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呪われた者

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第二章

「どういう訳か」
「あんたが見ていないとね」
「そうなの、その時は何もなくて」
「しかも悪いことだけでなくて」
「いいこともなのよ」
「起こるのね」
「そうなの、どういうことかしら」
「そうね」
 ここでだ、母はというと。 
 娘の目を見た、そのうえでこう言ったのだった。
「あんたの目にあるのかしら」
「目に?」
「そう、目によ」
 そこに何かあるのではというのだ。
「何かあるのかしらね」
「それってどういうことなの?」
「実はお母さん子供の頃にこんなことを言われたのよ」
 娘の目を見たまま言う母だった。
「邪眼ね」
「邪眼って」
「呪いがかかった目よ」
「じゃあ私の目に呪いが」
「もっと聞くわよ、あんたが見て悪いことが起こるってどんな時?」
 母は今度は娘にこう尋ねた。
「それは」
「ええと、それはね」
「多分だけれど」
 あることを考えてだ、母は言った。
「あんたが悪いことを考えてる時にでしょ」
「確かに。そういう時に見ればね」
「そこで悪いことが起こるのね」
「そうなの、それでね」
「いいことを考えてる時はよね」
「いいことが起こってるわ」
「やっぱりね。あんたの目には力があるから」
 目力という意味での言葉だ。
「それでなのよ」
「私の目は邪眼なの」
「力があるのよ」
「誰かを不幸にしたり幸福にしたり」
「そう、そうした力があるのよ」
「そうだったのね」
「あくまでお母さんの予想よ」
 こうイタに話すのだった。
「あんたの目には呪いがかかってるのよ」
「呪いて。私の目に」
「そうみたいね、どうやら」
「じゃああれ?その呪いをなくす為に私の目を」
 自分の右手をその目に当ててだ、こう言ったのだった。
「くり抜くとか」
「馬鹿言いなさい、それはね」
「ないのね」
「そう、自分の目をくり抜こうとする親が何処にいるのよ」
「普通はいないわね」
「そんな親はまずいないわよ」
 そもそも人の目をくり抜くこと自体がそうそうないことだ、それこそサイコ犯罪者でもない限りはしない。若しくは戦場の狂気に囚われた輩か。
「だからお母さんも言わないから」
「そうよね、やっぱり」
「けれどよ、あんたも嫌でしょ」
 母は自分の言葉にほっと胸を撫で下ろした娘にさらに言った。
「自分が見て誰かがどうなるって」
「気持ち悪いわ、正直」
「そうでしょ、だからね」
「どうにかしないといけないわね」
「そうでしょ、だったらよ」
「それだったらよね」
「そう、ここはまずはね」
 どうしろというのかをだ、母はここでこう言ったのだった。
「お母さんがいい霊媒師の人を知ってるから」
「怪しい人じゃないわよね」
「そんな人だと付き合わないから」
「そうよね、じゃあ」
「そう、確かな人だから」
「その人に会ってなのね」
「何とかしてもらうといいわ」 
 こう話してだ、そしてだった。
 イタは母と共にその霊媒師のところに行った、霊媒師はバンドンの街の外れに店を構えていた。店の看板には占いとあった。 
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