脱落者0!唯一5人健在しているーーーっ!これは強いぞーーーーーっ!!」
映像魔水晶にナツ、グレイ、エルザ、リョウ、ユモの姿が映し出された。
ヤジ「だが、銀河の旋律もまだ4人健在しておる。他のギルドも3人や2人というところが多いから、最後まで油断は禁物だよ。」
他の映像魔水晶に映る、リオンやハルト、ナデシコやセイン、ルチーアやウララの姿を見ながらヤジマが冷静に呟いた。
ト「皆さんすごいですね。」
ハ「そりゃぁ、フィオーレ一のギルドが決まる最終戦だからね。」
シャ「皆、前が見えなくなっちゃうほど熱く戦ってるのよ。」
感嘆の声を上げたトーヤの呟きに、映像魔水晶から顔を上げずにハッピーとシャルルが答えた。
ウェ「今年の大魔闘演舞は、出場ギルドが多い故に、手強い人達が大勢いるのにも拘らず、首位に立っている事だけでもすごいですよね。」
マ「そんだけナツ達が強いって事だよ。」
ル「“1位になってやる!”って言ったら、ホントになっちゃうくらいだもんね。」
ショ「しかも、未だに脱落者0。優勝しても可笑しくないくらい最強すぎるよ、皆。」
ウェンディの言葉に続いてマヤ、ルーシィ、ショールが面白可笑しそうに笑いながら言った。
フ「でも、こっからが本当の修羅場だよな。」
1人真面目な顔つきで呟いたのは人間の姿をしたフレイだった。ルーシィ達が話してる間、ずっと映像から目を離さずにバトルの様子を見守っていた。
フ「銀河の旋律はまだ4人も残っている故に、蛇姫の鱗には聖十のジュラに零帝リオン、白い柳にはギルド最強のウララが残っている。まだ何とも言えねェ状況だ。」
灼熱の炎をそのまま映したかのようなフレイの瞳には、ナツ達に対する期待と同時に、蝋燭の灯火のように不安が微かに揺らめいていた。
フ「もし、ナツ達が負」
マ「バァッカ野朗ォォオオ!」
フ「うごはっ!・・な、何しやがるマヤ!いってェじゃねーかっ!」
バシィン!とものすごい音を立ててマヤがフレイの背中を思いっきり叩いてフレイの言葉を遮った。あまりの痛さに涙目になりながらフレイはマヤを睨み付ける―――が、マヤの右手の人差し指がフレイの顔を突きつけられた。
マ「まだ何とも言えない状況なんでしょ?なら、弱音じゃなくて声援を吐けっ!」
マヤの大きなオレンジ色の瞳に、フレイのマヌケな顔が映る。
マ「相手が手強いだろうが傷だらけだろうが、ナツ達は最後まで全力全開で戦う!応援する私達も、最後まで全力全開で応援する!弱音を吐いたら、その時点ではい終了になっちゃう!フレイも私の相棒なら、妖精の尻尾の魔道士なら・・・最後まで、全力全開で仲間を応援してェ!」
マヤの声は、観客の大歓声にほとんど掻き消されてしまい、応援席にいた妖精の尻尾の魔道士達にしか聞こえなかった。
言いたい事を言い終えたマヤは「ふぅ~」と落ち着きを取り戻す為息を吐いた後、まだマヌケな顔をしたままのフレイの頭をパシ!と軽く叩いてから、
マ「一緒に応援しよ、フレイ。」
太陽のような笑顔で笑った。
さっきまでの態度との豹変っぷりに、一度フレイは目を見開いたが、すぐに照れ隠しのように頭を掻きながら、
フ「おう。」
と大きく頷いた。
ル「ていうかマヤ、少し口調がナツに似てたわよ。」
マ「え?そぉ?」
ウェ「自覚、なかったんですね・・・」
シャ「まぁ、マヤらしいっちゃマヤらしいわね。」
ハ「だねぇ。」
ルーシィの言葉に当の本人であるマヤは首を傾げ、それを見たウェンディとシャルルは呆れたように呟き、ハッピーも賛同するように呟いた。
マ「まぁまぁ、そんな事はどーでもいいから、皆頑張れーーーっ!」
さらぁっとさっきまでの会話を受け流すと、映像に向かって威勢の言い声援の声を上げた。
その時―――――、
?『――――――――――マヤ。』
