気絶している銀髪の幼女を拾ってきた俺に対してこの館の主の一言。
「元の所に棄てて来なさい」
血も涙も無かった。しかも捨て猫扱い。作者は猫派です。
「人でなし!?」
「人じゃないもの」
「そりゃそうだけどさ!?」
「ふふ、冗談よ」
上品に口元を手で押さえて笑うレミリア。
「目が覚めるまでベットに寝かせて、そのあとは起きてから考えましょ」
と言うことで行き倒れ幼女の件は一先ず保留となった。
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何をしに図書室に戻ったのかと言うと、人間の魔理沙に魔法を教える為にとある本を取りに来たのだ。え?図書室からの本の持ち出しは禁止じゃなかったかって?やだなぁ。『他人に貸し出し』することはダメだけど『管理者または持ち主』は良いんだよ。元々紛失を防ぐ為のルールだし。つまり俺とパチュリーとレミリアは例外的に本を持っていってもいいのだー!…誰に説明してるんだ俺?
目的の本である、魔法少女の育て方と書かれた本と魔法使いの心得みたいなものが書かれた本を棚から取りだしながら思っていた。その時、トコトコとパチュリーが光に集まる虫のように、夢遊病者よろしくこっちに寄ってきた。
パチュリーはそのまま俺に力一杯抱きついた。
「むきゅー♪」
甘えん坊はご満悦といった表情で顔を俺に埋めた。
「明希分の補給完了」
「何?その謎成分は…」
「不足することで禁断症状が起きる」
俺は麻薬か何かか。
「最近時間が無かったから…」
あー…確かに。パチュリーは研究していたりアリスが来たり、引っ越ししたりで二人きりになる時間が減ったなぁ。
ういやつめ。
うりうりとパチュリーを抱き返しながら俺は言った。
「そう言えばパチュリーはフランに秘策があるって言ってたけれど何するの?」
「ん。前にフランは人狼を大量に殺すことで少しの時間は大丈夫になったでしょ?」
あの時か。お兄さまとか言われた時は本当に混乱した。純粋と言う名の脅しに屈服してお兄さまと呼ばれることを許可させられるという訳がわからない、旗から見たら羨ましいぞと聞こえてきそうなやり取りをした後にフランとは普通の遊びをした。
チェスとかすごろくとか至って普通の遊びをしていたのにいつの間にか、いつぞやの炎剣チャンバラごっこを始めた時は流石に焦ったが。いや、すでに『ごっこ』ではないか。あの目はマジだった。
俺は首にパチュリーが頬を擦り寄せる甘えを受けながら聞いた。
「なら飽きるまで殺せばいいのよ」
なんだその逆説的発想は。暫くしない内に俺の彼女の言動がエキセントリックになってしまったぞ…?
「ちょ、ちょっとパチュリー…?」
「わかってる。問題ないわ」
次第に甘え方が激しくなって両腕だけではなく両足も俺に絡ませ、所謂、だいしゅきホールドをし始めたパチュリーが俺の思考を読んで言った。
「そこでエイジャの赤…じゃなくて賢者の石よ。ホムンクルスを大量に産み出して殺させるの」
なるほど。倫理観は問題あるかもしれないが、赤い石を使えば狂っていない究極生命体フランへと魔改造することが出来るのか。日光は克服しないけど。
「飽きるほど殺して…。殺す気力が失せるほど殺させる。そこから加減と我慢を覚えさせれば完璧ね。あの子頭いいもの」
「賢者の石は?」
「もう出来るわ、後は待つだけ。作り方が載っているなら料理を作るように簡単」
そのレシピが暗号化されていたり古代語で暗喩されていたりして解読が難しいのによく言うよ。小さい時からわかっていたけど、パチュリーは天才だなぁ。俺はただ、前世の記憶があって産まれた時から自我があっただけの…凡人とまでは言わないにしろそこまで才能がある訳じゃない。あとパチュリー?料理って作ったことあるっけ…?
