(仮称)武器の御遣い
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第壱章
第一席:法正、天の御遣いと邂逅するとのこと
Side:飛鳥
……はてさて。……オレが転生してから既に九年の時が経った。……九年の間、何をしていたか。……其れは追々語っていく。……取り敢えず、西涼の葵殿の軍、中央の彩羽殿と紗耶香殿、一部を除いた益州の将兵、南蛮の皆、漢中の五斗米道の者達、両袁家と仲良くなったとだけ言っておく。
……あ、仲間もそれなりに居る。……今白蓮殿に雇われてるのはオレだけだが、色々と大陸を回ってるうちに仲間が集まった。……百人前後の人数だけど、一人一人が可也強い。
……扠置き、今は白蓮殿の所で、客将として厄介になってる。……理由は雇われたのと、路銀が尽きそうだったから。
……前の遠征で少々敵を威圧したら、苦笑いした白蓮殿と星に叱られた。……まあ、威圧したら敵が逃げちゃったから仕方無い。
……で、現在。……劉備とその仲間が訪ねてきた。……そろそろ原作の始まり。
……星は白蓮殿の後ろの方で気配消して隠れてる。
……オレは天井に足の握力でぶら下がってる。……勿論、気配消して。……位置的には扉のすぐ近くの壁際。……白蓮殿と星には思いっきり見えている。
……現在は、劉備一行の自己紹介。
「この愛紗ちゃんと鈴々ちゃんはねぇ、とぉっても強いんだよ! 私胸張って自慢しちゃう!」
「へぇ~。桃香の胸程の後押しが有るなら安心かな? 取り敢えず自己紹介してくれるか?」
「我が名は関羽、桃香様の一の槍!」
「鈴々は張飛なのだ! すっごく強いのだ!」
「オレは北郷一刀、世間じゃ天の御遣いとか呼ばれてて桃香達の主君的な立場やってるが、生まれる性別間違えたとか言われる、ただのガサツな女だよ」
「へぇ~。これが天の御遣いねぇ~。強いのか?」
「そんな馬鹿な。この場には強い人が三人居るじゃないですか」
「それは北郷と関羽と張飛のことか?」
「いやいや、オレは愛紗や鈴々よりも弱いよ。公孫賛さんの後ろに居るじゃないですか」
「おや、バレてましたか」
……ふむ、星に気付くか。……関羽や張飛、星と同等の実力は持ってると見た。
「ッ!? 星! 脅かすな!」
「いやはや、まさか気付かれているとは。貴殿もなかなかに読めぬお方だ」
「偶然ですよ。それに、オレの本職は武将では無いですからね」
「あの~白蓮ちゃん? どなた?」
「あぁ、こいつは趙雲子竜。うちで客将やってる」
「よろしくお頼み申す。だが、探知出来たのが私だけとは。やはり貴殿もあ奴には気が付きませんでしたかな?」
……ん? オレに気付かなかった事言ってるのか?