マ「!?」
突如、どこからか自分の名を呼ぶ澄んだ声が聞こえマヤは咄嗟に振り返ったが、名を呼んだと思われる人物は誰もいない。
マ「(・・・なぁ~んだ、気のせいか。)」
「ただの空耳か」と自分に言い聞かせ、また応援しようとすると、
?『――――――――――マヤ。』
マ「!だ、誰!?」
再び、どこからか自分の名を呼ぶ澄んだ声が聞こえ、今度はさっきよりも早く振向いたが、やっぱり名を呼んだと思われる人物は誰もいなかった。
ト「マヤさん、どうかしたんですか?」
マ「!?」
首を傾げて問い掛けてくるトーヤの声にマヤは目を見開いた。
マ「(い・・今の声・・・聞こえて、ないの・・・・?)」
落ち着きを取り戻す為、マヤは一度大きく深呼吸をしてトーヤに問い掛けた。
マ「ね、ねぇトーヤ、今私の名前を呼んでる声が聞こえなかった?」
ト「声・・ですか?いえ、僕には何も・・・聞こえましたか?ウェンディさん、ショールさん。」
ウェ「いえ、私も聞こえませんでしたけど・・・?」
ショ「俺も何も聞いてないけど・・・?」
トーヤは答えた後、近くでその話を聞いていたウェンディとショールに問うが、ウェンディもショールも首を左右に振るばかり。
シャ「今はあちこちでたくさんの人が声を上げてるから、きっと何かの声がマヤを呼んでるように聞こえたのよ。」
ウェンディに抱かれているシャルルが言った。
マ「(・・違う・・・この会場で、あんな澄んだ声を出すはずがない・・・!それによくよく聞いてみたら、あの声・・・私の心に話し掛けてるし、聞き覚えがある・・・・どこだっけ・・・?)」
視線を下に向け、頭をフル回転させながら“声の正体”を探る。するとまた―――――、
?『――――――――――マヤ。』
聞こえた、今までよりもはっきりと。それと同時に、マヤは思い出した。
マ「(この声―――――お母さん・・・!?)」
森に捨てられていたマヤを拾い、ナツやウェンディ、ガジルを育ててくれた竜と同じ、X777年7月7日に姿を消したマヤの母親―――鳳凰の声だった。
マ「(お母さん!?お母さんなのっ!?)」
鳳凰『―――えぇ、そうよ。』
鳳凰と同じように、マヤも心の中で鳳凰と会話をする。
久しぶりに聞く母親の声は、マヤの心に優しく、温かく響く。
鳳凰『―――マヤ、よくお聞き。『極悪十祭』まで、1日をきったわ。』
マ「(『極悪十祭』?何なの、それ・・・?)」
鳳凰『―――すぐに分かる事よ。』
そこまで言うと、鳳凰の声は豹変した。
鳳凰『―――『極悪十祭』・・・・』
マ「(!・・お、お母・・さん・・・?)」
鳳凰の声は、ドス黒く、憎しみを込めたような声に変わった。目を見開いたマヤの声も、震え上がるほどに豹変していたのだ。
鳳凰『―――さぁマヤ、ゆっくり目を閉じなさい。』
マ「!?」
鳳凰の声に従うように、マヤのオレンジ色の瞳は独りでにゆっくりと閉じ始めた。無理矢理開こうとするが、瞼がどんどん重くなりマヤの瞳は完全に閉じられた。
鳳凰『―――マヤ、この会場に地下に行きなさい、そこにあるはずよ、『極悪十祭』の火蓋が・・・あなたが、『極悪十祭』の引き金になるのよ・・・!』
鳳凰の声はそこで完全に途切れた。それと同時に、ハイライトが消え失せたマヤのオレンジ色の瞳がゆっくりと開いたかと思うと、ふらふらぁ~とマヤは覚束ない足取りで歩き出した。
ル「あれ?マヤー、どこに行くのー?」
ルーシィがマヤの背中に向かって声を掛けるが、聞こえなかったかのようにマヤはルーシィの方を見向きもせずに応援席から立ち去った。
ハ「トイレにでも行ったんだと思うよ。」
フ「すぐに戻って来るはずだぜ。」
ル「それもそうね。」
ハッピーとフレイの言葉にルーシィはすぐに視線を映像に戻した。
