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美しき異形達

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第二十一話 菖蒲の友人その六

「それで菖蒲ちゃんの欲しい幸せは」
「特にないから」
「そうよね、だからね」
「その幸せはこれから」
「見付ければいいんじゃないかしら」
 こう笑顔で言うのだった。
「そうしたらどうかしら」
「これからなのね」
「なければ作るか見付けるか」
 そこで諦めずに、というのだ。
「そうすればいいからね」
「そうなのね」
「そう、幸せは歩いてはね」
「歌であったわね」
「そうでしょ、だから菖蒲ちゃんも見付けてね」
 こう話すのだった、そして。
 菖蒲もだ、考える顔でこう言ったのだった。
「そういえば私は」
「どうしたの?」
「本当の両親はわからなくて」
「あっ、菖蒲ちゃん孤児だったのよね」
「ええ。けれどね」
「ご家族おられるわね」
「ええ、お父さんにお母さんに」
 それにだった。
「兄さんと姉さんが」
「皆に大切にしてもらってるわよね」
「とてもね」
 そうだというのだ。
「実の子供、妹みたいに」
「よく継子いじめとか聞くけれどね」
「少なくとも私はね」
 菖蒲個人は、だった。
「そうしたことはないわ」
「いいことね」
「それは幸せなことよね」
「そうね、間違いなくね」
 クラスメイトも微笑んでだ、菖蒲のその言葉に答えた。
「それはね」
「私は幸せだと思うわ」
「もう幸せは既に手に入れている」
「そうなるわね」
「ええ、言われてみれば」
 クラスメイトは菖蒲のその言葉にあらためて頷いた。
「菖蒲ちゃんはもう幸せね」
「では後は」
「その幸せをね」
 それをだというのだ。
「守りたいわ」
「青い鳥を手に入れてね」
 それでもだというのだ、そこは。
「それで終わりかっていうと」
「違うわね」
「手放さないことね」
 幸せをというのだ。
「青い鳥を」
「絶対に」
「そう、菖蒲ちゃんもそうしてね」
「わかったわ、私も」
 こうしたことを話してだ、菖蒲はクラスメイトとの時間を過ごした。そして昼に仲間達と会いそのうえでだった。
 彼女達に朝のその幸せのことを話した、場所は校庭の中庭の中だ。そこでそれぞれ弁当を食べながら話す。
 そしてだ、菖蒲のその話を聞いてだった。薊が腕を組んだ姿勢でこう言った。
「あたし達皆そうだよな」
「孤児だけれど」
「いい環境にいるよな」
「家庭にね」
「あたしは孤児院育ちだけれどな」
 それでもだった、薊にしても。
「院長先生も他の皆もな」
「いい人達ばかりなのね」
「そうだよ、幸せだと思うよ」
 薊もだというのだ。
「実際さ」
「私もね」
「私もそうなるわね」
 菊と向日葵も言う。
「お父さんもお母さんもお兄ちゃん達も優しくて」
「孤児だった私を引き取ってくれて育ててくれて」
 こう言うのだった。 
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