「時間は大丈夫?」
フランは千を優に越える大群と戦ってそれでも正気を保てたのは半日足らずだった。
「十年よ?大丈夫でしょ。万や億ぐらい殺せば十分だと思う」
発想のスケールが大きすぎた。やはり天才は違った。
「だったら大丈夫か」
「ひゃにふぁ?(なにが?)」
パチュリーは俺の首を喰みながら言った。ちょっとくすぐったい。
「実は…弟子が出来たんだ」
「え?」
首からパチュリーの唾液が糸を引いていて実にエロい。
唖然としているパチュリーに俺は魔理沙のことを伝えた。
「そう…。ただし、毎晩覚悟しなさいよね」
勿論だよと軽くキスをして俺は魔理沙を待たせているアリスの家に向かった。
「師匠…」
「ほらじっとして。すぐ終わるから」
「イタッ…!ぐすっ…」
「何で私の家でやるのよ…」
これで契約完了っと。
ナニしてたんだって?契約だよ契約。ほら、あれだよ。僕と契約して魔法少女になってよ!って言うあれ。
「だってほら…」
外では雨が降り始めていた。少し前まではそんな気配は無かったけど、突然降り始めた。季節的に雪が降るはずだけど凍らずに雨として降ってきたみたいだ。ツイてない。
しょうがないからアリスの家で魔理沙を魔法少女にする契約をしていた。
本には色々書かれていたがそれが一番マジだった、とだけ言っておこう。誰だよあの本書いた奴…。バージ…げふんげふん。兎に角、ろくでもなかった。
方法としては魔法使いの俺が魔理沙と契約して一時的に魔力を送れるようにすると言うものだった。契約には血を使う。さっきは魔理沙の指先に少しだけ傷を着けただけだ。決して処じなんでもないです。
「しょうがないわね…」
と言いつつ紅茶を持ってきてくれるアリスは優しいと思う。
「ありがとう、アリス」
「とっ!友達なんだから当たり前のことをしただけよ!///」
アリスはそう言うと顔を赤らめてプイと向こうを向いて人形を弄り始めた。
「ぶーぶー!師匠早く早く!」
「ブー垂れなくてもやるよ。まずは知識から」
「えー!魔法は使わないのー!?」
「知識はそのまま魔法に直結するから」
「ぶー…。師匠がそう言うなら」
持ってきたもう一冊の本を読ませながら、俺は契約によって出来た魔理沙との繋がりで魔理沙の潜在能力を見た。魔力を送れるようになったと言うことはその逆も可能だ。
「師匠~これ詰まんない」
「地道な努力は必要だよ。それを読まないと魔法は教えない」
そう言うと魔理沙は必死に本を読み始めた。割りと素直な子だな。
「ねえ、明希。その子弟子なの?」
先程までずっと人形を弄ってたアリスが今さらだが質問してきた。
「魔理沙(の放火)からアリス(の家)を守るために」
「私狙われてたの!?なんなの、この子なんなの!?」
「元犯罪者予備軍?」
「元ってなんなのよー!」
「師匠~!私は犯罪者なんかじゃないよ!」
ぶーぶー!と魔理沙が抗議した。その年で犯罪者の意味がわかるのか。伊達に魔法を使おうとはしてない。でも流石に予備軍はわからなかったか。
「可能性があったってことだよ。ほら、ちゃんと基礎を学ばないと本当になっちゃうよ?」
脅しが効きすぎたのか少し青ざめて再び本を一生懸命に読み始めた。
弟子にしたと言っても、始めはこのぐらいしか出来ない。元々、俺達は殆ど独学で魔法を身に付けたし教え方がこれしか思い付かないだけだが。
そしてその日は結局雨が止まずに小悪魔に迎えに来てもらった。
残酷注意
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おまけっ!そのなな
幻想郷には妖怪もいるが人間もいる。その人間が暮らしている里から少し離れたとことで雨に濡れたナイフが鈍い光を反射した。
パシャパシャと逃げる足音と追いかける足音が重なる。子供は必死に逃げる。服は泥塗れで顔は涙と鼻水でグシャグシャだった。それでも子供は雨に打たれながらも必死に逃げた。何故追われているのか、何故狙われているのかはわからないがわかることは一つ。逃げなければ殺される。
だが悲しいかな、子供よりもナイフを持った追跡者の方が速く距離が次第に縮まっていた。
「うわっ!」
更に不幸にも子供は雨のせいで出来たぬかるみに足を取られ前のめりに転んでしまった。追跡者はそのまま子供に追い付き、子供の前で立ち止まった。
追跡者は無言で子供を見下ろした。子供は恐怖に支配され、震える手足で必死に動こうとした。―――が。
「かひゅ…」
ナイフが子供の喉を貫通した。ナイフを伝い喉から子供の血が滴り落ちる。子供は痛さのあまり出血多量よりも速く、ショック死してしまった。
殺人鬼はナイフを引き抜き、子供を貫き引き抜く感触に震え、幼い命を奪った背徳行為に狂い喜んだ。
「くひぁ!ふくぁははははぁぁぁあ!」
狂った笑い声と、誰も居なくて助けてもらえなかった不幸は子供の手向けとしえは最悪だった。
「くふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううう!最っっっ高だった……!」
殺人鬼は千鳥足で何処かへ去っていった。次なる獲物を求めるか。それとも……