ショ「・・・・・」
ショールだけは、マヤが立ち去った後もしばらく鮮血のように赤い瞳を動かさずにいた。
ハイライトが消え失せたマヤのオレンジ色の瞳は、どこを見ているのかさえも分からない。ただマヤは、覚束ない足取りで1歩1歩足を進める。
マ「・・地下・・・地下・・地下・・・地下・・地下・・・地下・・地下・・・地下・・地下・・・」
まるで何かに取り憑かれたように同じ、言葉を何度も繰り返し繰り返し呟きながら、マヤは向かう。
『極悪十祭』の火蓋がある、ドムス・フラウの地下へと――――――――――。
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ナデ「美花砲ッ!!」
セイ「雷杖!」
色とりどりの花が圧縮された砲丸が放たれ、セインは雷杖を振るって応戦するが、勢いのある砲丸は雷を呆気なく突き飛ばしてしまう。
セイ「そんなっ・・・!?ぐぁああぁああああっ!」
砲丸は容赦なくセインの鳩尾に直撃し戦闘不能にする。
月の涙のリーダーであるセインを倒した為、ピッと音を立てて幸福の花のポイント数に5ポイント追加され、幸福の花が5位、白い柳が6位になった。
同じ頃、別の場所では―――、
ウラ「水神の・・・荒波ッ!!」
カイ「水竜の・・・翼撃ッ!!」
水の神、ウララと水の竜、カイが激しくぶつかり合っていた。
黒い荒波が押し寄せ、青く透き通った水が押し戻しウララを攻撃する―――が、
カイ「!」
ウララが水をすごい勢いで飲み干していく。
ウラ「ふぅ~、美味しい水ですね。私は竜の水を飲む事が出来ますが、あなたは神の水を飲む事は出来ません!」
そう叫びながら、まだ驚いているカイに向かってウララは地を小さく蹴り駆け出した。両手と両足に、黒い水を纏っていく。
ウラ「滅神奥義!」
カイとの距離がわずか数十mの所で、ウララはその場でカイの頭上まで跳躍すると、
ウラ「水波落爆ッ!!」
空中で1回転しながら両手両足に纏った黒い水を雨のように、爆弾のようにカイ目掛けて降らした。
土煙が巻き上がり、カイの姿が見えなくなった。ウララは綺麗に着地すると、万が一カイが土煙の仲から飛び出して攻撃してきてもいいように身構えた。
土煙が晴れると、傷だらけでその場に倒れているカイがいた。
月の涙の副リーダーであるカイを倒した為、ピッと音を立てて白い柳のポイント数に3ポイント追加され、再び幸福の花と共に5位に並んだ。
それと同時に、月の涙は全滅(7位)。
同じ頃、別の場所では―――、
ルチ「不協和音。」
ルチーアが首から提げている無数の管の中で、1番長い管を吹くと、残酷な音色が辺りに響き渡った。
ハル「うっ・・くっ・・・!」
ハルトは両耳を塞ぐが、脳内で不協和音がガンガン響く。
ハル「こ・・こんな、ところで・・・負けてたまるかァァア!」
ルチ「!?」
7属性の武器の1つ、雷の槍を四方八方に振るいながら、ルチーアに詰め寄って行く。ルチーアもハルトの攻撃を上手く避けながら、首から提げている管の中で1番太い管を手に取った。
ルチ「これは僕が君の為に奏でる最後の演奏、鎮魂曲!」
管を口に銜え、息を吹き込んだ。
管からは静かだが、どこか寂しげな音色が響き渡った―――が、
ハル「アアアアアアアアッ!」
ルチ「何ッ!?」
ハルトは耳を塞ぐ事もなく、雷の槍をルチーアに向かって振るい続ける。
ハル「アアアアアアアアッ!」
ハルトの叫び声はどんどん大きくなり、鎮魂歌が聞こえなくなるほど大きくなる。
ルチ「まさか・・叫び声で鎮魂歌を掻き消しているのか・・・!?」
ルチーアが目を見開きながら驚嘆の声を上げたのと同時に、雷の槍の先にバチバチと電気が帯びた雷が圧縮されていく。
ハル「雷落砕!」
