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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第五十八話





「──本当にもう大丈夫なの、カノンノ?」


「うん。もう全然全快状態だよ」



──あのドクメントの転写実験から数日。カノンノは思っていたよりも早く復帰した。
見たところ彼女の言うようにもう大丈夫そうに見えるんだが…やっぱりまだ少し不安である。


「…ねぇ…やっぱり本当に大丈夫なの…?」


「もう…本当に大丈夫だよ。あんまりしつこい性格だと私、嫌いになっちゃうよ?」

「ぅっ!…それはごめん…」


僕の再度の質問にカノンノは小さく一度溜め息を吐いた後、少し頬を膨らませてそう言い、僕は頭に掻いてそう言った。
…うぅ、『嫌われる』という一言で聞くのを止めてしまうのもあれだけど…やっぱりカノンノの事が心配で仕方無い。


「…私もごめんなさい、ちょっと意地悪しちゃって…。でも本当にもう大丈夫だから…心配してくれてありがとう、衛司」


「カノンノ…」


僕を見て申し訳なさそうな表情を浮かべて少し俯いた後、そう言ってもう元気である、というように微笑んでみせるカノンノ。
その表情を見て、僕は少し嬉しくなりながら自然と手を伸ばしてカノンノの頭を撫でた。

カノンノは頭を撫でられるとすぐに嬉しそうな表情を浮かべ、その表情を見て『本当に大丈夫なんだな』と思うと同時に『もう少しこの表情を見ていたい』という思いも起こっていた。
そんな僕の思いに気付いているのかいないのか、カノンノは嬉しそうな表情のまま僕の顔を見つめ、僕もそれに少し微笑み、カノンノの顔を見つめていた。
お互いに見つめ合ったまま僕は自然と頭を撫でていた手を離し、そしてそのままカノンノを抱きしめようと手を伸ばし───


「──お二人とも…あのー…そろそろいいかしら…?」


「「うわぁっ!?」」


──かけた所で、ホールのいつもの定位置で僕達を見ていたであろうアンジュの声で、僕とカノンノは慌てて離れた。
いけない…忘れてたけどここホールだったんだ…。


「全く…二人とも数日ぶりだから分かるけど…イチャつくならもう少し周りを見てからイチャついて欲しいわね」


「べ、別にイチャついてた訳じゃ…」


「そ、そうだよ、別にイチャついてた訳じゃ…」


「…呼び出した人の事を放置して目の前で唐突に見つめ合って、人が止めなければそのままお互いに抱き合っていたかもしれない程のピンク色の特殊フィールドを出しておいてよく言うわね」


「「うぅっ…すみませんでした…」」


呆れた様子で言ってきたアンジュに僕とカノンノは慌てて首と両手を横に振るが、アンジュが深いため息と共にそう淡々と出した言葉に僕達は否定出来なくなり頭を下げた。


「本当に全く…二人ともわざとじゃなくて無意識でやってる所が質悪いわね…これでメリアもいたらどうなってたか…。とりあえず…早速例の転写実験が成功しているかどうか…それの確認の為の依頼を説明するわよ?」


僕達を見て再度深いため息を吐くと、アンジュは表情を真剣なものに戻してそう言い、僕とカノンノも表情を戻して頷き、アンジュの説明を聞いた。



───アンジュからの転写実験の確認依頼の内容とはこうだった。
まず向かう場所は『シフノ湧泉洞』。新しく出現したキバのある場所である。現在、そこでのジルディアの浸食が今最も勢いがあるらしく、カノンノにディセンダーの能力が転写されているかどうか試すならそこでやった方がいいらしい。
同行メンバーはカノンノは勿論の事で、もしもの時の場合にメリア、カノンノが安心して作業が出来るようにと僕、そしてキバがある場所の扉を開くためにシャーリィ、という四人である。


「──二人には先にちゃんと伝えてあるからあなた達の準備が終わり次第、シフノ湧泉洞に向かうわ。とりあえず後は…もしもサレが現れたら無理をせずにすぐに撤退する事。あなた達がそこで倒れたら…今度こそ此方も打つ手がなくなってしまうから」


「分かった。サレが現れるかは分からないけど、用心しておくよ」


真剣な表情のままそう確認するように告げてきたンジュに僕とカノンノは頷いて答えた。
──『狂風』サレ。いまだに打つ手は無く、もし妨害に彼自身が現れたら…今度こそ全滅は免れないだろう。
一番は妨害そのものが無いことだが…少なくともサレ自身が出てくる事が無いように願いたい。


僕達はそのまま少しこの実験の話をした後、準備をするために自室へと戻った。
この実験だけは…必ず成功させる為に。



──────────────────




「──気分は大丈夫、シャーリィ?」


「は、はい…。さっき真水に浸かりましたし…今はまだ大丈夫です」


──シフノ湧泉洞。そこのつい先ほどまで閉じられていた大きな門を超えた所で、僕はシャーリィに問い掛け、シャーリィはそれに頷いて応えた。

シャーリィは原作の『レジェンディア』と同じで海水に弱いらしく、このシフノ湧泉洞に来た時は洞窟内にこもった海水の潮気が原因で気分が悪そうであった。
シャーリィの容態に一度は帰ることも提案したんだけど…度重なる『キバ』の出現で、再び他の国々が争いを起こそうとする中、その解決策となる今回の実験に少しでも自分が手伝えるのなら、とそのまま進むことになった。

