魔法少女リリカルなのはStrikerS~破滅大戦~
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1st
邂逅篇
第1話『黒崎一護』
前書き
『ウチの連中に手ェ上げた罪を思い知れサカナ面!!』
────by黒崎一護(BLEACH)
【3人称side】
東京都・空座町───
ドォン!
金曜日───
ドォン!
午前2時23分───
ドォォン!
草木も眠る丑三つ時‥‥。
多くの者が夢の世界へと旅立つ中、静まり返った夜の町にはまるで似つかわしくない重低音が、幾度と無く大気を揺らす。
「ぉぉおおオオオッ!!!」
その重低音と同じく、夜の静寂を破る男の雄叫び。
それは、町の一角に居を構える4、5階建ての少し低めなビルの屋上から聞こえてくる。
ビルの屋上では、オレンジ色の髪の青年が身の丈ほどもある大刀を振るい、異形の怪物を斬り捨てていた。
それも1体や2体ではなく、十数体ものソレを相手取っている。
青年の名は『黒崎一護』───
今年で高校3年生になる〝死神代行〟である。
死神とは、一般的には『人間の魂を狩り、それを冥界へと連れて行く』といった風な怖いイメージがあるだろうが、この世界でのソレは違う。
ここでの〝死神〟とは、この世──現世を彷徨う魂魄を尸魂界というあの世の世界へと導く者のことで、両世界の魂魄を監視・管理する者たちのことである。
一護は偶然出会った死神『朽木ルキア』からそのチカラを譲渡された、〝死神〟の〝代行〟なのだ。
そして、一護が今行っているのは、死神のもう1つの重大な仕事───
〝虚討伐〟
虚とは、何らかの理由で堕ちた人間の魂──いわゆる〝悪霊〟──のことで、死神は自身の持つ刀──『斬魄刀』によって虚を退治・浄化し、普通の魂魄と同様に尸魂界へと送るのである。
ちなみに、魂魄を尸魂界へと送る行為を『魂葬』と言う。
閑話休題───
「フンッ!!」
一護は自身の斬魄刀である大刀──『斬月』を横薙ぎに振るい、一度に3体の虚を斬り伏せた。
「ふぅ‥‥キリが無ぇな」
一回一回の攻撃の度に複数体ずつ倒してはいるが、まだ相当な数の虚が確認できる。
「一撃で決めるか」
そう言って一護は斬月を構え、霊力を高め始めた。
そして、
「月牙‥‥‥天衝!!!」
おもむろに振り切られた刃から、巨大化した高密度の斬撃が放たれ、眼前にいた虚のすべてを消し飛ばした。
それを確認した一護は、斬月を肩に担いで、一息をつく。
「うっし、終わっ───」
一護が虚の全滅を確認し、家に帰ろうとした時、
「ギュウウウウウ!!!」
「──っ!?」
頭上から1体の虚が一護に対し、攻撃を仕掛けた。
「危ねっ!」
咄嗟に飛び退いて攻撃を躱した一護だったが、そこへ虚が追撃を掛ける。
「ポオオオオオク!!!」
「!!」
シュンッ!
結果から言えばハズレ。
さっきの不意打ちと違って、ただの一虚のただの攻撃などが当たる筈も無く、一護はいとも容易く死神の高等移動術──『瞬歩』で躱し、虚の上を取る。
「フンッ!!」
虚の上を取るや否や、一護はそいつをただ思い切り蹴り飛ばした。
ドォン!
蹴り飛ばされた虚は為す術も無く、ただ思い切り地面に叩きつけられた。
「ってか〝牛〟に〝ポーク〟って‥‥まんまあの時の奴じゃねーか」
ビルの屋上に再び降り立った一護は思い出した。
目の前にいる虚は、以前同じように倒した筈の奴だったのだ。
「チィィキィィンンン!!」
「〝チキン〟増えてるし!」
立ち上がり様にそう叫んだ虚に、思わずツッコミを入れてしまった一護。
さらに、
「マァァトォォンンン!!」
さらなるボキャブラリーとともに、再度攻撃が放たれる。
「〝マトン〟もかよ!!」
しかし、その新たなボキャブラリーとともに放たれた攻撃も、一護に簡単に払われてしまった。
「どうした? もう終わりか?」
一護は斬月を肩に担ぎ、虚を挑発する。
その口調は静かだが、内心では他のボキャブラリーを期待していたりもする。
対して虚は、
「‥‥グ‥‥‥‥」
「‥‥グ?」
「グオオオオオオオッ!!!」
ただ叫んだ。
「ネタ切れかよっ!!!」
「グガアアァァァッ!!」
変に期待していた分、イラっときた一護は、問答無用で牛ポークチキンマトン虚をズバッと真っ二つに切り裂いた。
「もっとあんだろ。〝サクラ〟とか〝ボタン〟とか‥‥羊繋がりで〝ラム〟とか‥‥」
ホントに色々と期待していたようで、一護の口から食肉のワードが出てくる。
ちなみに、〝サクラ〟は馬肉の事で、〝ボタン〟は猪肉、〝ラム〟は子羊の肉の事である。
「‥‥‥‥‥」
一護の愚痴を聞いていたのかは定かではないが、切り裂かれた牛ポークチキンマトン虚は、そのまま何も言わずに霧散してしまった。
「ったく‥‥。これで今度こそ終わりだな」
最後の1体を倒した事で、一護は今度こそ帰路につこうと思っていた。
しかし、虚はすべて倒したが、敵はまだ倒していなかった───
「 隙 だ ら け だ 」
「──っ!!?」
ガキィィィィィン!!!
