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武器の御遣い番外編 現代パロ~学園物語~

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見切り発車な第一話、とのこと

  ――とある大通り――


 此処に二人の学生が佇んでいた。片方は茶髪の髪を肩甲骨辺りまで伸ばした少女、北郷 一刀。もう片方は蒼の髪を膝下まで伸ばした少年、北郷 迦楼羅。


「迦楼羅。今何時だ?」


 一刀にそう問われた迦楼羅はスマホの電源スイッチを押して画面を見せる。画面をみた一刀は大きな溜息を吐いた。


「……行くか?」
『………………(コク)』


 一刀の問い掛けに対し、迦楼羅は頷きを返す。本来ならば一刀と迦楼羅は友人と合流して学園に向かう筈だったが約束の時刻になってもその友人が現れず、これ以上経つと初日から遅刻と言う事に成ってしまう為、先に向かうことにした。

 地面に置いたバックを持ち上げると肩に担ぎ、一刀は一度、友人が来るであろう方を見る。するとそこには自分達と同じ制服に身を包んだ少女が走ってきているのが見えた。


 少女も一刀達の姿が確認できたのか、手を大きく振りながらなんとも苦しそうな笑顔を浮かべていた。そのまま一刀達の傍まで辿り着くと、乱れる息を整えながら弱々しく右手を上げ、挨拶をする。


「どうした及川。寝坊か?」
「いや~。目覚まし時計をセットしとくの忘れててな~。おかげで朝から不健康な全力ダッシュや。疲れたわ……」


 一刀に及川と呼ばれた少女はそう言いながら一刀の隣に並んで歩き出す。歩き出した3人の話題は今日から新しく通い始める学園。聖フランチェスカ学園のことについてになっていた。


「それにしても急な話だったよな。新学期から学校が併合されて閉校。んで、新しく通うことになった学園は、まさかの聖フランチェスカ学園だもんな」
「せやなぁ。でもま、学費は変わらずにあの名門学園に通えるとなれば文句を言う奴は居らへんやろな。にしても、何度見てもよぉ分からへん仮面やな、カルー。先方の許可取ったんか?」
『………(コク)。フランチェスカの理事長は、卑弥呼先生の親戚らしいから、卑弥呼先生が話を付けてくれたらしい』
「へぇ~、あの校長が」
『……因みに、卑弥呼先生はフランチェスカの校長に成ったらしい』
「マジでか!?」
『(コク)……後、フランチェスカの理事長は生徒の事をよく考えてる良い人らしいけど。卑弥呼先生と同類と聞く』
「って事は……」
「……ガチホモ?」
『(コク)』
「うわ、マジかいな」


 3人はそんな会話をしながら暫く歩いていると、前方に物々しい校門が見えてきた。










―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――










「漸っとついたな~。こりゃ寮に入って正解や。さすがに毎朝この距離を歩きたない」
「同じく。そこの掲示板にクラス分けが書いてあるっぽいな。え~っと。3人共A組だな」
「お! かずピー達と一緒か。よろしく~♪」


 そう言っている間に迦楼羅は張り出されたクラス名簿全てを手帳に移し、手帳を閉じる


「さて、カルーのメモも終わった事やし、記念館とやらに行こか」


 3人は事前に郵送されてきた学生手帳の地図を開いて、始業式が行われる記念館の場所を確認すると、適当な話題を話しながら記念館へと向かった。


 3人が記念館につくころにはほとんどの生徒が到着しており、クラスごとに決められている席にへと着席していた。一刀達3人も空いている席を見つけ、そこに座った。


『………終わったら起こして』


 そして迦楼羅は座るや否や、終わったら起こすように一刀達に頼むと直ぐに寝てしまった。

 一刀と及川はそれを呆れた表情で見ると、視線を壇上へと向ける。


 暫くしてから始業式が始まる。新校長と理事長の挨拶が終わって学園関係者の話が終わり、意外にもほぼ全ての生徒が歌った校歌斉唱が終わる。


 新校長、理事長が登場したときは少しは騒めくとも思われたが、どちらの生徒も見慣れている為か、騒めくことはなかった。


 そして始業式が終わると同時に各生徒は自身のクラスへと向かう。一刀も直ぐ傍で熟睡している迦楼羅を背負う。


「何や。起こさんのか?(ズルいでかずピー)」
「迦楼羅が簡単に起きないのは実証済みだ(早いもん勝ちだ)」


 どうやら起こすのが面倒だったらしい(視線で何やら威嚇し合っているが)。二人は足元に置いてあった自身の荷物を持つとそのまま記念館を出て教室に向かった。因みに迦楼羅の荷物は及川が持っている。