現在は彼女の言ったとおり…閉じられていた門を開けるために、シャーリィが門の裏側に繋がっている真水の水道を潜って来てくれたので、来た当初に比べれば断然顔色が良く見えた。確かにこの様子なら大丈夫そうだけど…。

「分かった…だけど、また気分が悪くなったらすぐに言ってね。シャーリィに何かあったら…色々大変だから…」

「ぁ…すみません…」


僕の言葉にシャーリィは察してくれたのか一瞬表情を変えて申し訳なさそうにそう言った。
そう…シャーリィに何かあったら本当に色々大変なんである…主に僕の命とセネルのテンションが。


「…そう言えば前に依頼でシャーリィがかすり傷だけど怪我したときに、セネルが一緒について行ってた衛司を襲ってたっけ。『アンタは一体何なんだぁーっ!』って」

「…実に理不尽そうだったけど…あの勢いのセネルはちょっと止めれなかった…」


「思い出させないでよ…本当に理不尽だったんだから…」

前を歩いていたカノンノとメリアが不意にそう思い出したように言い、僕も同じようにその時の事を思い出して溜め息を吐いた。
いや確かに…かすり傷程度だけどシャーリィに怪我をさせてしまったのは僕が悪かったけど……だからと言って、まるで親の仇を見るような目をして『お前は俺が倒すんだっ!今日!此処でぇっ!』と叫びながら魔神拳を連発してくるのは本当に勘弁して欲しかった。あの時クロエが止めに来てくれなかったらどうなってたんだろうと今でも思う。


「お兄ちゃんは本当にもう……本当にすみません…」

「いや、別にいいよ。あの時は僕もシャーリィに怪我させちゃって悪かったわけだし…セネルもあの『お兄ちゃんは心配なんです!』病がどうにかなればまともなのになー…」


『『『あははは……』』』


シャーリィが溜め息と共に再度申し訳なさそうに言い、僕がそれに首を振ってそう言うと皆がなんとも言えなさそうな表情で苦笑した。

僕達は暫くそんな話をしながらシフノ湧泉洞の奥へと進んだ。


────────────────────



「──ハァ…此処が中層の最深部…か…」


「…ハァ…ハァ…此処に…キバが…」


───あれから暫く進み、僕達は中層の最深部の広まった場所についた。
途中、やけに急な流れだった水流やジルディアの影響による異様な空気に足止めされかけた…なんとか辿り着く事が出来た。
それにしても…本当にあの急な水流はなんだったんだろうか…。


「!見てください、アレっ!」


「あの壁…ジルディアのキバだ!もうこんなに浸食が…!」


考えていると不意に届いたシャーリィとカノンノの声に改めて前を見ると…そこには壁のように立つジルディアのキバと、以前砂漠で見た以上にこの中層最深部の部屋を浸食し、白く染め上げられた光景があった。
…浸食が進んでるとは聞いてたけど…まさか此処までとは…。


「…皆…誰か…あそこで倒れてる…っ!」


「えっ!?」


突然のメリアの言葉に彼女の視線の先を見ると…キバの直ぐ近くで二人程人が倒れていた。その姿は所々ジルディアの浸食を受けているのか、結晶化しているのが分かった。
とにかくあの人達が無事か確認しないとっ!


「(っ!主…待って下さいっ!)」


「っ!?ヴォルト…?」


「(この感じ…まさか…『彼女』まで…っ!)」


「ヴォルト…『彼女』って…一体…っ!?」


倒れている二人に駆け寄ろうとした瞬間、先程まで静かだったヴォルトが僕の中で声を上げ、僕が一体何事かと聞こうとした時…キバのすぐ近くにあった水場が突如渦を作り出し…その渦から『ソレ』は現れた。


「なっ…まさかアレって…っ!」


「っ!…浸食の影響なのか、それとも先にサレが手を打ってたのか…こんな時に…っ!皆…兎に角先にアレを止める必要があるみたいだよっ!」


突如現れた『ソレ』に皆が驚きの声を上げ、僕は慌てて皆に戦闘態勢を取るように告げる。
僕達のその様子を見て『ソレ』…身体の所々を結晶に侵されながらもわかる、一見剣士のように見える姿をした青の長い髪をした『彼女』は背中に背負った大剣を引き抜いた。


「(すみません主…どうか…彼女も…)」


「分かってるよヴォルト…倒れてる二人も…あの彼女も必ず助ける。だから…止めるよ、皆っ!」


『『『うんっ!(はいっ!/…んっ!)』』』


『──ハアァァァァァァァっ!』


僕達の声に『彼女』…『水』を司る大精霊『ウンディーネ』は、雄叫びと共に大剣を振り上げるのだった…。





 
 

 
後書き




──以上、第五十八話、如何だったでしょうか?

……うん、こんな内容で申し訳ない←



【衛司とカノンノのイチャコラ】
なんか気付いたら指が動いてた←
真のイチャコラはきっと周りの目を気にせずイチャコラする事なんだろうね←

爆発しろよ←←


【セネルェ…】
セネルはシスコン(確信←)
ボコられる理由が実に理不尽である←←


【暴走ウンディーネ】
いつから精霊戦がイフリートで終わりだと錯覚していた←
というわけでイフリートに引き続き精霊ウンディーネが暴走状態で登場です+
原作だとこの場面でボス戦は無いのですが、流石にキバの前に門番的な物を置かないのもアレですし、サレの影響もあって彼女に登場していただきました。
因みにウンディーネのイメージは『テイルズオブファンタジア』のバージョンをイメージしていただければ良いです+


皆様、良ければ感想、御意見等宜しくお願いします+


 
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