圧縮された雷がルチーア目掛けて放たれ、ルチーアの鳩尾に当たった瞬間砕け散り爆発した。
ルチ「ぐああぁあぁぁああああっ!」
ドサッと音を立ててルチーアはその場に倒れ込み戦闘不能。
ピッと音を立てて海中の洞穴のポイント数に1ポイント追加された。
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チャ「ここで月の涙も全滅!残るチームは後6つ!その中でも未だに5人健在中の妖精の尻尾が一番有利かーーーーーっ!?」
次々と全滅していくギルドもいる最中、5人全員が健在し続けている妖精の尻尾の勢いは一向に止まらない。逆にどんどん勢いが増していく一方だ。
ビス「す・・すごい・・・!」
ワカ「このまま俺達、2年連続で優勝できるんじゃねーか!?」
マカオ「あぁ!その可能性が高くなってきたぜっ!」
ドロ「優勝したら、優勝祝いに腹いっぱい食うぞーーーっ!」
マッ「おい・・主題がズレてねェか・・・?」
娘のアスカを抱いたビスカが小さく呟き、肩を組み合ったワカバとマカオが言い、こんな時でも食べる事しか考えていないドロイの発言にマックスがツッコミを入れた。
キナ「それで初代、次はいったいどうなるんですか?」
ラキ「もちろん、考えているんですよね?」
キナナとラキがメイビスに問い掛ける。
メイ「私の計算が正しければ―――――」
ユ「!」
イレ「白光拳ッ!」
メイ「(ユモとイレーネがぶつかります。)」
チャ「イレーネ登場ーーーーーッ!」
初代の読み通り、とある広場でユモとイレーネがぶつかった。
白い光を纏った拳を振りかざしながら襲い掛かってくるイレーネをユモは華麗にかわした。これも予め、初代に言われていた。
ロメ「確かアイツも、ユモ姉と同じ格闘技を使うんだよね?」
メイ「その通りです。」
ロメオの問いにメイビスが短く答えた。
イレ「1人でも多く倒さないと優勝出来ないから、手加減は一切しないから。」
ユ「私もする気はないよ。」
イレーネが両手に白い光を、ユモが右手と左足に冷気を纏ったその時―――、
ハル「おいイレーネ、先駆けはずるいぞ。」
ユ「!?」
イレ「ハルト!」
聞き覚えのある声にユモとイレーネは同時に振向くと、雷の槍を構えたハルトがそこにいた。
メイ「え?」
チャ「ハルト乱入ーーーーーッ!」
メイビスが素っ頓狂な声を上げ、チャパティ・ローラが叫んだ。
ユ「(初代の読みだと、ハルトはここには現れないはずなのに・・・!?)」
ユモは驚いている事をハルトとイレーネに悟られないようにしながら、心の中で驚嘆の声を上げる。
イレーネがハルトの方へ駆けて行き、ハルトの横に並んだ。
妖精の尻尾の魔道士が1人、海中の洞穴の魔道士が2人―――――。
ハル「2対1でも、相手してくれるだろ?」
イレ「でも、手加減はしないからね。」
ハルトが雷の槍を構え、イレーネが再び白い光を両手に纏いながら言った。それに応えるように、ユモは氷の双剣を造形した。
ユ「もちろん、本気で相手になってあげる。2人まとめて、かかって来て!」
エル「ユモとイレーネのはずなのに、ハルトが乱入した・・・」
ウォ「しょ、初代・・・これは・・いったい・・・?」
エルフマンとウォーレンが歯切れ悪くメイビスに問い掛ける―――が、
メイ「わ、私の計算が・・・うっ・・ひィ・・また・・あぅ・・どこで・・・な、泣いてなんかないですっ!ふぇ・・全然・・えぐっ・・泣いてなんかぁ~・・・」
マカ「誰かーーーっ!全力で初代をあやせーーーーーっ!」
レビ「ハ・・ハードル高すぎるよ・・・」
子供のように泣きじゃくるメイビスを見て慌てふためくマカロフが声を荒げ、レビィが困ったように呟いた。
ト「ま、まぁまぁ初代さん、誰にでも失敗はつきものですよ。“失敗は成功の元”って言うじゃないですか。次の読みはきっと当たりますよ。」
