『ポケスペの世界へ』
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第三十一話
ズガアァァァーンッ!!
レッド達の援護射撃もあってヤナギの氷の身体は砕け散った。
「くッ!!」
砕け散った衝撃でヤナギは車イスから落ちようとするが、左手で何とか車イスを掴んだ。
「例え何度砕かれようと………」
「復活するっつーんだろッ!!だがな、狙いは氷の身体じゃねぇんだよッ!!」
パキ……パキパキッ。
すると何かが割れようとする音が聞こえてきた。
「ま、まさかッ!!」
ヤナギは咄嗟に時間を捕らえるモンスターボールを見た。
パキイィィーーンッ!!
ゴールドが狙っていたのは時間を捕らえるモンスターボールだった。
そしてボールは砕けて、中にいたセレビィは飛び出した。
「しまったッ!!……ガッ!?」
セレビィが飛び出した瞬間、ヤナギは急に苦しくなっていく。
「てめぇも生身の人間だ。そのボールの中の羽の力に守られてなきゃ、この『時間のはざま』では………そして、俺も……な……」
あ、ゴールドが気絶した。
「ぐく………うん?」
苦しんでいたヤナギは急に驚いた表情をした。
「苦しくないだと………?」
その時、ヤナギのポケットからモンスターボールが出た。
開閉スイッチはいつの間にか開けられて、中からヤナギのポケモンであるヒョウガが飛び出した。
そしてヤナギの目の前にある映像かわ現れた。
「こ、これは………ラ・プリス、ラ・プルスと別れたあの時、あの場所………」
ヤナギのポケモンであるヒョウガは二匹のラプラスに抱きついた。
「ヒョウガを抱いているのは………おおおおおッ!!」
ヤナギが叫んだ。
「………ん?」
何か聞こえてきたな。
「ッ!!」
ん?ヤナギも気付いたみたいやな。
「こ、この歌は………」
確かこの歌は………原作ではヤナギのために歌った曲やな。
「………ラプラスに乗った少年………か」
不意にヤナギが呟いた。
「セレビィが少しだけ罪深い私の気持ちを汲んでくれたのか……あの時は受け入れられなかった歌が今は心に染みる」
「ヤナギ………」
「雪と氷が溶ければ春が来る。今、私の心の氷も漸く溶けた………春の陽射しを浴びているようだ」
ヤナギは俺達を見る。
「羨ましいな……若いお前達が……お前達にはこれからも沢山の時間がある……ポケモンと共に過ごす時間が……その時間を………大切に………」
そう言ってヤナギは車イスから手を離した。
「ピジョットッ!!」
「ピジョーーーッ!!」
「よっとッ!!」
俺は落ちていくヤナギを拾う。
「な、何を………」
「悪いなヤナギ。あんたはまだ死ぬべきやない。罪を償い、オーキド博士達に謝る事があるやろ?」
「……………」
ヤナギは俺の顔を見る。
「………ありがたいが私はゴホッ!!ゴホッ!!」
「ッ!?ヤナギ………」
ヤナギが咳き込み、口で手を押さえる。
「私には……時間が無い………」
ヤナギの手には赤い液体が付着していた。
「………後、数日の命だ。今までの罰だろう」
「………それならまだオーキド博士達には謝れるやろ。流石に服役は無理やけどな」
俺はヤナギをおんぶする。
「お、おい………」
「俺の目の前で人が死ぬのは嫌やからな。さぁて帰るか」
俺は気絶していたゴールドを連れて外へ戻った。
「………少し離れたところやな」
ウバメの祠にはレッド達が集まっていた。
「ヤナギ。悪いけど少し待っててくれ。逃げるなよ?」
「私はもう逃げないさ。後数日の命なんだからな」
俺とゴールドは祠に戻る。
「おい起きろゴールド」
「んぁ……ショウさん?」
ゴールドのほっぺたを叩くとゴールドが起きる。
「此処は?」
「ウバメの森や。祠に戻るで」
「ヤ、ヤナギッ!?」
「………………」
「………そうスか」
俺の無言にゴールドは死んだと判断したみたいやな。
まぁ実際は生きているんやけど。
「皆のところに戻ろか」
「そうスね」
俺とゴールドは祠に戻った。
後書き
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