――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――








「え~。では今日はこのまま各自自由に部活動見学へと向かってください。すでに部活動を決めている方はそのまま部活動に参加して結構です。尚、委員会等については後日決めるための時間がありますので、各自所属する委員会を考えて置いて下さい。委員会の数から言って一人最低一つの委員会に所属してもらうことになると思います。あぁ後、部活・委員会共に掛け持ち可ですので」


 担任はそう言って教室から出て行った。生徒達も仲の良い者同士で教室を出て行く。無論一刀等3人も荷物を持って生徒に交じって教室から出て行く。


「ワイは特に興味のある部活動とかは無い。かずピー、カルー。どないする?」
『………何処でも良い』
「あ、なら武術部なんてどうだ? 一応オレも及川も何かしら武術やってるし。迦楼羅には丁度良いんじゃないか?」
『……それでいい』


 そう短く会話を交わすと3人は武術部の有る方向へ歩いて行く。









――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――








――超武道場――


 少し歩いて武道場に着き、3人は室内に入ろうとして出入り口の扉に手を掛ける。すると後ろから声を掛けられた。


「北郷義姉弟(きょうだい)に及川。久しぶりだのう」
「「理事長。お久しぶりです」」
『……卑弥呼先生久し振り』


 突然のことに少し驚きながらも、3人はフランチェスカの新校長であり、小学校からの知り合いである『狭間 卑弥呼』に挨拶をする。


「うむ。終業式以来じゃの。そうじゃ、ついでだから学園長を紹介してやろう。おい!! 貂蝉よ!!」
「そんな大声出さなくても聞こえてるわよん。あら、その子たちは誰?」


卑弥呼に貂蝉と呼ばれて腰をクネクネさせながら近づいてきた人物こそ、この聖フランチェスカ学園の理事長である『渡辺 貂蝉』である。


「ふむ。以前にも話したであろう北郷義姉弟(きょうだい)と及川じゃ。北郷義姉弟の義姉(あね)の名は北郷 一刀、義弟(おとうと)の名は北郷 迦楼羅じゃ」
『「「(……)初めまして」」』
「どぅふふ~♪ 渡辺貂蝉よ。貴方達が噂の3人組ねん」
『……噂?』
「あらん? しらないの? 貴方達結構有名人よ? 確か、技の及川、知の一刀。後、虎牢関の迦楼羅って」
「ほえ~、知らんかったわ。それよか、なんかこう、こそばゆいもんが有るな」
「全くだな」
「ガッハッハッハ!!お主等らしいのぅ。それはそうとお主等、武術部に入るのか?」
『………(コク)ん。卑弥呼先生と貂蝉先生は何処か行くの?』
「ワシらも武道場に行くのじゃ。貂蝉が武術部の顧問で、ワシが副顧問じゃからな」
「卑弥呼の言う通りよん。だからなにか困ったことがあったら気軽に声をかけてねん♪ それじゃあ3人共、私達は先に行ってるわねん」


 そう言って貂蝉と卑弥呼は武道場に入って行った。


「さて、じゃあ俺達も入るか」
「せやな」
『………………』


 迦楼羅は無言で一刀の後ろに隠れる様に立つ。


「そないに縮こまらんでも」


 それを見て及川は苦笑していた。


「はああああああああああ!!」
「せい!!」


 武道場の中央では2人の女子生徒が試合をしており、まわりでは他の部員数人がその試合を見守っていた。すると、見守っていた部員の1人が一刀と及川(迦楼羅は隠れている為気付かれていない)に気がついて近づいてきた。