メイ「ぐすん・・はい・・・」
ト&メイ以外「(オォーーー!トーヤが初代を泣き止ませたーーーーー!)」
トーヤの励ましの言葉にようやくメイビスは泣き止み、それを見た一同が声にならない驚嘆の声を上げた(声には出していないが、顔に出すぎている)。
ショ「それで初代、次は誰がぶつかるんですか?」
ショールが泣き止み冷静を取り戻したメイビスに問い掛ける。
メイ「今度こそ!私の計算が正しければ、エルザとカオリがぶつかるはずです。」
高台にある広場に、エルザはいた。
エ「(初代の読み通りならば、ここに来れば銀河の旋律の・・・)」
草履を履いた足を踏み締めながら、エルザは辺りを見回したその時―――――、
エ「!」
僅かだが背後から気配を感じ、咄嗟に振り返ったエルザの視界に入ったのは着物姿の女性―――幸福の花のナデシコと、小麦色の肌をした少女―――白い柳のウララだった。
チャ「ナデシコとウララだぁーーーーーっ!」
レ「あ。」
メイ「そ・・んな・・・」
再びチャパティ・ローラが叫び、レビィが小さく声を上げ、メイビスが消え入りそうな声で呟いた。
エ「(初代の読みが外れた!?しかも、敵は2人!!?)」
当然すぎる事に驚きながらも、エルザは別空間から刀を2本取り出しナデシコとウララの攻撃から身を守った。
ナデシコが両手から色とりどりの花弁を繰り出し、エルザとウララに攻撃を仕掛ける。ウララはナデシコの攻撃をかわしながら黒い水をエルザとナデシコに向かって放つ。エルザは2人の攻撃をかわし、2本の刀を2人に振りかざすが、ナデシコは花弁で、ウララは黒い水で防いだ。
エ「(攻撃、守り、回避の1つ1つに隙が一切ない・・・!ナデシコもウララという奴も、なかんなかの強敵だな。)」
ナデ「(さ・・ささ流石は、妖精の尻尾・・さ、ささ最強の・・・おおおお女魔道士、妖精女王ののののの・・エルザ、さん・・です・・・!)」
ウラ「(噂通りの武人さんという事か、エルザ・スカーレットさん。隣のナデシコさんだったかしら?彼女も強そうだし、結構楽しめそうだわ♪)」
3人の女魔道士が再び攻撃をしようとしたその時―――――、
エ&ナデ&ウラ「!!?」
3人同時にその場から距離を取った次の瞬間、バゴォン!と音を立てて地面が爆発した。煙の中から黒い人影が見え、エルザ達の方へ歩み寄って来る。
カオ「爆発の香りを見抜くとは、お見事です。」
ローズピンク色の髪の毛をサイドアップに束ねた少女―――カオリが微笑んでいた。
チャ「カオリ乱入ーーーーーッ!」
チャパティ・ローラが叫ぶ。
カオリはキャラメル色のショルダーバッグから小瓶を取り出し、上下に軽く振りながら、
カオ「女魔同士の戦場に、私も混ぜてくれませんか?」
ト「あー・・・」
ショ「しょ・・初代、さん・・・?」
メイ「ど・・どうして・・・ひっ・・なぜ・・・うぇっ・・な、泣いてなんかないですっ!ぐすん・・全然・・・うぅ・・泣いてなんかぁ~・・・」
マカ「あやせっ!あやせっ!初代をあやせーーーーーっ!」
トーヤとショールが困惑した表情を浮かべ、さっきよりも酷くなきじゃくるメイビスを見て、さっきよりもパニック状態になっているマカロフが叫んだ。
グ「いっ・・てェ~・・・!」
アンナとの激戦の時に負った火傷の跡が悲鳴を上げ、グレイは呻き声を上げる。
グ「クソ炎ほどじゃねーが、アイツの炎も熱いは乱暴だわ・・・俺は炎と妙な縁でもあるのか?」
1人でぶつぶつ呟きながら歩いていたその時―――――、
リオ「ならばその火傷、俺の氷で冷やしてやるっ!」
グ「!」
突如頭上から降り注いできた氷の礫を間一髪で回避する。味方のユモ以外で、氷の魔法を使う魔道士はグレイの知る中でただ1人―――――。