先刻まで大気を揺らしていた重低音とは真逆の、耳を劈くような鋭い金属音が大気を斬り裂く。
背後より不意に振り降ろされた刃を、一護が振り向きざまに構えた斬月で受け止めたのだ。
一護が前を見ると、萌葱色の長髪に、顔の上半分を隠す鉄製と思われる銀色の仮面を着けた男が目に入った。
「何だよ、いきなり!! てめぇ‥‥何者だ!!」
「フン、つまらん問いだ。お前の敵だよ‥‥!!」
「ぐっ!?」
男は力を籠め、自身の刀を受け止める斬月を、それを持っている一護ごと弾き飛ばした。
そして、刀を天に突き上げると、男の周囲に風が吹き始めた。
「な、なんだ‥‥!?」
一護は驚愕した。
今の状況にではなく、男から感じるチカラに‥‥。
「(なんだよ、コレ‥‥霊圧か? いや、俺の知ってる霊圧じゃねェ‥‥。こいつはまるで‥‥霊圧に何か別のチカラが混ざってるような‥‥っ!!!)」
そう感じた一護だったが、その〝別のチカラ〟が何なのか、まったくわからなかった。
死神のチカラ、虚のチカラ、滅却師のチカラ、バウントのチカラ、破面のチカラ、仮面の軍勢のチカラ、刀獣のチカラ、崩玉のチカラ、霊骸のチカラ、完現術のチカラ‥‥。
自分が知っている限りのチカラを思い出すが、そのどれにも該当しない謎のチカラを、眼前の男は有していた。
「さて、小手調べと行こうか」
「──クソッ!!」
考えを巡らせる一護だったが、男の言葉で我に返り、迎撃のために斬月を構える。
「吹き────」
男が何かを呟こうとしたその時、異変が起こった。
「────っ!? 何だ!!?」
突如、一護の足元に謎の陣のような物が現れ、それが発光を始めたのだ。
「ぐっ! ぅぉぉおおオオオ!!!」
光は次第に強さを増し、同時に一護は叫ぶ。
そして、
シュゥゥゥゥゥ‥‥
「‥‥何?」
光が収まると、そこに一護の姿は無かった。
男は辺りを見渡す。
「チッ‥‥」
一護が消えた事を認識した男は、チカラを抑え、腰に携えていた鞘に刀を納める。
そこへ、
「何をしている」
「ん?」
全身を白装束で包んだ白髪の男が現れ、一護を襲った男に話しかけた。
「独断専行を許可した覚えは無いぞ」
「妙なことを言う。許可を取らんから独断専行と言うんだろう?」
「‥‥‥‥‥」
反論する萌葱色の髪の男に対し、白髪の男は無言の圧を掛ける。
「‥‥フン、別に何も企んではいない。俺が斬る相手はどんな奴なのか‥‥少々興味があっただけだ」
「‥‥ともかく戻れ。今は未だ早い」
「ああ」
話し終わった2人の足元に、一護が消えた原因であろう謎の陣と似たようなソレが現れる。
そして、一護同様、2人の男もその場から消えてしまった。
3人の人が消えた後のビルの屋上には何も無く、夜の風がただただ虚しく吹き抜けるだけだった‥‥。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「‥‥ぅ‥‥っ‥‥ここは、何処だ?」
一護が目を覚ますと、そこは明らかに元の世界ではなかった。
何も無い。
まったく何も無い──‥‥それはまるで、〝無〟。
まさに無の世界とでも称するべき皓白なる世界に、一護はいた。
「何がどうなってんだよ‥‥」
一護は状況がイマイチ飲み込めず──簡単に飲み込める奴などそうそういないだろうが──、ただただ独り混乱していた。
その時、
「間に合って良かったです」
「っ!?」
不意に、背後から女性の声が聞こえた。
一護はその声の方へと振り返る。
「アンタは‥‥」
そこには声の主と思われる、空色の髪を後ろで括り──所謂ポニーテール──この世界と同じ純白のワンピースを着た少女がいた。
─ To Be Continued ─
後書き
2話目も連続投稿いたします。
次回、第2話『ナツ・ドラグニル』
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