続:おおかみこどもの雨と雪
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エピソード5 恋
次の日、草平と私は同じ布団で背中合わせに寝ていた。
――何でだろう…ドキドキして心臓が飛び出そう。草ちゃんと同じ部屋にいるだけでドキドキするのに…
彼は寝ている。すうすうと優しい寝息をたてている。それだけのことでも私の心を高ぶらせていった。わずかながら彼の匂いも私の鼻に届いていた。
私は寝ている彼の唇を奪いたかったが間一髪のところで理性が引き留めた。
その代わりに私の理性が選択したものは彼の頬への接吻だった。
「…ゴメンね…」
私が彼の顔に近づくと彼の顔が自然と私の方を向く。
適度に水分を含んだその瞳は私の顔を見つめ、心なしか全く機能していないように見えた。
「あ…ごめn…」
最後に「ん」と言ったつもりだったが声がこもってうまく発音できなかった。
「…!?」
彼は私に覆い被さるように重なり、自身の口で私の口を塞いでいた。
やがて私と彼の口が解放されると彼は口を開く。
「本当に…悪い子だな…」
「…ゴメン…」
「頬っぺたにキスするなんて…中途半端にも程がある」
草平はさっきから起きていたようであとから聞いた話だが私と同じことを考えていたようだった。
「…!?」
草平が怒ると思っていた私は驚いた。と同時に嬉しくなった。彼と頬だけでなく口同士で繋がれたという事実が何より嬉しい。
「もう一回…いい…?」
草平は軽く頷くともう一度顔を近づけてきて口を触れ合わせた。さっきのような柔らかなキスではない。しっかりとした大人のキスだった。
「ん…んぅ…」
草平が舌を送り込んでくる。私もそれに応えた。心の奥が不思議な感じでなんだか目がトロンとしてくる。
やがて30秒くらい経って私と彼の口は離れた。
私も草平も息が少々乱れていた。
「草ちゃん…私…好きだよ…」
「俺もだよ…」
彼と私は互いに互いの体を抱き寄せた。彼の体がくっつくと心臓の鼓動が伝わってくる。私は落ち着き、すぐに眠りに着いた。
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