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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語

作者:マルバ
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インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ
壊れた世界◆奇跡
  第四十五話 奇跡

 
前書き
ミズキ、三途の川の手前まで行くの巻。
第六部以降、ミズキが主人公になってマルバの出番が減りそうな予感がする…… 

 
 俺は花畑の中を歩いていた。右手には整った林が、左手には地平線まで見渡せる草原があり、絵に描いたような風景に俺は思わず見とれた。全く見覚えのない景色だったが、何故か不安は無かった。道はただひたすらにまっすぐと伸びていて、俺はその道を軽い足取りで歩いていた。
 ふと気づくと、目の前に川があった。道はそこで途絶えている。川幅は広いが、泳いで渡れる距離のように見えた。しかし、俺はこの川を泳いで渡ってはいけないことを知っていた。見渡すと少し遠くに渡し船があり、船頭が手招きしているのが見えた。俺はその船頭に向かって歩き出した。
 いきなり、誰かに手を掴まれた。驚いて掴まれた手を見るが、そこには何もなかった。振り返ると、長いマントをはおり、フードをかぶった誰かが立っていた。
「……あなたを追いかけてきた」
 フードの人物がぼそりと呟いた。俺を追いかけてきた? 俺はフードを被ったその人物に一歩近づき、その顔を見ようとした。しかし、見えなかった。フードの中には誰もいなかった。
「あなたはまだ向こうに行ってはいけない」
 中身の無いフードが再び言葉を発した。――俺は、首を振った。俺はもう、自分が死んでいることを知っていた。
「あなたをずっと見ていた。わたしは、あなたに生きてほしい。あなたがまだ、あの辛い世界に戻る意志があるのなら」
 俺をずっと見ていた、だって? お前は一体――誰だ?
「わたしの名は――」
 フードが一歩前へと踏み出した。本来なら口があるはずの場所が、俺の耳元を掠めた。
 ――ミドリ――
 囁き声が聞こえたと思ったら、フードは突然命を失った。俺が抱きとめたフードは、もはやただのフード付きマントに過ぎなかった。俺はそれをごく自然に身にまとい、再び川を見た。船頭はもう俺を見てはいなかった。俺は振り返った。今まで歩いてきたはずの長い道のりは、もうそこにはなかった。すぐ目の前に、大きくて深い森が広がっていた。その樹海に一歩でも踏み込んだら、ここにもう戻ってくることはできないと、俺は知っていた。その森の中には辛く苦しい日々が待ち受けていることも、俺は知っていた。
 それでも俺は歩き出す。フードの人物――ミドリの遺志に導かれるようにして。その森の奥には暖かいものがたくさんあることも、俺は知っていたから。 
 

 
後書き
ミズキくんは三途の川の手前まで行きましたが、引き返してきました。

ここでミドリという新しい名前が登場しますが、この場所にいるということはこの人もすでに死んでいます。ミズキとミドリが出会った結果、引き返すという選択肢(背後の森)が生まれたことが重要なポイントです。ここ、テストに出ます。

次回、この人がSAOに帰ってきます。 
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