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優しく抱いて

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第四章


第四章

「誰だってそうでしょ?心のこもっていないプレゼントなんかいらないわよ」
「姉ちゃんもそうなの?」
「そうよ。そりゃ私だってね」
 次第に本音を出してきていた。話が進むにつれて素顔が見えてきている。これは金のせいか話をしているうちに出て来ているのかそれはわからない。
「高いものとかいいものは欲しいわよ」
「うん」
「それでもよ」
 また新しい缶を空けたのだった。
「心がなかったら。そんなのもらっても何ともないわ」
「何ともないの」
「阿呆らしいわよ」
 こうまで言うのだった。言いながらその細い眉を顰めさせている。どうやら過去にそうしたことがあったらしい。悠樹はその声と顰めさせられた眉からそれを感じ取っていたがやはりそれを言うことはなかった。
「そんなの貰ってもね」
「そういうものなんだ」
「あんただってそうでしょ」
 今度は彼に話を振ってきた。
「あんただって。心のこもったプレゼントがいいでしょう?」
「うん、それはね」
 これについては彼も全く同意だった。
「勿論だよ。やっぱりそれはね」
「そうでしょ?そこんとこ考えてみるのね」
 また言ってきた。
「よくね。お姉さんが言えるのはこれだけ」
「これだけって?」
「まだ言って欲しいの?」
 相変わらずビールを飲んでゲーム画面に顔を向けながら彼に問うた。
「まだ。よかったら言ってあげるけれど」
「ううん、もういいよ」
 彼にしてももうこれで満足なのだった。とりあえず聞きたいことは聞き終えたと思った。
「もうね。それじゃあ今日はね」
「これでいいのね」
「うん、有り難う」
 あらためて礼を述べたのだった。
「とりあえず何となくわかったかな」
「お金の問題じゃないのよ」
「うん」
「要は心」
 奈々はとにかくこのことを強調するのだった。
「覚えておくことよ。いいわね」
「うん、わかったよ」
 彼はその言葉に確かに頷いた。
「それだね」
「あとは」
 ここでまた言ってきた従姉だった。
「簡単に考えたらいいわ」
「簡単に!?」
「そう、簡単にね」
 今度は簡単にというのである。
「考えていけばいいわ。じゃあ早く自分の部屋に戻って勉強でもゲームでも好きなことをしたらいいわ」
「じゃあそうさせてもらうよ」
 悠樹も従姉にこう返した。
「今からね」
「今日の講義はここまで」
 強引に打ち切った感があるが奈々にとっても悠樹にとってもここまでで充分であった。
「後はゲーム三昧でいくから」
「ビールもでしょ」
「ビールは水よ」
 ビールについても随分と強引であった。
「言っておくけれどね」
「そうなんだ。まあとにかくね」
「ええ」
「わかったよ。じゃあ部屋に行くから」
 彼もこれで自分の部屋に向かった。奈々は相変わらずビールを片手にゲームをやっていた。何はともあれ彼はある程度だがわかった。何が大事なのかを。
 誕生日は近付いていた。彼はある程度だが何をプレゼントするのか決めていた。それを何にしようかというと。とりあえず心のこもったものというと思いついたものがあった。
「これだろうな、やっぱり」
 彼は軽音楽部である。その部室で今曲を作っていた。作詞も作曲も彼がやっている。彼は本来作曲がメインで作詞はやらない。しかし今回は特別だった。
「随分根詰めてるな」
「作詞もかよ」
「うん」
 周りの部員達に対して応える。部室で楽譜を前にしてギターを持っている。そのうえであれこれと楽譜を書いたりギターを鳴らしたりして曲を作っている。
 その彼に対して周りが言ってきているのだ。その彼の頑張りに対して。彼も微笑んでそれに応えていた。
「ちょっと今回はね」
「御前が作詞するなんて珍しいな」
「ラブソングなのはいつも通りだけれどな」
 彼が作曲をするのは大抵ラブソングの為だ。歌のジャンルはバラードが多い。彼はバラードが一番得意でそれを作曲することが多いのである。
 
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