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三人の魔女

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第七章

「ガウェイン卿が竜の相手をされるとのことですが」
「その通りだ」
「しかし。力は強くならず馬にも乗れず」
「しかも盾も使えないな」
「それで竜の相手は」
 とても、というのだ。
「無理では。雪も降り続いていますし」
「水晶玉もだな」
「それは私が持ちましょうか」
「いや、どうも卿が持ってもな」
 そうしてだった、実は。
「道は教えてくれない」
「だからですか」
「そうだ、どうもだ」 
 それでだというのだ。
「私が持つ」
「そうされますか」
「そうだ、私が持っておく」
 水晶玉もだというのだ。
「全てな」
「では」
「このまま闘う」
 竜とだ、今の状況でだというのだ。
「案ずるな、私は死なない」
「しかし」
「言った筈だ、私は死なない」
 決して、というのだ。
「私が言ったことを果たさなかったことはあるか」
「いえ」
 エレインはガウェインの今の言葉には首を横に振った。ガウェインは約束を破ることも嘘も言わない、そうした意味でも真の騎士なのだ。
 エレインもこのことはよく知っている、それで言ったのだ。
「ガウェイン卿に限って」
「そうだな、ではだ」
「このままですか」
「竜の相手をする」
「そしてその間に私がですね」
「妙薬を手に入れてくれ、頼んだぞ」
「わかりました」 
 エレインもガウェインの言葉に確かな顔で頷いた。それは彼の心がわかったからだ。
 そのうえでだ、二人は老婆から木の根を受け取った。老婆はそのうえで二人に対して強い声でこう告げた。
「ご武運を」
「うむ、ではな」
「行って来る」
 二人も老婆に強い声で応えた、そうしてだった。
 二人は水晶玉に導かれマントを羽織ったまま竜の巣に向かった。そうして巣のすぐ傍まで来たその時にだった。
 巨大な、全身を鮮やかな緑の鱗に覆われた竜が出て来た。目は赤く爛々と光り背中にある翼は大きい。
 その竜が出て来てだ、二人に対してだった。
 その息を吐いてきた。息は薄緑の霧でありその霧がだった。
 二人を襲う、だが。
 何もなかった、二人は馬を離れた場所に置いて徒歩で闘っていたがその毒の息を受けてもだった。
 何ともなかった、それでエレインは会心の声で言った。
「何ともありませんね」
「そうだな、薬のお陰だな」
 ガウェインもエレインの言葉に確かな言葉で頷いた。
「これは」
「そうですね、じゃあ」
「話した通りにな」
「私が妙薬を手に入れに行ってですね」
「私が竜の相手をする」
 そうして足止めをして、というのだ。
「それでいくぞ」
「わかりました、すぐに見つけて戻りますので」
「頼む」
 こう話してだ、そしてだった。 
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