リオ「ボロボロだな、グレイ。」
グ「お前もすぐにボロボロにしてやるよ、リオン。」
リオ「それはどうかな?」
シェ「天神の・・・北風ッ!!」
リオンの意味深な言葉に首を傾げる間もないまま、黒い風を纏ったシェリアがどこからともなく姿を現し、グレイに襲い掛かってきた。こちらもまた、グレイは間一髪で回避する。
シェ「今年はジュビアはいないから、リオンが惑わされる事はない!」
グ「何だよそれ・・・」
シェリアの言葉にグレイは呆れたように呟く。
リオ「とにかく、回復魔法を使えるシェリアがいる以上、俺達は倒れる事はない!」
シェ「愛があれば、負ける事なんてないからねっ!」
リオンが両手に冷気を溜め、シェリアが両手に黒い風を纏う。それに応えるかのように、グレイも両手に冷気を溜めた。
グ「綺麗さっぱりに片付けてやるよ、2人まとめてな。」
ナ「おーーーい敵ィーーーーーっ!どこだーーーーーっ!?」
片手を口元に当てて叫びながら、ナツはクロッカスの街中を走り回っていた。
ナ「おいおいおい、まさかもう全員倒れちまったって訳じゃねェよな?だとしたら、まだ倒れてねェ俺がいるから、妖精の尻尾の優勝の合図があるはずだろ?」
立ち止まり、首を傾げたり手を叩いたりしながら1人で問答していたその時―――――、
キー「こんなところでご対面とは、思ってもみなかったな。」
レヴ「火竜。」
聞き覚えのある声に振向くと、キースとレヴルがいた。風が吹き、ナツの桜髪、キースの金髪、レヴルの銀髪を揺らす。
ナ「おーっ!やーーーっと見つけた。ずーっと走り回ってたのに誰もいなかったんだよなー。」
キー「それはナツさんが、人と接触する運が無かったって事だけなんじゃ・・・?」
レヴ「まぁ、ドンマイってやつだ。」
ナツの緊張感があまりにない発言に、キースとレヴルがツッコミを入れる。
キー「レヴルとナツさんには好都合だな、2人とも滅竜魔道士なんだから。」
ナツは第1世代の火の滅竜魔道士、レヴルは第3世代の星の滅竜魔道士。ここに2頭の竜が向かい合った。
キースが銀色の鍵を取り出し、レヴルが両手に星のような輝きを放つ光を纏う。
ナ「ここにルーシィがいればもっと面しれェバトルになったはずなんだけどな。もちろんお前も、俺が相手してやる。」
吊り目のの目を、更に吊り上がらせながら言うと、固く握り締めた拳に灼熱の炎を纏った。
ナ「燃えてきたぞ。」
緑の葉が生い茂る木が並び、石造りの地面、白い石膏像の天使が飾られた噴水がある広場に青い着物に黒い袴姿のリョウはいた。右手で着物越しから包帯が巻かれている腹部を触る。
リョ「(傷口が開いちまう心配は、今はなさそうだな。)」
安心したように「ほぉ」と息を吐いたリョウの脳裏にはポーリュシカの顔が浮かんだのは余談だ。
リョ「それにしても・・・」
リョウは広場にある映像魔水晶に視線を移した。
映っているのはユモとハルトとイレーネ、映像が切り替わりエルザとカオリとナデシコとウララ、映像が切り替わりグレイとリオンとシェリア、映像が切り替わりナツとキースとレヴルが映し出された。
リョウは「はぁー」と深いため息をついた。
リョ「いつの間にか皆、誰かとぶつかってるもんなぁ。」
頭を掻きながら独り言のように呟く。
リョ「そして、間違っててほしい事だけど、俺の記憶が間違ってなけりゃ・・・後1人いるはずだなんだよな。」
顎に手を当てながら再び独り言のように呟いたリョウの顔がどんどん青ざめていく。
リョ「ヤベ・・急に悪寒が・・・嫌な予感がするぜ・・・」
リョウは両手で体を摩る。
そんなリョウの嫌な予感は―――――見事に的中した。
カラン、コロン、カラン、コロンという下駄の音と共に、迫力のある魔力と気配が近づいてきた。
