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ドリトル先生と伊予のカワウソ

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第七幕その四

「お仕事の関係で」
「そのお仕事は」
「医者です、今は大学の教授です」
「それはいいお仕事ですね」
「神戸の方にいます」
 先生は門番さんにこのこともお話しました。
「あちらからお仕事で来まして」
「左様ですか」
「それでなのですが」
「それで?」
「このお屋敷の主の方に御用があるのですが」
 ここで先生は柵の向こう側にいる門番さんに言いました、ご自身の今の用件を。
「宜しいでしょうか」
「旦那様にですか」
「はい」
「それはまたどうして」
「とある方にお願いされまして」
 先生は門番さんに淡々と述べていきます。少し驚いている感じになった門番さんとは対象的にです。そして。
 門番さんは戸惑いながらもです、先生に言いました。
「それでは」
「案内して頂けますか」
「とりあえず今から連絡を取らせて頂きます」 
 こう言いながらです、門番さんは。
 ズボンのポケットから携帯を取り出してお話をはじめました、そして。
 暫くやり取りをしてからです、携帯を収めて先生に答えました。
「旦那様は今お時間があるとのことなので」
「お邪魔して宜しいのですね」
「異国で同じ国から来た人にお会い出来るのは喜ばしいことだとも」
「そうも仰って頂いていますか」
「はい、ですから」
 このこともあって、というのです。
「どうぞ」
「有り難うございます、それでは」
 こうしてです、先生達はお屋敷の中に案内してもらいました。左右対称で細かいところまで丁寧に切り揃えて整えられたお庭は歩いてみますと。
「うわ、かなりね」
「こうして歩いてみると実感するよね」
「本当に広いね」
「イギリスでもこんなお屋敷そうそうないわよ」
「公爵さん位だね、ここまで広いお屋敷に住めるのは」
「本当にね」
「そうですね、このお屋敷は」
 どうかとです、案内役の門番さんもお話します。
「相当な広さですね」
「そうだよね、本当に」
「かなりね」
「ええ、そうです。ただ」
「ただ?」
「ただって?」
「私は実は動物さん達の言葉がわかりますので」
 このことをです、門番さんは笑顔で言いました。
「それは先生もみたいですね」
「はい、実は」
「動物の言葉がわかるとは」
「この子に教えてもらったのです」
 自分の横をぱたぱたと飛んでいるポリネシアにお顔を向けてです、先生は門番さんににこりと笑って答えました。
「それで」
「そうですか、ただ」
「ただ?」
「先生はまさか、いえ」
 危うくご自身のことを言いそうになってです、門番さんは慌てて止めました。
「何でもありません」
「左様ですか」
「はい」
 こう言って誤魔化しました、そうして。
 お屋敷の門のところまで案内しました、とても大きな門は樫の木で出来ていてかなり重厚です。その門の前には。
 従者の人が一人立っていました、門番さんはその人のところに来てお話しました。
「この人達がね」
「うん、旦那様にだね」
「お会いしたいっていう人達だよ」
「では旦那様のところには僕が案内するよ」
「頼むよ」
「それではね」
 こうお話してでした、今度は。
 先生達にです、その従者の人が声をかけてきました。 
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