「貴様! ご主人様を侮辱するか!」
……関羽が怒った。
「落ち着かれよ関羽殿。侮辱をしているわけではない。やはり気付かぬかと思っただけだ」
「む。気づかなかっただと?」
「おや、貴殿も気付いておられぬか?」
「何にだ!」
……関羽は怒りっぽい。……脳内メモにメモしとこう。
「やはり気付いておらぬ様だな。もうよいだろう。降りてこい、飛鳥」
『……星。……無茶言っちゃダメ。……普通は背後の天井に人が居るなんて思わない』
……そう言いながら、白蓮殿と劉備一行の間に移動して足の握力を弱め、床に着地する。
「ッ!? 何者だ!」
……いきなり降りてきた俺に驚いたのか、関羽が臨戦態勢を取る。
『……遅い。……臨戦態勢を取るのに数瞬。……軽く十回は死んでるぞ?』
……そう言って合気道の応用技で関羽を転ばし、尻餅をつかせる。
『……そう警戒しなさるな。……俺の名は法 孝直。……白蓮殿に雇われて客将をやってる、流浪の傭兵だ』
……そう言うと、北郷を除いた三人が驚いた表情をした。
「ええぇぇぇ!? 法正さん!? 本物!?」
「ほ、法正だと!?」
「仮面の兄ちゃん法正なのか!?」
「?? そんなにすごい人なのか?」
「スゴイなんてものではありません! 法正は五年ほど前、突如として現れた凄腕の傭兵なのです! ですが、気分によっては依頼を受けない事もあり、期間は長くとも四半年。力や権力で従えさせようとして返り討ちにあい、壊滅した軍は数しれず。現在、雇うことに成功したのは益州の劉焉殿、并州の丁原殿、漢中の張魯殿、西涼の馬騰殿、洛陽の十常侍筆頭の張譲殿と大将軍の何進殿、冀州の袁紹殿とその母君の袁逢殿だけと聞きます」
「そ、そんなに凄いのか」
「聞けば益州、并州、漢中、西涼、冀州は法正が滞在していた期間の間に近辺の賊徒を粗方討伐し尽くしたとか」
「ふむ、飛鳥よ。お主、本職は隠密とか言ってなかったか?」
『……ん、言った。……武力が有ったから、武将みたいな事してただけ。……本職は隠密。……あと、別段依頼が来なかった訳じゃあない。……ただ、先に名の上がった七人より魅力的な取引相手が居なかっただけ。……愛殿には氣功術を。……晶奈殿からは、五斗米道の医術を。……葵殿達西涼からは、馬術の指南を。…… 麗羽殿と美麗殿からは、旗と大軍を指揮する経験を。……彩羽殿と黄殿と紗耶香殿からは、伝手を報酬として貰った。……梅香様は、まだ無名だった頃、拾ってもらった恩が有るから、無報酬で力添えをしていた』
「ん? なあ飛鳥。ならなんで私と契約してくれたんだ? 私は金以外には馬くらいしか報酬に出せんぞ?」
『……別に、金で雇われる時もある。……オレが雇い主にする相手には、条件が三つある』
「条件?」
『……ん。……一つ、領地を保有している事。……二つ、常識を弁えている者である事。……三つ、配下の民・兵からある程度の人望がある者。……この三つを満たしている者以外には契約話は持ち掛けないし、持ち掛けられても蹴る事にしてる。……後は、その時の気分。……白蓮殿は、全ての条件を満たしていたから、契約した。……劉璋や劉繇、曹性、許貢、孫綝みたいな屑じゃ無かったし(ボソッ』
「わ、私はそこまで能力は無いのだが?」
「白蓮殿。御自身を卑下し過ぎですぞ。白蓮殿の政務の腕や武の腕、知略はお世辞にも良いとは言えない。が、決して悪い訳ではない。教本通りの行いでここ迄人は集まりませぬ。政務一つ取っても、その土地に合った政務に改良する機転、中々出来る物ではありませぬ。御自身の能力を理解した上で精一杯の誠意を見せる事が出来る白蓮殿だからこそ、私も、飛鳥も、劉備殿達も、白蓮殿を頼ってきたのですぞ?」
「そうだよ白蓮ちゃん! 蛍先生も白蓮ちゃんが優秀だったから卒業を言い渡してくれたんだよ?」
「そ、そんなに褒めても何も出せないぞ!? それに、私が優秀だったら麗羽や曹操や孫堅はどれだけ優秀なんだよ!」
『……そこで自分を卑下にするのが、白蓮殿の悪い癖。……風鈴さんも「白蓮ちゃんは褒められ慣れてないから、褒められたらすぐに顔を赤くして自分を卑下にするのよ」って言ってたな』
「ほ、法正は風鈴先生の事を知ってるのか!?」
『……真名を許してるんだから、真名で読んで欲しい。……その質問の答えは是。……一宿一飯の恩を受けた』
「へ〜、法正さんも風鈴先生の知り合いなんだ〜」
……その後は、劉備と白蓮殿と風鈴さんの話で盛り上がったり、星と関羽と張飛と北郷と鍛錬云々の話をしたり、真名を交換したりした。
Side:END
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