ジュ「やっと会えましたな、リョウ殿。」
昨年も今大会も優勝候補筆頭の聖十大魔道―――――蛇姫の鱗のジュラ・ネェキスが妖精の尻尾の聖十大魔道、リョウ・ジェノロの目の前に現れた。
リョ「(どんピシャリ・・・ってやつか。)」
リョウの頬を冷や汗が伝い流れ落ちるが、その表情にはとても清々しい笑みが浮かんでいた。
ジュ「怪我の具合はどうですかな?」
リョ「あ、知ってましたか。お陰さまで、順調です。」
大嘘だ。逆に酷く悪化し始めている。
ジュ「それを聞いて安心した。」
白い着物の袖から両手を出し、ジュラはその場で身構えた。
ジュ「リョウ殿と、本気で戦う事が出来るからのう。」
凄まじく、禍々しい魔力がオーラとなって放出される。
リョウは目の前にいる“最強”に怯む事無く、肩を一度竦めると口を開いた。
リョ「悪いですがジュラさん、あなたは1つ、大きな勘違いをしていますよ。」
ジュ「む。」
音一つ立てずに、リョウは鞘から『銀覇剣』を抜いた。
リョ「俺は怪我の具合が良くても悪くても、誰が相手だろうと、強敵だろうと、最初っから本気で戦うつもりでしたから。そして今俺の目の前にいるのは―――ジュラさん、俺にとって強敵だ。」
音一つ立てずに、リョウは鞘から『天力剣』を抜いた。
リョ「そして俺達は、“聖十大魔道”という名を背負った男じゃない。強いて言えば蛇姫と妖精。強いて悪く言えば―――――」
音一つ立てずに、リョウは鞘から『嵐真剣』を抜くと口に銜え、真っ直ぐ目の前にいる人物の目を見つめた。
リョ「ただの2匹の男、ですよ。」
ジュ「良い眼だ。」
激しい攻防戦は、幕開けと共に終焉の時も近づく――――――――――。
生き残るのは誰だっ!?今、戦いの火蓋が切られた――――――――――。
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シャ「・・・ねぇ、ウェンディ、マヤ遅くないかしら?」
ウェ「そういえば、そうだね。」
切羽詰った様子でシャルルが問い、ウェンディも不安そうな顔をして出口の方に視線を移した。
ル「何かあったのかしら?」
ト「様子、見に行ってみますか?」
ル「そうね。皆で探せばすぐに見つかるはずだしね。」
と言う訳で、マヤ捜索隊にルーシィ、ハッピー、フレイ、ショール、ウェンディ、シャルル、トーヤが行く事になった。
マカ「可能性は少ないが、もしかしたら会場の外に出てるかもしれん。念の為外も見て周って来てくれ。」
ショ「分かりました。」
メイ「くれぐれも気をつけて下さいね。」
フ「おう!」
ハ「それじゃあ行ってくるね~!」
ハッピーとシャルルが翼を広げたのと同時にルーシィ達はマヤを探しに応援席を飛び出した。
この時はまだ、誰も気づいていなかった。
大魔闘演舞が終わるのと同時に、世界が滅亡の時を迎える事になるなんて――――――――――。
この時はまだ、誰も気づいていなかった。
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ドムス・フラウの地下深く。
銀色の台座に置かれた黒い大砲。黒い大砲の中央部に書かれている赤い術式は休まずに刻々と時を刻み続けていた。
『『極悪十祭』まで、残り1日 15時間00分00秒』
後書き
第193話終了~♪
大魔闘演舞、いよいよ終焉の時が近づいて来たっ!それと同時に、何やら不可解な事がまた起こりそうな予感・・・じゃなくて、こーいうのって絶対起こるパターンだよねっ!?
次回は激しく争う魔道士達のバトルを書いていこうかと思います!
それではまた次回、お会いしましょう~♪
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