『ある転生者の奮闘記』
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TURN10
「田中艦隊……壊滅寸前です」
オペレーターが悔しそうに言う。
「秋月型は田中艦隊の救助にかかれッ!! 第四戦隊はこのまま敵艦隊に突撃するッ!! 全艦ミサイル用意やッ!! 目標は敵戦艦ッ!!」
「照準完了ッ!!」
オペレーターが操作する。
「ミサイル発射ァッ!!」
四隻から六発ずつ――二四発の対艦ミサイルが発射されて三隻の戦艦に向かう。
「全艦最大戦速で空母に向かうんやッ!! 主砲は空母を撃てェッ!!」
摩耶を先頭にした第四戦隊は単縦陣で敵空母に向かった。
「ファックッ!! ミサイルは囮で狙いは空母かッ!!」
「ミサイル来ますッ!!」
「迎撃ッ!!」
ダグラスは罵りながらもミサイル迎撃に着手していく。
「逃げろフリスッ!!」
ダグラスは空母エセックスを見ながらそう叫んだ。空母エセックスには空母隊司令官のフリス・ハルゼー中将が座乗していたのだ。
「アタゴ型が接近しますッ!!」
「対艦砲撃てェッ!!」
空母エセックスの艦橋でハルゼーが吠える。
しかし空母に搭載する対艦砲では巡洋艦に立ち向かう事は出来ず、第四戦隊からの砲撃を食らった。
「損害急げッ!!」
『格納庫に命中弾ッ!! 酸素が流出していますッ!!』
『機関室火災発生ッ!!』
『Gブロックに命中弾ッ!! 隔壁閉鎖急げッ!!』
悲鳴のような報告がハルゼーの元へ届く。
その時、後方にいた空母バンカーヒルが爆発四散した。
「空母バンカーヒル爆沈ッ!! 弾薬庫に直撃したようです……」
「………」
オペレーターからの報告にハルゼーは何も言わなかった。
「最大戦速で離脱するのよッ!!」
彼女は占いで艦隊の運命を占おうと一瞬過ったが直ぐに止めた。
どうせ意味無い。
そうしているうちに空母エセックスの後方にいた空母ハンコックに多数の命中弾が出る。
「ハンコックにビーム弾命中ッ!! ハンコック戦闘不能ッ!!」
「駆逐艦は何をしているのッ!?」
ハルゼーは叫ぶ。
「駄目です。駆逐艦も敵アタゴ型に近づけられないようですッ!!」
ダグラスの戦艦部隊にも救援を出そうとしたが、ダグラスの戦艦部隊は旧式で速度が遅いので全力で逃げる空母隊と全力で追いかける第四戦隊に追い付けなかったのだ。
そして大破して戦闘不能だったハンコックが撃沈された。
「残りの空母はこのエセックスだけです」
頭に包帯を巻いた士官がハルゼーに報告する。
「敵アタゴ型が接近してきますッ!!」
オペレーターが叫ぶ。
摩耶を先頭にした第四戦隊は次の目標をエセックスにしたのである。
「……総員退艦ッ!! 急ぐのよッ!!」
もう躊躇する暇は無かった。
ハルゼー達を乗せた救命艇はエセックスから脱出をして駆逐艦に収容される。
そして第四戦隊は第三艦隊の仇とばかりにエセックスに集中砲撃をしてエセックスを撃沈したのである。
「敵空母撃沈しましたッ!!」
「……ほんまは曳航して此方で使わせて貰おうかと思ったけど……此処は敵の星域やからな」
敵の居城やからまだ艦隊はいるやろうしな。
「全艦に告ぐ。これよりラバウル星域に帰還する」
そして第四戦隊と救助活動を終えた秋月型四隻は残った雷撃駆逐艦二隻と共にワープゲートに進入した。
このハワイ星域会戦は一人の日本海軍の戦隊司令官によって日本軍の敗北を引き分けにまで持ち込ませたのであった。
「……酷いものだな」
「ですが、第四戦隊が敵空母三隻を撃沈して第三艦隊の仇は取りました」
「俺としては敵空母を捕獲してもらいたかったが……」
「報告では敵星域内なので、敵航空部隊の存在もあったのでやむ得ず撃沈したと狹霧司令官は言ってます」
「……だろうな。これが侵攻なら分かるがな……」
東郷長官はそう言ってコーヒーを飲む。
「戦略の練り直し……だな」
「大変ですッ!!」
東郷長官が呟いた時、連絡士官が来た。
「ガメリカ軍の機動部隊が日本星域に侵入ッ!! 衛星基地を奇襲攻撃しましたッ!!」
「何ッ!?」
これには東郷長官も驚いた。
この時日本星域に侵入したのはドーリトル大佐を提督にした護衛空母の部隊であった。
護衛空母は二隻で搭載機も四十機くらいしかないが奇襲をするのには十分な数であった。
被害は少なかったが、日本星域の守備を固める必要が検討される事になった。
「東京空襲みたいで大騒ぎみたいやな」
「仕方ないよ。初めて日本星域が攻撃されたんだ。過剰反応は当たり前だよ」
俺は久々に技研を訪れていた。
「そのおかげで雪風の空母三隻撃沈の戦果は幻に消えそうだよ」
「かまへん。正規空母を叩いても護衛空母に空襲されちゃぁ意味無いからな」
俺はそう言った。
「秋月型は救助活動やけどよくやってくれたわ」
「本職は対空だけどね」
「それで……艦艇建造はどうなるんや?」
「今頃は津波と東郷長官達が話しているよ。恐らく駆逐艦の建造は打ち切って伊号潜航艦の建造だろうね。今の段階で二十隻の建造予定だから壊滅した第三艦隊に潜航艦で補充が妥当だよ。何せ数が無いからね」
茂はそう言った。
「まだガメリカは潜航艦の対策は出来ていない。ガメリカを破るなら潜航艦を主体にしてやるべきだよ」
「ま、切り換えが早い東郷長官ならそう判断するやろな」
翌日、駆逐艦の建造は打ち切りとなり、伊号潜航艦の建造が最優先となったのである。
後書き
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