「ふむ。入部希望者ですかな?」


 3人に近づいてきた女子生徒はそう言いながら一刀と及川の顔を見る。


「そうだよ。あと、こいつも」


 そう言って一刀は後ろに隠れる迦楼羅の襟首を持って猫の様にブラブラさせる。


「ッ!? 気付かなかった」


 何が理由で。とはあえて言わない。だが迦楼羅は身長の事を遠回しに指摘されたと思って(実際そうなのだが)一刀の手から降りてまた後ろに隠れる。


「どの部活も入部にはそれぞれ入部テストが有るって聞いたんだけど」


 一刀がそう言うと、女子生徒はなんとも言えない笑みを浮かべた。


「武術部の入部テスト内容はいたって簡単。部員の誰かと試合をすればいい。但し、余りにも弱いと入部を断られるからな」


 女子生徒はそれだけ言うと振り返って手を2回叩く。すると試合をしていた2人や、まわりの部員の視線が集まる。


「今日43・44・45人目の入部希望者だ!! 誰か相手をしたい者はいるか?」


 女子生徒がそう大きな声で叫ぶと、他の面々(一部除く)はうんざりした表情を浮かべる。どうやら一刀達の前に来た入部希望者達が余程弱かったらしい。


「私が相手をしよう」


 そう言ったのはさっきまで武道場の中央で試合を行っていた2人の内の1人であった。短く切りそろえられた銀色の髪が特徴的なその女子生徒は、手に持っていた大斧を壁に立てかけると木刀を一つ手に取る。


 その女子生徒は木刀を片手で二、三回振り回すと、武道場の中央へと戻った。


『………ねえ』
「多分迦楼羅の考えてる通り、1人で十分って意味だと思うよ」
「豪い自信やな~。カルー、バンテージ持っとるか?」
『…………ん』


 静かに服からバンテージを取り出して及川に渡す。武術部の面々は迦楼羅の仮面に驚いた表情をする。


「おおきに。ほな、始めよか」
「なんだ、貴様一人か。3人同時に掛かってきても良いのだぞ?」
「はぁ? こないな事言う奴が居る部活とか、大丈夫なんか? 武術部は。もしかして思っとったよりレベル低いんか?」
「何だと!? 貴様我らを侮辱するか!」
「侮辱も糞も無いわ。それよか、早よ始めようや」
「貴様、もはや許さん!」
「上等や! かずピー! 合図頼むわ!」


「ったく、熱くなりやがって。………始め!!」


「ハァァァァァァぁ!!!!!!」


 合図と共に試合が始まった。銀髪の女子生徒は開始と同時に雄叫びを上げながら木刀を振りかぶって及川との距離を詰める。

 そして振り上げた木刀を及川めがけて振り下ろす。

 が、及川は体を後ろに倒し、両手で支えると右足を思い切り上げて木刀を蹴り飛ばす。


 そして直ぐに体制を整え、正拳を放とうと力を溜め、氣を纏わせる。


 そして――――――

「……崩k――ムグッ!?」

 ――――――及川が拳を放つ寸前に突如、蒼い髪が及川を雁字搦めにする。


『………ダメ、それやったら、相手が武術家として死ぬ』
「そこまで! 勝者及川!! やり過ぎだこのボケ!」
「ハッ! つ、つい」
『………そう。姉貴』


 迦楼羅は及川の言い訳にそう呟いた後、一刀の方を見る。


「ああ。スミマセンが俺と迦楼羅は日を改めさせて頂きます。相手の力量も測れない雑魚(ひと)ばかりの時に入部しても意味無いですから」


 一刀がそう言うと迦楼羅は及川の拘束を解き、及川は一刀達の元に来る。そして3人揃った所で出入り口に向かって歩き出す。すると――――――

「ま、待て! 私はまだ負けてなど!」

 ――――――そう言って及川に掴み掛ろうとする銀髪の女子生徒。しかし、突如視界の端に脚が見えたので目の前に腕をクロスさせて防御するが、脚を凌ぎきったら今度は投げ飛ばされ、背中の中央を指で抑え込まれて立てずに姥貝ている。


「あのさ。あんた、負けてないとかどの口が言うの? オレ達の前に自信過剰で弱っちい奴がどれだけ入部希望して来たか知らないけどさ。あれが真剣の殺し合いならあんた死んでたけど?」
『…………ねえ、ホントに入らなきゃダメ?』
「一人で登下校するってんなら良いぞ」
『…………テスト受ける』


 そんな短い会話を交わすと迦楼羅は拘束を解き、3人は寮に戻った。 
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